娘とか金髪とかその他とか(1)
「…………423」
そう、何処からどう見ても423なのだ。首を捻っても、更には腰を90度曲げても。その勢いで逆立ち紛いの事をやっても、俺のレベルは423だった。
423と云う事は、たった一度の戦いでレベルが100以上上がった事になる。これは凄い事だ。もし、普通の人間がその結果だけを見ると…………いや、どうなるかは知らん。取り敢えず、ビックリはするんじゃね?
しかし、何度も云うが凄い事なんだこれは。それでも、納得出来ない。何故なら、俺が倒した敵は龍なのだ。ドラゴンなのです。レベルは5234でした。レベルが約300だった人間、もとい超絶紳士が5234と云うリアル化け物を倒したと云うのにも関わらず、実際に上がったレベルは約100。これはもうイジメのレベルだ。ゲームなら確実にクソゲーオブザイヤーに選ばれる。
「いいさ…………『Assassin』の取得経験値の低さにはもう慣れたよ。ちまちまゴブリンでも狩ってるよ…………」
ちょっと期待はしてたんだ。俺、レベル500超えたんじゃね? って。レベル500超えたら、ミリにもう一度アタック出来るじゃないですか。こっちの世界では幼馴染み攻略うはっ、テンプレワロス…………そんなノリで高笑いするつもりだったんだ。
「考えるな、感じろ…………!!」
何が云いたいかは俺にも分からない。取り敢えず、微妙なテンションのままギルドの扉を潜る。匍匐ほふく前進で。
「あっ、もうあのお兄さんしかいません。そう云う事にして下さい」
匍匐前進でギルドに入ると、周囲の視線が以上に痛かった。何が悪かったのだろうか? 首を傾げつつも奥に入って行くと、アリアがこっちを指差しながら気怠そうに何かを話していた…………金髪イケメンクソ野郎と。
「ふむ…………君、実に弱そうだね」
心は強かです。
顔を近付けられ、反射的に殺しそうになる自分を落ち着かせる。
「俺が弱い…………だと? 遺言は死ぬ前に云え」
思わず毒を吐く。だが、それに反応したのはイケメンではなく取り巻きの連中だった。
「貴様ッ! こちらにおわす方をどなたと心得る!?」
え? 知らんし。水戸黄門とか云うなよ?
「我が国の第1王子、アッシュフォード様だッ!!」
…………? 授業サボってたし、この国の事とか全然知らなかったりする事に今気付いた。うむ、転生前も地理とか苦手でした。
「んで、そのアッシュフォードとやらが俺に何の用?」
「貴様ッ!! 様を付けろ!!」
「失礼、そのアッシュフォードとやらが俺様に何の用だ?」
「貴様ッ!!」
うお!? 何この人怖い。情緒不安定にも程があるだろ!? 俺が何をしたって云うんだ!
「止めないかお前たち。基本、ギルドには生まれによる優位等存在しない。…………まぁ、私の方が強いだろうし、ギルドでの立場も上だろうが」
その一言に、多少の憤りを感じた。俺が弱いだと…………? 俺は剣を抜き、アッシュフォードに突き付けた。
「お前ごときに俺の弱さが計れると思うな?」
「そうですよ。お兄さんはゴブリンに苦戦する猛者なんですから」
アリアの援護射撃に口端を歪める。アッシュフォード…………長いから金髪でいいや。んで、金髪と取り巻きは俺の予想以上の弱さに恐怖を感じているらしい。実に愉快だ。
「馬鹿…………な。よもや成人間近の少年がゴブリンに引けを取る…………だと?」
「アッシュフォード様、この少年とパーティーを組んだら全滅の可能性があります!」
金髪は腕を組んで考え込む。…………さあ、俺の弱さに迷うがいい!!
「…………赤龍レッドドラゴン相手に、その少年は使い物にならない…………しかし、手の空いてる者はいない。…………いくらゴブリンに苦戦するとは云え、囮くらいにはなるだろう」
こうして、俺のパーティー臨時加入が決まった。悔しい事に王子と云う財力…………ごほんっ、権力を前に俺は従わざるを得なかった。べ、別に買収されたわけじゃないんだからっ。
…………でも、赤龍レッドドラゴンって、この前倒したんだけどなぁ。
「では、アリア殿。我々は貴女の為に赤龍レッドドラゴンを討伐して来ます」
イケメン反対。死ねばいいと思う。取り敢えず、金髪にはスーパー膝かっくん(回し蹴りで膝かっくん)をかましておく。体勢が崩れてカウンターに顎を強打し、失神したのは見なかった事にする。…………計画通り。
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