第2話 街へ行こう

翌日になった。


『朝じゃ!起きるのじゃ!』


頭の中にアルタの声が響いてきた。

やっぱり夢じゃ無かったよ。

それにしても頭の中で声が響くせいで耳元で大声を出されるよりもうるさい。

もうちょっと寝たかったのだが、これでは二度寝できないので起きることにした。


『うむ、起きたのでは早速、特訓じゃ』


起きて早々、とりあえず簡単な食事-そこらへんで捕まえた鹿っぽい魔物の肉を焼いただけのもの-を取り、早速連れ出された。体の支配権とられて。

てか僕の体の支配する時間て短いんじゃなかったっけ?


『うむ、短いといっても一日12時間は奪えるぞ、まぁ魔法とか使うと短くなるがな。』


そうらしい。

って12時間って半日じゃん。短く無いじゃんと言ったら普通に

『12時間っていっても取ったり戻したりしすぎても減るからせいぜい6時間前後になるのじゃ。」って言ってきた。

……ま、まぁ短いか?それでも一日の4分の1だけど


『まぁ、そんなことはどうでもいいのじゃ。特訓じゃ特訓』


ってことで、つれてかれた。もちろん体の支配権奪われて


□□□


それから数日、数ヶ月と時間がたった


『うむ、とりあえず免許皆伝といったところかの』

「はぁ……やっとかぁ」


ここ数ヶ月でアルタが持つほとんどの魔法や闘技を使えるようになった。

ただ、一部の魔法は僕の体自体が受け付けないので使えなかった。

まぁ、僕の体を支配した状態のアルタなら使えるのだが。


『さて、街に行くのじゃ……といいたいところじゃが、おぬしの設定でも考えるかの』

「設定?」

『うむ、設定じゃ』


アルタ曰く、この世界の街に入るためには身分証明が必要らしい。

この世界の常識を教わった時もいっていたな確か。

で、設定の話しになるんだけど森の奥地とか山の奥地とかで師匠と修行していた感じの設定にするらしい。

それで世間知らずで身分証明がないという風にするらしい。

その場合、その町の憲兵と一緒にギルドに行きギルド証を身分証明の変わりにできるということらしい。

まぁ、これが打倒だろうということだ。


『まぁ、設定はこんなもんじゃろ。まぁ、わしもおぬしん中におるし下手な失敗はせんじゃろ。』

「まぁ、そうかなぁ」


まぁ、自分の設定なのにアルタが一方的に話して一方的に決めていた。

でも、自分の召喚されて始めての街へ行くことができるのだ。

わくわくはしている。


『じゃが……』


アルタは空が見える天窓を見た、僕も釣られて見たが、真っ暗だった。


『明日じゃなぁ』

「ですね」


ということで今日は寝ることにした。


□□□


ってことで次の日。


『街に行くがてら魔物を討伐しながら行くのじゃ』

「どうして?」


僕は普通に疑問を抱きながらアルタにたずねた


『ふむ、身分証明を手に入れるついでに小銭稼ぎじゃ、ここいらの魔物ならば魔石が少々手に入るからの』

「あぁ、なるほどね」


つまり、ギルドでその魔石が換金できるということだった。

余裕があったので、僕達は街に続く道を行きながら遭遇したコボルトやゴブリンを全滅させていた。

結果的に、そこそこの魔石をてにいれた。

……ちなみにどこに、収納しているかというと魔王が僕の体を使って生成した|魔法鞄マジックバックに入れている。

この魔法鞄マジックバック100Kgまで入りなおかつ重さを感じさせないという優れものだ。


『おぉ、見えてきたぞ』

「あれが、この世界の街かぁ」


僕達の目の前には大きな門が見えてきた。

その門の前ではいろいろな種類の馬車やいろいろな装備で固めた人たちが順番待ちをしていた。


『さて、わしらも並ぶぞ』

「そうだね。」


そう言って、僕も順番待ちをしている人たちの最後尾に並んだ。

それから数時間した後に僕の番がやってきた。

(意外と長かったなぁ)


「次の方どうぞ」

「はい」

「では、早速ですが身分証を見せていただきますでしょうか?」


門の前で立っていた憲兵がそういってきたので、自分はアルタと決めた設定を語った。

すると、憲兵は


「……ふぅむ、そうですかではこちらの部屋でお待ちください係りの者が来ますので」


と言ってきたので、僕はそれに従うように案内された部屋へと入った。

案内された部屋に入ってから数分後、係りの人がやってきて、僕にいろいろと聞いてきたので、当たり障りの無いようにアルタと脳内で会話しながらといた。


「ふむ、問題は無いようですね。では、私の後についてきてください。このままギルドへと行きますのではぐれないようにしてくださいね」

「分かりました。」


そういって、係りの人は部屋から出て行き、僕もその後を追った。

係りの人を追っている最中に街をきょろきょろと眺めていた。

その街の光景は僕にとって、この世界で始めてみる光景だったので、すごくわくわくした。

そして、係りの人についていってから数十分がたったころようやくギルドについた。


「ようこそ、ここが我らが、街最大の冒険者ギルドです。」

「うわぁ……」


僕はただそのギルドの内装・外装に驚いた。

外装は木のようなもので作られた立派なもので、内装はゲームとかでよく見る依頼掲示板とカウンター、それから酒場のような場所、もう見ただけで僕のわくわくゲージは臨界点まで行っていた。


「では、早速、ギルド証を発行しましょうか」

「はい!」


というわけでちゃっちゃとギルド証を作りましたとさ。

え?受付嬢とかギルドマスターとかにあってなんちゃらが無かったかって?

うんなにも無かったよ。あっさりと特に何も言われず名前と年齢を書いて認証されました。

まぁ、僕が17歳って年齢欄に書いたら、僕の姿を3度見ぐらいされたよ。係りの人と受付嬢に……

そうですよ低身長ですよ……うぅ。


『おぬし……成人じゃったのか。わしも身長は低いがこれはわしの種族ゆえだからしょうがないのじゃが……そうか』


アルタにもこう言われた……うぅ。

ちなみにこの世界では15歳で成人扱いになるそうだ。


「え、えーと、これで身分証明書は出来ましたね。そのギルド証は貴方の身分証明になりますので、なくさないようにしっかりと見につけて置いてくださいね。

なくした場合は何をされても保障は出来ませんので……」

「……はい」

「では、私はこれで、良き生活を」


そういって、係りの人はギルドから出て行った。

……気を取り直して、次は換金の手続きでもしよう、うんそうしよう

そう思い、目の前にいた受付嬢に魔石の換金場所を教えてもらった。

このギルド内の一番おくにあるそうだ。

ということで、早速換金しにいった。


「あのぉ、この魔石を換金しにきたんですけど」

「はい、換金ですね」


そういって出てきたのは、イヌミミを生やした女性の人だった。

僕は内心、ケモミミッコキターーーと喜んでいた。


「ふむふむ……これはゴブリンの魔石が20個、コボルトの魔石が20個……しめて、1100フレルですね。」

「はい、ありがとうございます。」

僕は換金されたお金を魔法鞄マジックバッグにすぐに入れた。

ちなみにこの世界でのお金の単位は一括でフレルで、金貨や銀貨などではなく紙幣である。この紙幣、高等な魔道具によって作られているため偽造は出来ないと評判らしい。

種類的に言えば1フレル紙・10フレル紙・100紙・1000紙・10000紙となっている。日本で言う5000円札や500円玉といった間のものは無い。


「それにしても、すごいですねぇ。ゴブリンやコボルトとはいえお一人で20匹ずつ討伐するなんて。」


イヌミミの女性は換金した後すぐに僕に話しかけてきた。


「いえいえ、偶然近くに通りがかった大群を一度に相手にしただけですから。」

「……えっ?」


僕がそういうとイヌミミの女性は驚いた顔で固まった。

あれ?僕なんかおかしいこといったかな?


「えっと1匹ずつとかじゃなくて大群相手ですか?」

「はい」

「……」


イヌミミの女性はただ固まっていた。

ん?ほんとに何かおかしいこと言ったのかなぁ?まぁいいか

そう思って、僕は一度そのイヌミミの女性に挨拶をしてからその場を離れていった。


「……」


そのイヌミミの女性は僕が離れてもしばらく固まっていた。


「あ、あの身長的に14歳とかその辺よね……まだ成人してない子が大群を相手にかぁ」


そして、それからもうちょっと時間がたってからイヌミミの女性はボソッと言葉をもらしていた。

もう、その場にいない僕は、聞こえていなかったのだが何かまた身長で年齢を下に見られたような気がしたのだった。


□□□


『さて、今日は宿を取って終わりじゃな』

「そうだねぇ……」


僕はギルドから出ると早速、ギルドからおススメされた宿屋へと直行した。

その宿屋は見るからに高級そうでもなくボロくも無い普通の宿屋だった。


「はいらっしゃい」


僕がその宿屋に入ると、豊かそうなおばちゃんがいた。

このおばちゃんがこの宿屋の管理人のようだった。


「あの一泊いくらですか?」

「一泊かい?一人150フレルだよ。ご飯は朝と夜に1回ずつ付いてるよ。それと、別途でお湯が20フレルかかるからいる時はお金と一緒に言っといておくれ」

「そうですか……えーと、とりあえず3泊分と3泊分のお湯お願いします。」


僕はアルタと最初から決めていた日数を言い、お金を払った。


「確かに600フレル受け取ったよこれお釣りの90フレルね。夜ご飯は後2時間後ぐらいだからそれまでにそこのどれかのテーブルに座ってておくれ。

それとこれはあんたの部屋の鍵さね、無くさないようにもって置いてくれよ。無くした場合、罰金として400フレル貰うからね。」

「はい」


僕はおばちゃんの話しを全部聞き承諾した。

そして、そのまま僕は自分があてがわれた部屋へと入って行った。

そして、今日は特にやる事もなくないので、夜ご飯になるまで部屋で待っていた。

そして、夜ご飯を食べ、買っていたお湯で体を拭きベッドに横になった。


『一日目はこんなものじゃろうな』

「だよねぇ……」

『明日からは我が体を取り戻すための資金集め及び情報収集じゃ』


僕とアルタはほどほどに会話をしつつ、僕は久しぶりのベッドに顔をうずめ静かに眠りへと入っていった。

明日から始まる怒涛の依頼ラッシュに疲れるとは知らずに……

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