娘とか金髪とかその他とか(3)
「で、幼女。君の名前は?」
現在、洞窟の出口に向かって歩いている所だったりする。
「…………エーデル」
頭上から声が聞こえる。なんと、幼女ことエーデルは赤龍レッドドラゴンとなり飛んでいる――――わけもなく、俺に肩車をされていると云う現状。大人しく聡明な娘ではあるが、やっぱり子供であると云う事実に変わりはない。
「じゃ、エーデル、年は?」
見た目は10歳とかそこら辺。まぁ、ドラゴンと云えば長寿な種族だ。実年齢は300とかそんな感じか?
「…………1706歳」
「…………おぉう」
予想外だった。流石はファンタジーと云った所か。…………今度からちゃんと勉強しよう。
蛇足ではあるが、今俺が通っている学校は長期休暇中である。
「…………Search」
一応サーチスキルで確認しておく。…………肩車をしている所為で顔が見えないため、仕方なくエーデルの御御足おみあしを見つめる。
「…………ジーザス」
エーデルの名前、年齢に虚偽はなかった。しかし、1つ判明した事がある。エーデルの年は1706で、同時にレベルも1706であった。つまり、龍種――少なくとも赤龍レッドドラゴン――はレベルと年齢が同じであると云う事だ。ってか、何気にエーデルって俺よりレベルが高かった。
微妙にショックな事実に直面しつつも、俺たちは無事出口間際まで来ていた。
「…………君、生きていたのか…………僕たちはもう駄目だ。ゴブリンは全滅させたが――――ごふっ!?」
何故かズタボロな金髪がいたが、話が長くなりそうだったので鳩尾を蹴り上げてみた。うん、静かになった。
俺が満足げに頷いていると、エーデルがくいくいと髪を引っ張る。流石にやり過ぎたかな? と思い見上げると――――
「…………パパ、今のもう1回」
――――キラキラと瞳を輝かせたエーデルがいた。エーデル、君はもう立派にパパの娘だよ。
「せいっ!」
ギルドの扉を蹴り開ける。突然の登場に場が静まるが、俺の顔を見るとまた各々が談笑に戻る。
「またあいつか」
「あいつなら仕方ない」
…………はて? 何時の間に俺はそこまで有名人になったのだろうか? まぁ、気にしないでおく。
「やっほー、時間が余ったから依頼受けに来たぜー」
「…………来たぜー」
頭上から声が聞こえる。エーデルは俺の肩車が気に入ったらしく、洞窟からここに至るまでオール肩車である。
「あれ? お兄さん、早いですね。金髪の方は――――」
ぴたっと止まる。アリアの視線は俺の頭上、つまりエーデルに固定されていた。それより、アリアにとっても金髪は金髪である事にちょっと感動した。
「お、お兄さん、それ――――」
「それじゃない、エーデルだ」
そして幼女だ、とアリアに告げる。アリアは現状を理解出来ないらしく、錆び付いたロボットのような動きをしていた。
「お兄さん、誘拐は犯罪です。幼女に欲情する変態は存在が罪です。って云うかお兄さんが罪です」
アリアが冷ややかな目で俺を見つめる。止めて! 興奮しちゃう!
「…………パパ、お腹空いた」
アリアが俺を詰なじり、俺が快感に震えていると、エーデルがそんな事を告げて来た。時間的にはそろそろ昼だろうし、俺も丁度お腹が空いて来た。
「え…………パパ?」
アリアが俺を見ながら呆然と呟く。
「え? 何で俺がアリアのパパなの?」
「そ、そうじゃなくて! お兄さんは子持ち?」
「少なくともエーデルの父親ではあるな」
それだけを云うと、エーデルの催促(髪を引っ張る行為)が激化して来たため、アリアに今日は帰るとだけ云ってギルドを後にする。途中、ブチブチとかそんな音がした気がするが、聞かなかった事にしておく。
「何食べたい?」
「…………お肉」
実の親子のような会話をしつつ家路に着く。…………そう云えば、フィールさんとリリーにはどう説明しようか? いやー、赤龍レッドドラゴンの娘拾って来たぜ! …………没だな。エーデルが赤龍レッドドラゴンであると云う事は伏せておいた方がいいだろう。じゃあ、俺の妻です! ならどうだろうか。…………まぁ、血祭りだな。主に俺が。
「あ、キール君」
ぶつぶつ呟きながら歩いていると、第2の幼馴染みであるミリと遭遇した。先日俺を振ったためか、掛ける声は躊躇いがちではあった。
「その娘、親戚の子供?」
立ち止まるとエーデルの催促が始まるため、俺は立ち止まらずに答える。
「いや、俺の子供」
そう告げると、アリア同様ミリもぴたっと止まった。しかし、立ち止まるわけにもいかず、そのまま歩き去る。背後でミリの絶叫が聞こえた気がするが、ミリは比較的大人しい娘なので気のせいだろう。
「お肉、生がいい? 加熱した方がいい?」
「…………焼く」
まぁ、生と云われても拒否ったが。
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