されど僕らは月夜に笑う
鯨
第1話
王都。
それはこの世界に住む人々全てが知っている町の名前。
曰く、その町にはどんな敵が攻めようとも全てを殺す力のある初代の王が作らせた古代兵器がある、だの信憑性のない噂や、町は常に活気に溢れている、だの、夢のような町であるという話を多々聞く町。
だが、明るいところが有るのならば影があるというのが人の世の常である。
例えば、ギリギリスラム街に入るか否かのラインにある孤児院にそれぞれの母親に同じ日に置いていかれた子供が居たりするのである。
今から語られるは、黒目黒髪の全てを見透かすような目をしている、後の世に魔帝と呼ばれることとなる少年と、金目金髪の見た者の心を穿つような目をしている、後に魔剣の勇者と呼ばれることとなる少年の英雄譚である。
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雨と雷の音が眠らない街、王都を珍しく黙らせている夜のこと。
この雨さえ無ければ綺麗な満月が見れたろうにと思いつつ小走りで帰路を急ぐ女性が一人。彼女はこの近くで有名な孤児院の院長のエルフ、シーナという者であった。
彼女はエメラルド色の透き通った瞳、忙しいのか手入れを余りされていないけれども、美しい金色の髪を乱暴にポニーテールにしている。特徴的なのはエルフ特有の長い耳である。また、腰には高そうな杖を携えており、魔法使いであることが分かる。
そして、彼女は巨乳であった。
服をビショビショにしながらも、何とか孤児院についた彼女は、ふと、何かの鳴き声を聞いた。
曲がりなりにも、彼女は孤児院の長をしているので、この泣き声が何なのかすぐわかり、孤児院の玄関の脇に毛布を巻かれ、篭に入れられた赤子を発見すると、直ぐに駆け寄った。
(またかい。最近は多いねぇ、捨て子。自分が産んだんなら最後まで面倒見ろって話だよ全く。子供に罪は無いのにねぇ…。ホント、世も末だよ)
そうぼやきながら、まるで宝石を扱うかのように慈しむような手で二人の赤ん坊を胸元に抱き寄せる。
(あんたらは今日から兄弟さ。そんで私があんたらの母親。ようこそ我が孤児院へ。私が立派に育ててやるよ)
そう心のなかで約束し、ヘクチッと可愛らしいくしゃみをして、彼女は孤児院のなかへ入っていった。
時を同じくして、それぞれ違う場所でのこと。
二人の女が顔を涙でグシャグシャにしながら、帰路を急いでいた。
雨であるので、路地には誰もいないのでその声を聞くものはいなかったが、確かに彼女たちは、ごめんね、とずっと呟いていた。
また、こうとも。
「「立派に育つんだよ」」
(おや?この子達よく見ると手紙を握らさせられてるね)
シーナはその手紙に目を通す。
(これはこの子達の門出に渡すさね)
それから、六年の時が経つ。
徐々に物語は動いて行く。
to be continued
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