臨兵闘者 皆陣烈在前-2

 いや、違うな、、、、


 部下の配置、能力には絶対の自信があった。が、「ニンジャ」は、針穴ほどのスキを付いて侵入し、自分達を翻弄し、逆に追い詰め始めている。彼女はその事実に舌を巻いた。


 「フッ、優秀じゃないか。単独行動とスニーキングのテクニックは「伝説」どうりか、部下に欲しいものだ。」


 そう呟く。だが、大勢に影響は無い。煙で視界が利かないのは敵も同じ、近接戦闘になれば、戦った実力を推し量っても、部下が相手に後れを取る事は無い。

 部下はそれぞれ襲撃に備え、構えをとっている。入り込まれたのは、せいぜい一人か二人、数ではコチラが完全に圧倒している。


 徐々に視界が晴れてくる。効果が急速な分、持続性が無いのかもしれない。


 だが次の瞬間、投光照明が次々に破壊されていく、仮設のため本格的な明かりを確保しなかったのが裏目にでる。暗視装置はバンの中だ、敵は闇夜を選んだ以上それなりの装備を所持しているはず。


 敵の放つ一手一手が、大胆、且つ巧妙だ。


 「クソッ」


 悪態をつかずにはいられない、だが。


 勝つのは私だ!! 


 「エアデール!!」


 ゴールディーは、相手の気配に気を配りながら、部下に大声で指示をだ出す。


 「ヤー!!」


 部下の「吼え声」は間近で聞こえた。


 「プロフェッサーを連れ出す、援護しろ。」


 昇った月の明かりが、工場の採光窓から建屋内部を照らす。シルエットだけでも判れば十分だ。ゴールディーは救急車へ乗り込もうと、ドアに手を掛ける。


 僅かな空気の動きを頭上に感じ、咄嗟に身を翻すゴールディー。音もたてずに自分が今までいた場所に、刃を振るって影が降り立つ。


 認めよう「サイレントムーブ」の技は一流だ。


 「シュリケンは品切れかい?」


 予想通り出て来た相手にゴールディーは言い放つ。華奢で小柄なシルエット。姿だけなら昨晩闘った「ニンジャ」二人とソックリだ。


 手に握った獲物は「カタナ」では無いらしい。黒くて判然としないが短い獲物だ。噂の毒塗り刃か?掠ったでけでも死ぬ危険がある。 

 中隊を指揮する身分になって、訓練以外のCQBでの命のやり取りなど、何時いらいだろう?


 振り向きざまに銃を向けるが。相手は既に踏み込んでコチラに向かって来ていた。左手で銃ごと掴まれ射線を外される。踏み込んだ勢いそのままで右手の刃を突き出して来た。


 咄嗟に左手で払いのけ応戦したが、開いた身体の下腹部へ膝蹴りを喰らう。


 激痛が走り下半身の力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。シルエット越しにも相手の口元が勝利を確信した笑みを浮かべたのが伝わってくる。


 ゴールディーも笑いながら歯を喰いしばる。痛みに耐えて下半身に力をこめ、コチラを見下ろす相手の顔面を辺り狙い。屈んだ状態から一気に伸び上がって頭突きを喰らわせる。


 「ッ、、、」


 声にならない悲鳴をあげ「ニンジャ」は手を離し、後に尻餅をつくように倒れた。


 下腹部と額の痛みに耐えながらも、前へ踏み出て「ニンジャ」右手を踏みつけ敵の刃を封じる。相手を上から見下ろしながら頭部に銃口を当て引き金を引いた。


 発砲音と共にニンジャの身体が痙攣する、数秒後、上半身が後に倒れる。


 危なかった、だが勝利した。命のやり取りを制した安堵と喜びに満足しながら、倒れた敵を目をやる。

 ゴールディーは、月明かりに照らし出された、敵の死に顔に見覚えがあった。


 「!!」


 「カトウ」と一緒に拉致した女、「ルキノ」に瓜二つだった。

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