chapter 1 現状とか変態とかその他とか

幼馴染とか妹とか母親とか

「あの……ほんっとごめんなさい。私、レベルが500超えてる人としか付き合えないんです」


 馬鹿……な。そんなのありか? いや、そもそも何故俺はフラれた? フラれる要素は皆無なはずだが…………まさか、これが巷で噂のデレツンか!? 普段はデレデレしてこちらに気があるように見せ掛け、こちらが告白した途端ツンツンと態度を変えるあのデレツン!?


 俺が1人戦々恐々としていると、彼女――ミリ――は「あの…………そう云う事なんで、私失礼します」と逃げるように去って行った。…………ミリって、何時から敬語キャラになったんだ?


 そんな疑問はどうでもいい。大方、思わず敬語になる程度には嫌だったのだろう……って、だからそれはいいって。


 問題はアレだ。またフラれた事だ。いきなり『dagger』に酷似した世界に転生させられ、若干グレの入っていた少年時代の自分を助けてくれた『幼馴染み』にフラれた事だ。


 また幼馴染みである。転生してから精神年齢は大人(と云っても、ある程度は外見に引っ張られるのか、三十路な精神年齢ではあるが自分としてはまだ少年な心だと自負するが)になり、俺の童貞はミリに捧げるんだ! なんてDQNな考えは持っていないが、この世界で俺はミリのために生きて行くんだくらいは思っていた。


「なんたる不運、なんたる不幸! ここでも幼馴染みが俺の行く手を妨害する……!」


 何となくノッてきた。昔の俺ならいざ知らず、今の俺はフラれたくらいじゃあ大袈裟に落ち込まない。フラれたのが2度目と云うのもあるが、何より俺には――――


「…………何をしているのですか、兄さん」


 ふと顔を上げるとマイエンジェルこと妹のリリーがいた。めっちゃ萌え。


「リリー! ミリにフラれた!」

「何でフラれたのに嬉しそうなのですか……?」


 リリーに抱き着いているからではない。誓ってそれはない。決してそれだけはない。ただちょっと溢れ出るリビドーを抑え切れないだけだ。


「取り敢えず兄さん、帰りま…………ふえ?」


 何ふえって。やばいこの娘超萌える。前の妹が元気一杯だったのも相まってもの凄く可愛い。


「え? 兄さん、ここどこですか? って何で服脱がしてるんですか!?」


 ここは俺の部屋さ。妹を襲うためなら転移魔法の1つや2つどころか全て覚えたけど、簡単さ☆


「ちょ、兄さん! どこ触って…………ひゃっ!」

「ふふふ、よいではないか」


 フラれて幸運値が足りない俺は、こうしてリリーと抱き合う事で補充しているのだ。抱き合うと云っても性的な意味ではなく…………性的……、ねぇ。


「兄さん止めて下さい! 目が本気です!」

「…………」

「不気味ですから何か喋って!」


 何時になく切羽詰まった声を出すリリーに首を傾げる。リリーは俺の事が(多分)好き。俺もリリーの事が好き。何の問題もない。妹とは云っても、本当の俺の妹でもない。まぁ、この世界の俺にとっては妹であるわけで…………結局、俺はシスコンだと。まぁ、否定する気はない。全力で肯定する。


 そんな事を考えつつも、妹を脱がせる事に成功した。


 この世界で髪と瞳の色は使える魔法の色に染まる。妹の使える魔法の属性は黒である。何が云いたいかと云うと、白い肌に黒髪はエロいね☆


「キール、貴様何をしている?」


 妹の裸を視姦していると、首筋に剣が当てられた。鉄の冷たさが俺の体と心を冷ます…………事は別にない。俺はその程度で萎える男じゃないぜ!


「サー、妹とスキンシップをとっているところです!」


 しかし、萎えなくとも体は勝手に動き、直立不動、及びに敬礼しつつ答えていた。おっかしいな。こんなはずでは。


「ほう、裸の妹を組み敷いてのスキンシップか」

「イエス、マム!」


 何を隠そう、この方は俺の母親である。正式には母さんの妹。母さんも父さんも冒険者で、数年程前に亡くなったのだが、それから俺たち兄妹の事を面倒見てくれている、俺たち兄妹にとって第2の母親だ。


「でも大丈夫だよ、フィールさん。俺は貴女の事も愛して――――」

「お母様と呼べ、お母様と」


 刹那、強烈な蹴りが股間を見舞う。


「――――――」


 あまりの痛みに膝が地に着く。口からは声が出ず、ただただ空気が漏れ出る。


「飯、出来た。早く来な」

「あ、はい」


 リリーが俺を一瞥するが、さっきの事を根に持っているのだろう。声すら掛けずに去って行く。


 そして残された俺は痛みに藻掻く…………事なく、立ち上がる。


 この世界の人間の平均レベルを計測するのは難しい。一般人は100もあれば強い方で、冒険者は300とか400はごろごろいる。レベルが500を超えれば人間としては優秀で、一国の騎士隊長を務めたりする。


 そして俺は300オーバーと一般人よりは断然高いが、この世界にも学校の概念は有り、俺はその学校の中でも戦闘科に在籍している。戦闘科の平均は大体俺くらいである。


 因みに我がお母様はレベル600オーバーの化け物ではあるが…………残念ながら、そんなお母様の攻撃で俺がダメージをくらう事はない。俺のレベル300とは転生したからであって、実質能力的には1300とチートだ。最強だ。


 まぁ、長々と語ったが、つまりは股間へのダメージは演技ですって事。俺、この国では俳優目指そうかな。


 そんな馬鹿な事を考えつつ、飯を食うために2人の下へ向かった。

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