第2話 私の世界の色

入学式も終わり教室へ戻る途中の事。

「おお、木霊。職員室に少し寄ってくれ」

「はい」

先生に呼び止められて職員室にすぐに向かっていった。職員室で先生は真にキャンパスとスケッチブックの入った紙袋を渡した。

「君が美術推薦で来てくれて嬉しいよ。これからも頑張ってね。」

「はい、頑張ります。」

真は先生の言葉に気だるさを覚えながら職員室を後にしこっそりと美術室に向かった。




***



美術室に着くと真は夢中で窓の外の風景をキャンパスに細かく描き始めた。風景を描き終えた所で色付けの作業に入った所でドアの開く音がして振り返ると青が立っていた。

「教室に戻って来ないから心配したよ…ん?これ、木霊さんが描いたの?」

「まぁそうだよ。……もうすぐで完成」

真は言うと絵の空を灰色に染めた。

「どうして…こんなに綺麗なのに灰色に?」

「私ね…風景画の空は自分から見た世界の色に染めるって決めてるから。」

真の言葉に驚きを隠せない青は絵と真を交互に見てこう言った。

「僕には木霊さんの‘’今‘’の世界はこんな色じゃないと思うよ。…もっと自分を見つめてみて」

「自分を見つめる…?」

真は青の‘’自分を見つめてみて‘’と言う言葉が引っ掛かったようで考え込み始めた。

〔自分はただ楽しくない人生を送るだけと考えていた。ただ自分の世界を皆に見てほしくて絵に気持ちを込めて全力で描いてたっけ。それに沢山友達が欲しくてきっかけになれるよう絵を独学で頑張ったっけ…“自分の世界を皆に見て“〕

今まで閉まっていた絵に対する自分の気持ちを青の一言で思い出した真は突然涙を流し始めた。今まで小学生の時から我慢していた感情をようやく少しずつ出せるようになったようで笑顔を見せ青に感謝をした。

「ありがとう…忘れてた事思い出せたよ」

青は真の始めて見た笑顔を見て頬を赤らめていた。その合間に真はパレットを持ち灰色の空の上から青、水色を塗り足しといった。

真の今の顔はスッキリした清々しい青空の様でそれを表すように絵の中の空は青空になっていた。


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