0011

 気が遠くなるほど長い廊下、いくつもの曲がり角。最初はウキウキしたものだが、ここまで来るともう嫌になってきた。

「ぉぶッ」

 顔面をぶつけ、鼻をさする。ボーッとしていた私も悪いが、減速せずに突然止まるシュワルツェネッガーさんの歩き方と言うか「止り方」はどうにかならないものか。

 背中にぶつかられたというのに、何事も無かったかのようにシュワルツェネッガーさんは説明を始めた。

「ここがお前の部屋だ。ドアプレートにお前の名前が書いてあるから分かると思うけど、白いドアはこれしかないから覚えろよ」

 以下の説明はこうだ。

 必要なもの、欲しいものは全部揃っている。

 だそうだ。嬉しいことは嬉しいが、「?」というのが本音である。

「それじゃおやすみ」ときびすを返したシュワルツェネッガーさんは、歩き出したと思うとすぐに足を止め振り返った。

「夜中にこの屋敷のなかを歩き回るなよ。来たばっかりなのに迷子になって探すはめになるのは嫌だからな」

「しません」と一言だけ小さく叫び、ドアノブを回して部屋のなかに足を踏み入れた。

 眩しくて、数回瞬きをする。部屋の明かりの所為せいではない。部屋の中の全てが真っ白だったからだ。

「で、」

 でかっ。

 まず目に飛び込んだのは真っ白な真珠色を基調としたキングサイズの天外付きベッド。枕はもちろんのことボーダーにドット、チェックなど様々な柄のクッションや自分よりも大きいであろうテディベアが乗っている。

 クローゼット、ドレッサー、ソファ、ローテーブル、エトセトラエトセトラ。壁も床も全てが真っ白の真珠色。

 あれ。

 ダイニングキッチンの部屋の前の部屋、私が逆上せて眠っていた部屋に置きっぱなしであったはずのボストンバッグがベッドの上の端に置かれていた。いったいいつの間に置いたのだろうか。


 ――……誰が?


 いいや、取り敢えず寝てしまおう。

 ボフンとそのままベッドに倒れ込む。ふかふか柔らかくて気持ちが良い。

 そしてそのまま眠った。

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