「姉妹」達
工場の山林側で密かに動きがあった。外套を纏った小柄な影が三つ、暗がりの林の中を、足音も立てずに進んで行く。
「符丁は「ル」姉様に届いたかしら?」
影の一つが不安げに問う。
「ええ、アレだけ派手にやれば、きっと届いたはずよ。」
三人の先頭を行く人影が、後の二人に確信に満ちた言葉を返し、更に重ねた。
「姉様は既に「術」を使って敵を切り崩すしに掛かっているはずよ。だけど状況が判らない以上、うかつに連絡を取るのは控えた方が良いは。」
「組頭様の策にハマリ、奴等は「甲」を誘拐した。「乙」が裏切り者によって奪われてしまった以上。我らが「ご下命」を果たす為には、ココで奴等を討ち取るしか無い。殺された、「姉妹」「兄弟」達の仇を討つ為にも。」
不安げだった影も、「仇討ち」の言葉に覚悟を決める。
「そうね、私達で討ち取らなければ」
「どうする?」
後に続く、もう一つの人影が尋ねる。
「姉様も、「甲」の状況も判らない。アレに危害を加える訳にはいかないから、用意はあっても、大規模な「術」は使えないはね。だとすれば、私達は敵の懐にいる姉様が動きやすいように、奴等の注意を引く事。姉様をお助けする為に、お側へ行く事よ。」
「相手の正確な数は判らないけど。各々の役割を決めて、動くべきね。」
策を問うた人影が答える。
「ええ。」
「賊」は伊賀組の半数以上の「姉妹」「兄弟」を殺した腕を持つ者達。今いる攻め手の数は、恐らく敵の数を下回る。これから更に「寡兵を分ける」愚を冒す事と認識しつつ、それ以外の手が無いことを、姉妹たちは受け入れていた。
「それが、私達の「お役目」、、、いえ「ル」姉様の為よ。」
場を差配する姉妹の言葉に、残る二人も静かに同意する気配を示した。外套から覗く瞳は、「全てを諦め死に行く者」の目では無く。「あがらえぬ運命」の中にあって、自ら命を咲かせるに価するモノを持つ者の、強い瞳だった。
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