臨兵闘者 皆陣烈在前
大きな音と衝撃が建物に走った。
「Fuck!!」
ゴールディーは悪態をついた、警戒は充分行っていたはずだ。事務所を飛び出し、建屋の中に目を走らせる、天井に少し穴が開いていた。見張りを配置した辺りだ。火災は起こっていない、小規模な爆発物のようだ。
状況を確認しようした時、女を監禁した部屋から発砲音、続いて破裂音が響いた。素早く駐車してあるバンの陰に、身を隠す。
手に持った、拳銃のセフティーを外しながら、そばに寄ってきた部下に、状況を確認する。
「山林方向から攻撃されました。」
「見張りはどうした?」
「直前まで気がつかなかったそうです、一名やられました。」
「敵の数は?」
「判りません。警戒にも引っかからない、一気に攻め込んで来ない事を考えると、多くても10名程度の小規模な部隊だと思われます。人質の状況が判らないのでしょう、大規模な火力による攻撃は控えているようです。」
「、、、ニンジャか。」
独り言を呟くと、ゴールディーは部下の行動を確認する。
「全体はどうなっている?」
「残った見張りが山林側に、牽制をかけていますが。敵の正体がはっきりしません。」
「2名が見張りの応援に出ました。2名は門扉付近から県道側を警戒しています。」
部下の言葉に、ゴールディーは不敵な笑みをこぼす。
「陽動だな、本命はあの扉の中だ。2名で扉を見張れ、いいな。相手は「テダレ」だ注意しろ、今は部屋から出さなければそれで良い。」
「牽制に出た連中を下がらせ、出入り口付近を警戒させろ!」
「作業は終わっているな?私と4名でプロフェッサーを連れて脱出する。奴らは車に派手な手出しは出来ん。」
「お前達は残って「ニンジャ」殲滅しろ。寡兵だ、「プロフェッサー」を連れだせば浮き足立つ。」
「上に連絡して、替えの車とセーフハウスを用意させる。一旦隠れて、もう一度プランを変更する。」
矢継ぎ早に部下に指示を出し、先手を打たれた遅れを取り戻そうとする。門扉付近から散発的に発砲音が聞こえる。派手な銃撃戦で無いのは相手の数が少ない証拠だ。
人質がいる以上、派手な手出しが出来ないのは解っている。寡兵なのも取引が有効だからだ。ゴールディーに一点の落ち度があったとすれば「ニンジャ」という存在を変わっていても、所詮は特殊部隊程度と思い込んだ事だ。
工場建屋入り口付近から次々と、ハンドグレネードの様なモノが投げ込まれる。
爆発物?人質がいるのに?
驚愕するゴールディー。だが疑問はあっても、体は己を守るために反応する。周りの部下も身を伏せ、遮蔽物の陰に隠れる。
投げ込まれた物体は、激しく、大量に、白煙を上げ始めた。建屋内の視界が急速に白く覆われていく。
ゴールディーは口元に手を当て、煙を吸い込まないよう身を低くして、「カトウ」を積み込んだ救急車へ向かう。初手で見張りが釣り出されたのが痛い、敵に懐へはいり込まれている。
だが火力で圧倒してこない。攪乱目的が明白である、寡兵だ。
少数であっても、陽動目的での攻撃は戦術の範疇だ、だが状況も判らないまま騒ぎを起こし、単独で切り込むなどトリッキー過ぎる。
ハラキリ?カミカゼ?
愚かなことだと思うが、日本は自己犠牲を美化する国だと聞く。
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