僕は魔王の召喚獣

GN-Va

一章 封印と召喚師

第1話 召喚されました。

「む、無理無理無理無理!こんなに大量のモンスター相手に僕が戦えるわけないじゃないかぁぁぁ!」


僕、白木恵しらきめぐむは目の前に迫る、ゴブリンの軍団を見てただ絶叫していた。


『えぇい、何を言っておる!わしが憑依しているのじゃ!こんな雑魚同然のモンスターの軍団などわしの力を使えば簡単じゃろが!』


そんな僕に叱咤してくる人物……というか僕に『憑依』している幽霊がいた。


「いやいやいや、無理だってまだ僕、この力についてけてないんですが!」

『ならわしが変わってやってやるのじゃ!』


そういって僕の体の支配権をあっさりと奪い取り、ゴブリンの軍団を魔法で一網打尽にしていた……


なんで、僕がこんなことに……というか『憑依』されることになったんだ……

それは、数時間も前にさかのぼる。


□□□


「ん……ここはどこ?」

「おぉ、目覚めたか!我が召喚獣よ。」


僕が目を覚まし周りを見渡すと、僕のことを召喚獣と呼ぶ、幽霊?の少女がいた。


「ふむふむ、人型かわしにとってはありがたいことじゃな。」


そんな少女は僕を見て、なにやらいろいろと思考していた。

僕は、その少女を見つつ僕がいる場所を確認するために周りを見渡した。

そこは、僕がさっきまでいた自分の部屋ではなく、何か聖域のような邪神とか女神とか祭ってそうな祭殿だった。

……これっていわゆる、異世界召喚的なものかな?といったことを思いながら考えていると幽霊?の少女が僕に話してきた。


「よし、では早速契約するのじゃ!」

「契約?」


僕はいきなり契約と言われとりあえず問い返した。


「うむ、契約じゃ、ちなみにそなたに拒否という概念は無いから安心するのじゃ!」


理不尽である。

有無を言わさずまま指の先を少しちくっとされ血を少し採られ、何かの魔法陣を埋め込まれた。

これが契約なのだろうと思った。


「契約完了じゃな。」


一方的に告げられ、とりあえず体に異常が無いかを確認したところ、特に異常はないと感じたのでまぁいいかなと思った。

ただ、この時少しでも抵抗していれば……とこの後すぐに後悔したのであった。


「さて、契約が終わったのでな……まず、わしの名前を伝えておこう。わしはアルタ=ベル、俗に言う魔王と呼ばれていたものじゃ!あ、おぬしの名前は契約により勝手にわかっておるから名乗らなくてもよいぞ。」


……ハッ!?

目の前の幽霊?少女はいきなり僕にとって驚きの言葉を発した。


「ま、魔王!?」

「うむ、魔王じゃ、といっても今はただの幽霊もどきじゃがな。」


といって、目の前の幽霊?少女改め魔王少女は言う、

この魔王少女数年前に勇者と戦い封印されたらしいのだが、その際自分の体から霊体つまり今の彼女自身抜けてきたらしい。


「うむ、あの勇者は強かったのぉ……」

「は、はぁ……」


僕は、そのまま魔王の昔話を聞かされた。

なんだかんだ聞いていると、天窓から見える明るかった空が暗くなっていた。

この魔王少女、何時間ぐらい己の話をする気だ……


「それでじゃ、召喚できる力が溜まったからの召喚した結果、おぬしが召喚できたわけじゃ。」

「そうですか……」


それから、魔王少女の話が終わったときには、もう空は真っ黒で星が瞬いていた。

で、肝心の僕が召喚された理由だけど、簡単に言えば自分の体を取り戻すためにだった。

ちなみに、僕が召喚された理由は普通に偶然、そもそも人型とか言ってたから獣系を召喚するつもりだったのだろう。


「さてさて、わしの話をしすぎてしまったようじゃな」


そういって、天井を見上げる魔王少女は……もうアルタでいいか呼び方。

改めて、アルタは天井を見上げそして僕を見てきた。


「早速、憑依させてもらうのじゃ。あ、さっきも言った通り拒否権などないからの。契約陣も埋め込んだしの」

「えっ」


まってまって、その話し聞いてないし、問答無用で埋め込まれたし了承してないって


「む?拒否権は無いのだから了承もいらぬぞ?わしが勝手に憑依するだけじゃからな!」


そう高らかに宣言して、僕の体の中に入ってきた。

比喩でもなんでもなく本当に


『うむうむ、人の召喚獣だけあって親和性は高いの……』


普通に頭の中に声が響いてきた、なんか変な違和感がある。


『うむ、じきに慣れるじゃろちょっとは我慢するのじゃな』


そうかぁ……特に反論もできずただ受け入れるしかないのであった。

あぁ、あの時ちょっとでも抵抗していれば……


『そう落ち込むでない、わしが憑依したことによっておぬしにも我が力が使えるようになったのじゃからな。』

「例えば?」


僕はとりあえず聞き返してみた。

結果的に言えば……実践された。


「この様なことじゃ」

『……えぇ!?』


そういって、僕の手の先から炎の弾丸が飛んでいった。

さらにその際、僕の体だったはずなのに、黒だった髪が赤くなり……下の方に違和感があった。あるものが無い感覚がしたのだ。

ちなみに、顔は元々女よりだからそんなに変わらなかった。


『え?え?ど、どういこと、それに……自分の意思で体動かせないんだけど』

「それはそうじゃろうな、現在おぬしの体の制御はわしがおこなっておる。わしが力を使いやすいように改変してな。」


つまるところ……体乗っ取られた。

しかも、性別までいじくられてる。

こ、これって戻れるのてか戻るの!?


「安心せい、わしが体の制御してない時は元通りに戻るというかこの状態になれる時間短いのでな……」


アルタがそういうと、自分の体が動かせるという感覚が戻ってきた。

戻ってきたと確認してから下を確認したところ、あった。あるものはあった。よかった。


「あぁ……よかったぁぁ」

『よし、ではとりあえず今日は休んでよいぞ明日からわしの力をおぬし自身で使えるように特訓するからの』

「あ、そう……」


僕はただのその言葉に了承するしか選択肢が無かった。


□□□


そして次の日、アルタの前日の言葉通り実戦形式でやらされた。

冒頭で話をしていた、ゴブリンの軍団やウルフの軍団の場所に連れて行かれ、アルタが使える魔法や闘技を慣れるまで使わされた。

そして、ひとまず及第点が貰え、一旦休憩に入った。


『ふむふむ、とりあえず及第点かのじゃが、わしが使える最上級はまだまだじゃのぉ……』

「それはそうだよ……いきなり召喚されて流されるままやってるけど……」


というか、自分のこの環境になれる速度が異常なまでに早かったな、うん。


『まぁよいじゃろ、さて休憩はココまでじゃ。次は座学でもするかの』

「座学?」

『うむ、座学じゃ。おぬしは人型じゃつまり街に入れるからのこの世界の常識とかもろもろを叩き込むのじゃな。』


あぁ……そうか、それもそうだった。

この魔王の目的は自身の体の復活だった。

それを考えれば、街に入り勇者情報や現在の通称魔族情報などを手に入れることができる。

ってわけで、いろいろとこの世界の常識を叩き込まれた。

その時点で空は暗くなっていた。


『ま、こんなもんじゃろうな。』

「……なるほどなぁ、あんまり変わらないのか。」

『さてとじゃ……今日はこの辺でいいじゃろう。次は明日じゃ』


アルタはそう言って、寝た。僕の中でだけど


「……ハァ、僕も寝よ……これ、夢とかだったらいいんだけどなぁ」


そして、僕も祭壇を寝床に寝た。


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