隠忍自重-2

 満月の夜。


 しかし空は厚い雨雲に覆われ、月も星も無い暗闇が地上に覆い被さる。


 研究施設裏口。電子ロックされ、監視カメラが設置された分厚い金属製扉が閉ざす車両用大物搬入口とその脇に併設された通用口。


 夜間の警備は定時の見回り以外ほぼ無人と言っていい。


 付近に止まる「デリカ・リリス」と書かれた給食サービス業者のバン。助手席に座った身体のラインも露なラバースーツに身を包んだ女が右手を上げ、ハンドサインを出す。


 バンのスライド・ドアが開かれ、夜間迷彩の戦闘服に暗視ゴーグルつけた者たちが次々と飛び出して行く。装備はサイレンサー付きの拳銃か軽機関銃に軍用ナイフ、音を立てず「静かに仕事をする」為の装備。


 彼等は通用口に近づくと、ポケットからカードを取り出しドアロックのスロットルへ読み込ませる。さらにテンキーでパスワードを淀みなく打ち込んでいく。


 ロック解除され、静かな動作音と共に通用口が開く。


 一人、二人、三人、、、8人の侵入者が、次々と通用口から中へと滑り込んで行く、その様子を監視カメラがただ追い続けていた。


 ラバースーツの女は、その様子を満足げに眺めながら開いたノートパソコンの「Enter」キーを叩いた。

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