生活の間隔

「一日五箱タバコを吸うと一年寿命が縮むらしいの、つまり人より一年多く年取ってるってこと。あなたは一日にどれ位吸うの?」

「2箱くらいだから、僕は人より1.3倍速く年を取ってるのか」

「メンソールは男性能力の低下を進めるらしいわよ」

「ぼくの場合少し下がってくれたほうがつり合いが取れそうなもんだけど」

「あなたはなぜタバコを吸うの?」

「さあね、マゾヒストなんじゃないかな」

「自分を傷つけて喜んでいられるなんて正気じゃないわ」

「君はサディストなんだろうね」

「死に憧れがあるの?」

「タナトスは誰にでもあるんじゃないかい?」

「子供は英雄的な死を選ぶのに対して、大人は奴隷的な生に執着するものよ」

「男ってやつはいつまでたっても精神的には幼稚なのさ」

「女は死に対して希望を抱くほど、死を信頼してないのよ」

「男が甘やかすから?」

「あなたが私を甘やかすからよ」

「次からはもう少し厳しくするよ」

「そうしたら私は死んでしまうかも」

「困ったね」

「ねえ、今日も雨なの?」

「こっちはいつも雨だよ」

「嫌にならないの?」

「仕方ないさ、仕事だから」

「いつ帰ってこれる?」

「そっちの時間速度で1年くらいか」

「あなたの時間ではどのくらいなの?」

「大体10日くらいだ」

「そう」

「どうかしたかい?」

「あなたに会わないうちに私は1年も年を重ねるのね、それってすごく残酷なことよ。同じ時間を共有できないなんて。」

「そう、だからこの仕事はこれで最後にする。10日で一年分稼げる仕事なんて異世界を行き来する意外にないけどね」

「お金より私をとるのね」

「君に代わるものなんてないよ」

「でも、私ももう長くないわ」

「そんなことない。君は今でも美しいよ」

「こんなおばあさんにおべっか使うなんてよして」

「愛してるよ」

「わたしもよ」

「おっと、そろそろ時間渦に入る」

「気を付けてね」

「帰ったら異世界料理を食べに行こう」

「いいわねえ。約束よ?」

「もちろんさ、じゃあそろそろ切るね」

「わかった。愛してるわ」

「ぼくもだよ」

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