第3話 依頼を受けました

「ふぁぁ……朝かぁ、そしてココはどこだ」


僕は起きたと同時に泊まっていた宿屋では無いということに気がついた。

なぜかというと、完全にここ草原なのである。


『おぉ、起きたか。なかなか起きぬのでな勝手にさせてもらったぞ。』


……やっぱり、お前か!


『まぁ、今起きてくれたのが幸いじゃったな。……無駄に時間を使うとこじゃったな』

「あぁ、そう……」


そして、僕は周りを見てみると……無駄に魔物の死骸が倒れていた。


「お……おぉ!?どうなってんのこれぇ」

『見ての通りじゃ、わしがやった』

「うん、分かってる、状況説明してくれない?」

『ふむ、しょうがないやつじゃな』


アルタが言うに、昼になっても僕がまったく起きなかったので情報集め兼小銭稼ぎのために依頼を片っ端から受けたらしい。

んで、この魔物の死骸はその依頼で受けた対象の魔物たちであった。


「うん……まぁ、いいか」


とにかく、この魔物の死骸から魔石と討伐の証の部位をぱっぱと取っていった。

それから、ココはどこら辺なのかをアルタに聞き、街へと戻った。

その際、憲兵の人たちが僕を見て

「おぉ、もう4つ目も終わったのか……昨日ココに来たばかりなのに、がんばるねぇ」

と言ってきた。

どうやら、アルタは本当に片っ端から常設依頼の討伐系ばかりやっていたらしい。


頭の中でアルタはあれやこれやと自分が集めた情報を僕に伝えてきた。

本来は僕も記憶しているはずだが、寝ていたので記憶はされていなかった。

その情報の中には勇者のことについてもあった。

僕としては会ってみたいが……このアルタの所為もあり会いたくても無理だろうなぁと思った。

ちなみに……勇者は女性らしい。なんでも、僕と同じく異世界からの召喚者であった。

まぁ、僕の場合、術式違いで-なんか後で聞いた話だけど-人間じゃなくて分類的には召喚獣らしい。正直ひどい

一部の召喚術師にはばれる可能性があるから気をつけろといわれた。

まぁ、そんな召喚師に会うことなんてないだろうなぁ、うん。

ないよね?


そして、僕はギルドにつき依頼の精算をしてもらった。

その際、受付嬢にも驚かれた。


「本当にすごいのですよ?この街の周りに弱い魔物しかいないんですけでも、この短時間で依頼分のモンスターをこれだけ討伐するのは。」

「そ、そうなんですか?」


僕は受付嬢からどれだけすごいかということを言われた。

……余り目立ちたくないんだけどなぁ、というか目立って良いのかなぁ?

僕はそれとなくアルタに聞こえるように問いたが……


『ぐぅ……』


寝ていた。


□□□


で、それから依頼の分と買い取ってもらって出来たお金を使い装備回りを充実させていくことにした。


『ふむ、武器は杖かナックル系がよいじゃろう。まだおぬしは媒体なしでは威力が半減する技が多いからの』

「杖かナックル系かぁ……」


そう言われたのでひとまず、ギルドの人に武具屋を教えてもらい、僕達はその装備具屋へと行った。

ギルドの人に教えてもらった装備具屋にはすぐに着いた。

その武具屋には大小それぞれの剣や杖などが置いてあった。

僕達は早速、吟味していった。


『ふむ、これなんかどうじゃ』

「あぁ、確かに僕が使える魔法的にはあってそうだね……」


僕達は一つの杖の前で立ち止まり、その杖を手に取った。

その杖は、杖の先に髑髏があり、紫をベースにした禍々しい感じのものだった。


「見た目はこの際置いといて……確かに使いやすいかな」

『そうじゃろそうじゃろ、しかもいかにも禍々しい感じがするのもよい』


アルタの嗜好もやっぱり入ってたらしい。

まぁ、そんなことはともかくとして、早速この杖を買うことにした。


「これください」

「ふむ、魔髑髏の杖だな、1200フレルだ」

「はい」


僕はその杖を店員に渡し、お金を払い、その杖を買った。

その他にも防具やアクセサリなど見て、必要そうなものだけ買って、その装備具屋から出て行った。


それからしばらくして、街をいろいろと探索し宿屋へと向かった。

街を探索したけれど、これといったものは何も無かった。

まぁ、僕異世界召喚された!ってはしゃいでたりしたけど実際にこの街からしてみれば、勇者でもなければ権力者でもないただの一般人だからなぁ……まぁ、どうでもいいか。


そんなこんなで今日が終わった。


□□□


それで、次の日……起きて、依頼を受けにギルドまで行って、依頼を受けたまではいいんだけど……


「ねぇ……アルタここどこ?」

『ふむ、ここか?山じゃ』

「……知ってる、でもなんでここに?」

『わしが来たかったから来た。』

「……そう」


なんか自由気ままに体の支配権を奪われてる感じがするけれど拒否権はまったくといって無いため、何の反論も出来なかった。


『さてとじゃ、ここにわしの体の封印された一部があるという情報を昨日、伝えておったじゃろ?』

「ん、まぁ、一応言ってたね」

『ということで、今日はこの山で出来る依頼を受けてもらったのじゃな』

「あぁ……そういうこと」


僕が受けた依頼はほとんどこの山-カエレン山-で取れる薬草や茸の採取の依頼だった。

というか、この山の依頼だけ一まとめに採取依頼が張られているところに大量に残っていた。

……まぁ、この山の名前で分かるとおり、この山一度でも迷ったら帰れなくなるそうだ。普通に怖い。

そのため、ほとんどこの山で取れるものは単価が高いさらに人もそんなに来ないためいっぱいある。


ちなみに、後で迷ったらどうするんだとアルタに問いたところ

『心配いらん、わしの魔法ですぐに帰れる』

と言ってった。さすが僕に憑依してても魔王様です……はい。


『さてとじゃ、わしの体の一部と言っても腕とか足とかのパーツではないはずじゃ。あ、そこにある草がこの依頼書に書かれてる薬草じゃな』

「あーはいはい」


アルタは、目的をいいながら僕に依頼されていた薬草のこととかも言ってくれた。長年生きてただけあるね……


それからしばらくして、依頼にある薬草とか茸とかをほとんど集め終わってからアルタは言ってきた。


『何か、あるのは分かったんじゃが。分からんの……それに周りも暗くなってきたしの帰ることにするかの。』

「んーそれもそうだね。」


僕はその魔王の言葉に同調し、山を降りて行った。


□□□


そして、街に戻ってから僕達はギルドにいた。

……それも、ギルド長室に。


「……うむ、よく来てくれた!俺がこの街のギルド長のフレルドアだ」

「あ、はい」

「さて、君をココに呼んだのは少しだな頼みたいことがある」


そう言って、ギルド長は僕に頼みたいことを言ってきた。


「頼みというのはだな。君は確かカエレン山の依頼を受けていただろう?」

「はい」

「そのカエレン山に関しての依頼なのだ……」


ギルド長は、隣にいた秘書らしき人物に少し話をし、秘書らしき人物は棚から紙を取り出しそれを僕の目の前まで持ってきた。


「……これを見てくれ」


ギルド長はその紙を僕に見るように促してきたので僕はその紙を見た。


『……これは!?』


その紙を見た瞬間、アルタが驚いた。

それもそのはずその紙に書かれていたのは、アルタの……魔王の封印に関してのものだったからだ。


「見てくれたか。そうだ、その紙に書かれている通りのことがあの山にあるんだ。だが、最近その封印が解けかけているという情報がある。そもそも、あの山は元々普通の山だったんだがね……」

「なるほど、でもなぜ僕に?最近街に来たばかりですよ」

「ふむ、もっともとだな……簡単に言えば、あの山の依頼をそれなりに受け、普通に戻ってきていたからだな。」


どうやら、ギルド長あの山でのことで頭を抱えていたらしい。ここの冒険者の中にも帰ってこれるものがいたが、一度帰ってきてからはあの山へ行きたがらなくなっていた。

それで、最近この街に来てあの山の依頼を受け、無事になにごとも無く帰ってた来た、僕に白羽の矢が立ったらしい。


「それでだ……受けてくれはしないか?」

『ふむ、これは好都合ではないか。受けるのじゃ』

「……受けることにします。ですが、何をどうすればいいので?」


僕はアルタに言われ、その依頼を受けることにした。


「ありがたい。この封印紙をその封印に貼り付けてほしい。」

「これ……ですね。」

「あぁ、そうすれば、あの山は元の普通の山に戻るはずだからな。……では、頼む」

「はい、では今日は宿に戻ります。」


そう言って、僕はギルド長の部屋から出て行った。


☆☆☆


「で、どう思うアリサ」

「はい……あの方、私が思うに人……人間種ではないですね。」

「そうか」


恵が出て行った部屋で、二人の人物が会話をしていた。

その人達は、ギルド長のフレルドアと秘書のアリサと呼ばれた人物だった。


「……ですが、悪い人ではなさそうです。」

「ふむ。……ならば、問題は無いか……さて、君の能力はありがたいからな今日は助かった。帰っていいぞ。」

「はい」


そうフレルドアは言い、秘書のアリサは部屋から出て行った。

そして出て行った、アリサは自分の泊まる宿屋へと戻っていた。

そう、このアリサという女性はギルド付きの秘書では無く、フレルドアに呼ばれた特殊な目を持つ召喚師であった。

アリサは己が泊まっている部屋の中で笑いをこらえていた。


「フ……フフフフ……フフフ、まさかあんなところで、人型の召喚獣が見れるなんて。しかも、召喚者は見当たらない。野良または、はぐれかな。」


アリサは結局笑いをこらえられず、笑っていた。

その笑いは獲物を見定めた笑いだった。


「あの子を手に入れるわ!フフフフ……リュルーお願いね。」


アリサはいつも待機させている、己の召喚獣に話しかけ、そのまま寝に入ったのであった……

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