昔話

第31話 二か月前、酒匂驤一、皇都防衛庁付属学院第一棟三十階B教室

「じゃあ、ジョー先輩は四年目、春ちゃんは四か月だから、私より後輩だね!」

 昼休み、皇都防衛庁付属学院第一棟の三十階。すっかり無人となったフロアの空き教室を内側から施錠し、俺達三人は顔を合わせた。

「春ちゃんって、僕、一応戦部さんの先輩なんだけどな……」

 三年間ほとんど単独で行っていた外区来訪は、春に折野という不確定要素が加わり、更にその四か月後である夏、厳密には、昨日ミラが加わり、しゆうえんを告げた。

 話を聞くと、ミラは衛学に上がる直前から外区に繰り出している様で、その期間を持ち出して折野に後輩だと言っている様だった。出会って〝二日目〟とは思えないフランクさで打ち解ける目の前の化け物は、胸元のリボンを揺らす。

 話は、粗方の経緯と外区へ入る理由。

 三者三様のてんまつは、大凡おおよそ普通などと形容されるものからはかけ離れていた。

「で、二人は外区で何か見つけられたの? 探し物」

 ミラは涼しい表情で俺と折野の痛いところを突く。

 まだ外区を知って四か月である折野はまだしも、ほぼ単独だったとはいえ、四年目に入る俺が何の成果もない、というのは思わしくない。

 いや─

「残念ながら、特に何も」

「ふーん、そうなんだ」

 聞いただけ、とでも言いたげな表情のミラに答える。

 何が残念なものか。

 別に、どうでもいい癖に。

 本当は、何もかも、どうでもいい癖に。

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