第5話 封印の場にて
ループを抜けた僕達は、まだアルタの体の一部が封印されている場所までたどり着いていなかった。
『あぁ、うっとうしいのじゃ。さっさと、倒すのじゃ』
「あぁ、もう」
なぜなら、封印の地に近づくにつれ魔物が襲ってくる率が高くなってきたからだ。
そして今現在も、魔者達に襲われている。
しかもその魔者達は、高ランクと言われている種類のものだった。
「『サクリファイス』!『サクリファイス』!もう一個『サクリファイス』!」
その魔物達を退治するため、僕は闇魔法のサクリファイスを放っていた。
この魔法は相手に当たるとその相手を吸収してその場で消える魔法で魔法耐性がなければ一発で倒せる魔法……
いわゆる、即死魔法だ。
ただ、アルタ曰く、普通の人に打っても、抵抗されるから効かんとのことらしい。つまり、僕から見て弱い魔物限定の即死魔法だ。
それをあのループから抜けて、ずっと打ち続けていた。
「そろそろ……疲れてきた……」
『まだまだくるぞ、しっかりせい、わしがやればすぐじゃがこの後わし自身がやらねばならぬ仕事があるからの』
アルタは僕の中でそう言った。
やることとは……まぁ、僕も大体想像できているけれど、おそらく封印のことに関してなのだろう……
それはさておき、僕が放つ魔法が危ないものだと魔物達も気づいてきたのか僕を襲ってくるペースが落ちていた。
「うん?さっきよりも襲われなくなったかな」
『そのようじゃな。おそらく、サクリファイスの脅威に気づき一部が逃げ出したのじゃろう』
「じゃぁ、このまま一気に行けばいいかな」
『うむ、さっさといくのじゃ!』
その様子を見て僕とアルタは一点突破をすることを決めた。
僕は、足に加速魔法をかけ一気に魔物の群れから対比することに成功した。
□□□
一点突破して魔物の群れから抜け出した後、僕達はまだ山の中を歩いていた。
けれど、先ほどとは違い魔物が襲ってくることもなく、普通の動物の鳴き声も聞こえなくなっていた。
「静かだなぁ……」
『ふぅむ……結界のようなものが張り巡らされておるの……まぁ、若干の穴はあるようじゃが』
「結界?」
『うむ、結界じゃ。おそらくわしの体からあふれ出た魔素が、封印しても溢れ出おったため結界で蓋をしたのじゃろ。』
「ふぅん」
どうやら、アルタ曰く僕達が今いる場所は、結界が張られているらしい。
その後も結界のことについてアルタに聞いてみたところ、結界の端々に小さな穴が開いていると言っていた。つまり、その穴から先ほど言っていた、魔素というものが溢れ出たのだろう……
その結界って数年前に張られたものだったはずだけど……こういうのって本来数十年立ってからじゃない?と僕は思っていた。
そう思っていると、アルタは……
『うむ?それはおそらく、わしの魔素が強すぎた所為じゃな、カカカカ!』
盛大に笑っていた。
本当に僕の思考を読まないで欲しい……うん。
「じゃぁ、この一帯ってアルタの魔素が溜まっているの?」
『いや、溜まっておらぬの』
「えっ?じゃぁ矛盾するじゃん溜まってないと結界外に出ないでしょ?」
『いや、正確に言うと、もう溜まっておらぬじゃな。』
「えっ?」
僕は頭に?を浮かべていた。
それもそのはず、さっきはあるといったものが今度は無いと言われたからだ。
『まっ、おそらくじゃがわしの体から発せられた魔素が無くなったのじゃろう』
「どうして?」
『ふむ、魔族が持つ魔素というものはじゃな、体にもあるが元々は魔族の魂にあるものじゃ。そして、魂から体に供給するものでもある。つまり、供給源であるわし自身がその体に魔素を送っておらぬからきれたのじゃろうて』
「なるほど……」
つまり、結界を破った魔素はあったが、その魔素が結界外に出て結果的に結界内には魔素がなくなったってことかな。
『うむ、そういうことじゃな』
「そっかぁ」
『さて、そろそろ封印が見えてくるはずじゃが』
そして、ようやく封印の前にやってきた。
しかし、その封印の前には僕達以外の黒い羽の生えた男性が立っていた。
『うむ……あれは』
「アルタ……知り合い?」
『うむ、おそらくじゃがな……』
僕は、警戒しながらもその男性に近づいていった。
「ふぅむ、ここにいるのは私だけだと思ったが……誰だ。」
僕がその男性に近寄ると、その人物は後ろを向きこちらを向いた。
「人間か……んっ、しかし人間の流れとは違うか……貴様何者だ。」
そして、僕を見てその人物はそう聞いてきた。
アルタはその人物を見て核心を持って、僕に話しかけてきた。
『やはり……じゃな』
「やっぱり、知っている人物?」
『うむ、わしに仕えてた……幹部の一人じゃな』
「えぇ……」
『さてとじゃが……支配権貰うぞ』
「ちょっと!」
アルタはいつもと違い、僕に断りを入れてから体の支配権を奪っていった。
「むっ……さらに流れが変化したな……本当に貴様は何者だ!」
「わしか……わしはアルタ、お主に言わせれば魔王様じゃ」
「なに!?」
その人物は僕の答え……というか、アルタの答えに驚いていた。
まぁ、当たり前である。一般的に魔王は封印されたと言われているからだ。
「そんなわけがあるか!魔王様はいまも……ここの封印の用に封じられている……それが出ているわけが無いだろうが!」
「それもそうじゃが、こうしておるのじゃが?のぉ?アルヴァイト」
「……!?なぜ、私の名を」
「だから、言っておるじゃろ?魔王様じゃからじゃ!」
「……」
「ふむ?まだ疑問かならば……これでどうじゃ?」
アルタはそう言って、目の前の男性……確か、アルヴァイトだったかな?に語っていた。
「お主の家族構成は上に3人の姉がおる。そのうち一人がお主と同じ幹部じゃったな。そやつの名前は、アルフェルト。ついでに言うと、おぬしはそやつに逆らえない」
「……ぐっ、合っている。」
「どうじゃ?」
「……だが、信じられん!魔王様が封印から出ているのな私達に何か言ってくれるはずだ!魔王様を語るのならば、それを証明しろ!」
「……ハァ、そうかわかった。」
アルヴァイトは戦闘態勢に入り、拳を構えていた。
アルタはやれやれと手を方の横まで持ち上げ揺らしていた。
そして、アルタは体の支配権を手放し、僕の中へと戻ってきた。
『何を言っても信じてもらえぬのならばしょうがないの……』
「えぇ……諦めるの」
『うむ、あやつ話をこれだと決めると話を聞かんからな……』
「じゃぁ、アルタがやってよ」
『嫌じゃ、というか無理じゃこの後わしあの封印を解かなければならぬ。いちいちわしの魔力を使用したくは無い。まぁ、アドバイスぐらいはしてやるがの』
「……はぁ、分かった。」
アルタと僕はそう言って、僕は戦闘態勢に入った。
「また、流れが変わったか……だが、変わらん!この、疾走のアルヴァイト推して参る!」
そう言って、アルヴァイトは僕に向かって走ってきた。
僕はそれを確認すると、右手に闇魔法を溜め始めた。
近づいてきたアルヴァイトの攻撃は速く、アルタのサポートがなければ当たる攻撃ばかりであった。
「ちっ、なかなかに避ける。さすがに魔王様を驕っただけはある」
「ひやぁぁ……」
『……うむ、まだまだじゃな』
その避けている間に何回か僕は闇魔法をぶつけていたが、それはまったくダメージを与えているようには見えなかった。
「ふん、魔王様を驕るのならば、魔法ももう少し鍛えるべきだな。」
アルヴァイトはそう言って、攻撃を速めていった。
そして、その攻撃は徐々に避けずらいモノへとなっていった。
「攻撃がさらに速くなってきた!?」
『ほぉ……あれからも、鍛えておったか。』
「いやいや、そんなこと言わずにどうすれば……」
『ふむ、現在のお主のレベルじゃアルヴァイトにダメージは与えられんのならば、最初から溜めておったあれを使え』
「アルタが最初にやっておけって言ったあれ?」
『うむ、アレじゃ』
「……分かった」
「ふん、一人でぶつぶつと……」
僕はあることをするためにアルヴァイトに衝撃魔法を当て、その衝撃で一定の距離を取った。
「ふん、離れてもすぐに追いつくぞ。」
「いや、これで大丈夫」
僕はその一定距離を取ったとき、最初からして溜めていたある魔法をアルヴァイトに向けてはなった。
「ぬっ!?その魔法は!」
「喰らえ!『ディアボリックドレイン』!」
「避けられぬ、ぐぅぅぅ」
僕に迫ってきていたアルヴァイトはその魔法を避けられずまともに受けていた。
「ぐっ……まさか、その魔法を使うとは……だが……いや、ここは下がる。覚えていろ、魔王様と驕ったことを!」
そう言って、アルヴァイトはその場から逃げていった。
僕はそれに追撃しようとしたけれど、アルタに止められ追撃することをしなかった。
『まぁ、あれでも……わしの部下じゃしな』
とのことだった。
『さて……邪魔者のいなくなったことじゃし、さっさと封印をとくとするぞ。』
「う、うん……」
そして、僕達は誰もいなくなった封印の前に立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます