第2話

 シーナ 外見年齢27(実年齢はあらゆる手段を使っても分からず)視点



 「おおおおぉぉきききぃぃろぉぉぉぉおお」


 私はこの近くの名物と成りつつある、『朝の号令』を喉がはち切れんばかりの声で叫ぶ。すると何人かの気配が感じられるようになった。今日は次で終わるかね?


「二回目言うぞぉぉおお」


 そういった瞬間、目の前に気がついたら並んでいる計18人の子供たち。

 ん?18人?


「おい、シェイドとレイはどこだ」


 私はできるだけドスを効かせた声で今集まっているなかで最年長の少女、エリアに六年前に拾ったガキんちょどもの居場所を聞く。


「わ、分からないです「あ゛?」ヒッけど、昨日ベットでなにかこそこそ喋っているのは聞きました。何でも屋根裏がナントカだの…です。シーナお姉さん」


 おやおや、いつもはシーナお母さんでいいと言ってるのにどうしたんだろうね、今日は。

 まぁいい。これであのくそガキどもの居場所が特定できる。

 私は魔法<クリエイトアイス>で氷の包丁を作り、今度は<サーチ>で居場所を突き止める。


 そこだ!


 私は氷の包丁をガキどもがいる場所の半歩ほど離れた場所へ投げつける。号令している場所は二階建てのうち、吹き抜けの部分なので包丁は投げやすかった。


 天井があると突き抜かせるのがめんどくさいからね


 ドンッという音の一拍後にギャアという声が聞こえて、直ぐに、二人の男の子が屋根裏からジャンプして降りてくる。

 あの高さからジャンプしてよく怪我しないなと考える事すらもう止めた。

 そしてにこやかな笑顔で二人に近づきこういい放つ。


「家事、全部な」


「「ちょっ」」


 白い灰になっている二人を無視し、他の子達に朝飯を食べるように促す。

 

 この二人のガキどもの名前はシェイドとレイという。

 黒髪の方がシェイドで金髪の方がレイだ。コイツらはなんといっても多才だと思う。親バカかもしれないが。

 シェイドの方はとにかく運動神経が良い。私も冒険者を止めたあと、初心者育成の仕事をしていた事があるが、もうシェイドは六歳でそいつらを越えようとしている。それに、料理がとても上手い。

 この間<木苺香る鴨肉のステーキみでぃあむ>を出された時は驚いた。あれは、旨すぎる。

 性格としてはガキ大将というのが一番ピッタリだ。ハングリー精神で、常になにかを鍛えている。子供達をまとめてくれるのでとても有難い存在でもある。

 一方レイはというと、とにかく最初は受け身の精神だったが、シェイドと一緒にいる事で、段々自主性が養われてきている。

 コイツの凄いところは、シェイドに付いていけてると言うことだ。それ以上の努力はしないが、とても要領がいい。


 コイツらは六年前に孤児院の前に捨てられていた子供だ。

 孤児と接するに当たって一番難しいのが親の問題である。私はこの子達なら大丈夫だとは思うが、グレてしまう子も中にはいる。

 そうならないことを願うばかりだ。


 だから私は子供に幸せを送るのだ。どんなに辛いときでも希望を持って貰うために。


 だから私は言うのだ。今ジュースを溢した子に。……子に?

 あれは私が夜大事に飲んでるエルフの里限定のジュース<森の守護者>!?


 なぜここに?大事に大事にちょっとずつ飲んでたのに。凄く高かったのに。


 ふと横を見ると悪ガキ二人が笑いを噛み殺していた。


「こんのガキャァァァアアアアア」


 私は手加減して本気で殴った。


「「ぎゃぁぁぁああああああ」」


ふと窓の外を見ると空がとても澄んでいた。

サヨナラ。私の<森の守護者>。




 シェイド6歳視点


「あー、今日もムリだったな、レイ。かーちゃん強すぎだろ。魔法とか卑怯過ぎないか?」


 オレは親友のレイに今日のvsかーちゃんの感想を言う。

 オレらは六年前にシーナかーちゃんに拾われたってやつらしい。詳しいことはしらないけど。

 で、なぜ毎日vsかーちゃんをやっているかというと、単純にかーちゃんがウザいからだ。

 かーちゃんは酷いんだぜ、ニンジン全部食べないといけないとか言うんだ。その事をかーちゃんに言ったら『あたしを出し抜くことができたらいいよ』と言われたので、vsかーちゃんをしていると言うわけだ。


「確かにズルいとは思うけど、それを出し抜いてこそだろ?」


「分かってるな、相棒。それじゃあ明日の作戦考えようぜ」


 分かってる。本当に分かってんな。相棒は。

 相棒の名前はレイ。オレの相棒だ。家事を全部やるときは、こいつが洗濯、お昼寝(赤ん坊どもを寝かしつける事だ)、ゴミ捨てだ。

 オレは料理と掃除と洗い物だ。これらは全部ソコソコのレベルまで達していると思う。<木苺香る鴨肉のステーキみでぃあむ>を出したときはさすがのかーちゃんも驚いた顔をしていた。でも、全部かーちゃんには届かない。かーちゃんはスゴいんだぜ。かーちゃんは…


「あー!いた、バカコンビ。あんたたちのせいで私お母さんに睨まれたんだからね。凄く怖かったんだから」


 この五月蝿いのはエリア。俺たちより1こだけ年齢が上だからって姉貴ぶるイヤなやつ…ではないけどめんどくさい奴だ。こいつは何かレイと喋ってる時だけ態度が違う。解せぬ。


「ごめん、ごめん。そこまでは計算にはいってなかった。なんならエリアも計画に加わるか?3人で出来たらきっと成功すると思うんだ」


「えぇ!?わ、私!?レ、レイがどうしてもっていうなら考えないことも無いけど…」


「ごめん、そこまでじゃない」


「えぇ!?」


 ほら、こんな風にオレとは全然態度が違うんだ。

 もしこれがオレだったなら、


「もう最低。○ね」


 とか言われていたとおもう。やはりベットにセミの脱け殻入れまくったのがいけなかったか。まぁどうでもいいけど。


 エリアを適当にあしらって別れようとして、オレらが先にいこうとしたとき、


「あ、ちょっと待って、あんたたちに頼みたいことが有るんだけど…」


 エリアが面白そうな事を言ってきた。





to be continued

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る