第4話 はまりました

ギルド長から封印の紙を渡されてから一日が立ち、僕達は魔王の体の一部が眠っている山へと来ていた。


『さて、わしの体の一部をさっさと取りに行くのじゃ!』


その山の前で僕の中でアルタがそう言った。

けれど、うん……昨日来た時となんか……そうなんか違う。


「ねぇ、アルタ?この山こんなに木生えてたっけ?」

『うむ?元々こんなもんだったはずじゃが?』


アルタに聞いてもそう返ってくるだけだった。

うーん、本当にこんな感じだったかな?

まぁ、いいか。


僕はそう思い、山の中へと入って行った。

ただ、この時僕の後ろから何かつけてきているということには一切気がついていなかった。


□□□


僕達が山の中へ入り、それなりに時間が立っていた。


『ふむ、あの紙を見るにここから奥に行って右に曲がった当たりじゃの』

「ん、分かった。それで、もう少し先を右?」

『あぁ、もう少し先を右に曲がるのじゃぞ。』

「分かった。」


僕はアルタの説明どおりに道を歩いていった。

けれど、歩けども歩けども一行にその封印の場所までは着かなかった。

そして、僕は一旦、立ち止まりアルタに話しかけた。


「ねぇ?アルタ……本当にあってるの?」

『うむ、間違いは無いはずじゃ。わしの記憶力を舐めるではない。それに、わしの記憶も一部流しておるからおぬしにも分かるじゃろ?』

「……うん、確かに」

『そうなるとじゃ……やはり、この山で何か起こっているということじゃな……もう、しばらく歩くがよい。』

「……そうするしかないみたいだね。」


アルタと話し合った結果、僕達はしばらく歩くことになった。

ただただ、疲れるだけなんだけどね僕だけ……


□□□


『ふむ……やはりか』

「はぁはぁはぁ……何か、分かったの?」


あれから、数時間僕は歩きつづけていた。

でも、結局封印の場所まで着くことはなかった。

僕はさすがに、この数時間歩きっぱなしで疲れていたので、木の根のあたりに腰を下して座っていた。


『うむ……わし達は同じところを永遠と歩きつづけておる。』

「えっ!?」

『おぬしに歩き始める際に言ったことを覚えておるか?』

「確か……地面に×印をつけろって言ったよね。」

『あぁ……そして、アレを見るのじゃ』


アルタはそう言って、僕の手首の支配だけ奪いその手首である一箇所の地面を指した。

そこには、僕が書いたであろう×印が深く刻まれていた。


「ほんとだ……僕が書いた印がある……

『これをつけたのが数時間前じゃ、そして、わしがこの印があるのに気づいたのは……今よりも1~2時間前じゃな』

「ってことは……まだ歩いていたとき?」

『うむ、その時もこれを見つけての……疑問に思ったんじゃがその時はまだ確証がなかったからの。それで、いまはっきりと分かったのじゃな。』

「そう……じゃぁ、ここまでの歩きは意味があったわけだ。」

『うむ、歩き損じゃなくて良かったの』


アルタはそう言って、笑っていた。

自分が今、体の支配権を持ってないからって偉そうに……

まぁ、さすがに面とは向かってはいえないけれども


『聞こえて……いや感じておるぞ』

「んん、なんでもないよ」

『まぁ、そういうことにしておくかの……』


どうやら、僕が思ったことを感じられるようになったようだった。

……どんどん、侵食されてないかな僕?


『そんなことはない』


そんなことは無かった。信じないけども……

とりあえず、一旦僕は現在の状況を整理することにした。


「とりあえず、まとめると現在僕達は迷っている」

『うむ』

「そして、その原因はまだ分かっていない。」

『あぁ、その通りじゃ、と言ってもこのループ構造ももう少ししたら分かるがの』

「さすが、アルタだね」

『褒めても何も出んぞ』

「知ってる。じゃぁ、その分かるまでここで休むでいい?」

『うむ、十分休むが良いぞ』


アルタから許可は貰ったので僕は休むことにした。

その際、僕はこの山に入る前に買っておいたご飯を食べることにした。


「じゃぁ、今食べるかなぁ……食べるタイミングとか無さそうだし。」

『ほぉ、ポワロエッグサンドか』

「うん、前に買っておいしかったからね。」


このポワロエッグサンドは卵と葱みたいなものが挟まれているサンドイッチだ。

そして、この卵には少しだけ工夫がされている。

その工夫とはなんと、この卵にはチーズが入れられているのだ。

このチーズがいい風味を生み出しこの葱みたいなものと卵を調和させている。


「うん、おいしい。」

『ほぉ、確かに味はいいの……感覚だけじゃなく普通に味わってみたいの……ということで』

「えっ!ちょっと……」


そう言って、アルタは僕の体の支配権を簡単に奪わった。

……ちくせう。


「ふむ、確かに食感も良いの……ほぉほぉ」

『……アルタァァ』


アルタは僕の体の支配権を奪い取ると、そのまま一気にポワロエッグサンドを口の中に全て入れ、それを食べ終わると、アルタは僕に話しかけてきた。


「ふむ……満足じゃ。どちらにせよおぬしも味は分かるしよかろう?」

『そうだけどぉ……』

「それにじゃ……別に普通に味わいたかっただけじゃないからの支配権を奪ったのには、じゃから安心せい」

『えっ?』

「まぁ、見ておれ」


どうやら、アルタはただ……食感とかを味わうためだけに支配権を奪ったのではないらしい。

それを見せるためなのか、アルタはある一本の木に向けて魔法を放った。


「さぁ、正体を現すがいいぞ!ブラッドファイア!」


アルタの……いや、僕の体から一閃の黒い炎が迸り、一本の木は燃え始めた。

燃え始めてからすぐに、その木から、一種の叫び声が轟いた。


「キシャァァァァァァ」


その悲鳴が消えると、魔法を当てた木から火が消えた。

そして、その木は正体を現した。

その木の僕達を見ているほうは顔の様なくぼみができ、枝は鞭のようにしなやかになった。さらに、本来は地面にあるはずの根が地面から出てきた。


「ほぉ、なるほど……封印されたわしの一部の魔力に当てられて木が魔物化しおったか。ふむ、さしずめ……トレントと言ったところか。」


アルタはその木を見て、そう言った。


「さて、本体のあぶり出しは終わった。わしの仕事もココまでじゃ。後はよろしく頼むぞ。」


そう言って、アルタはあっさりと体の支配権を僕に戻した。


「えっ!?ちょっと待って。僕がやるの」

『あたりまえじゃろ……ここでわしがやると支配権を奪える時間が極端に減るそれは嫌じゃ。』

「あ、そう……」

『それに、わしと話しておる時間は無いぞほれ。』

「わぁっと!?」


僕がアルタと脳内会話をしていると、動かない僕に痺れを切らしたのか、その魔物は僕に攻撃してきていた。


「危ないなぁ……」


その攻撃は枝を鞭のようにしならせ何回も僕に向かって振り下ろす攻撃だった。

ただ、ゆっくりだったので完全に全てを回避した。


「クシャァァ…!」


その魔物……トレントは僕が攻撃を完全に回避したのを見て、悔しそうな顔をしていた。


「……はぁ、僕的にはまだ疲れてるのにしょうがないな……」


僕はそう呟き、悔しそうにしているトレントに向けて魔法を放った。


「ファイアストーム!」


その魔法はトレントを飲み込み、トレントがいた場所で燃え始めた。


「クシャァァ!?キシャァァ!!」


その炎に飲み込まれたトレントは悲鳴とも叫び声とも分からぬ声で鳴いていた。

たまに、炎の中から、燃えている枝が僕の方へ飛んできたが、僕の元へ届く前に燃え尽き消えていっていた。

それから、数分の時間が立ち、炎が消えるとそこには燃えて黒くなったトレントがいた。


「これで……大丈夫かな」

『わしもこんな魔物は始めてじゃからな。おそらくとしか言えぬ。』

「そう……でも、まだ生きてるかもしれないから小さいのだけうっておこう。ファイア」


僕は、まだ生きている可能性を考え、その黒くなったトレントに向けて弱い炎魔法をぶつけた。

その魔法がぶつかると、黒くなったトレントは少しずつ崩れていった。


「……どうやら、大丈夫みたいだね。」

『そうみたいじゃな。さて、これでおそらくあのループは無くなったはずじゃ。行くぞ』

「うん」


こうして、僕達はトレントを倒し、長かったループを抜けて、封印のところまで行くのであった。

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