1 T輝

 それにしても今日に吹く風は気持ちがいい!こんなに天気がよくて風も良好な日には外で走るに限る!

 中学校のときは野球部だったけど、高校生になってから陸上部に入った俺ことT輝は今まさにこんな気分。快調!!

 強く日が差してくる校庭でそう思った。


 ただ俺は部活動だけに一生懸命なだけではない。無論、学業のほうにも力は入れている。そのおかげなのか分からないけどテストは毎回、順位が1桁である。うん、これぞ青春を謳歌している高校生というやつなのかもしれない。部活動に励み学業も良好。まるで小説の主人公みたいだ。いや、別に調子にのっているという訳じゃない。断じて。

 その上、友達もたくさんいる!

 いつしか、ライトノベルの主人公設定は友達がいなくてぼっちで、コミュ障であるというのがメインになった気がする。かわいそうな人間だなおい。確かにそれこそコミュ障だったり人見知りだったりすると友達を作ることは困難である。しかし、それを乗り越えてこそ友達ができる!さあ、勇気を出すのだ!世の少年たちよ!!友達がいることは素晴らしいことだ!時に励ましあう存在・・・・実に素晴らしい!

 持つべきものは友達だとよく言うでしょう?


 まぁ、ここらで話を部活に戻そう。

 我が陸上部は9人で構成されている。同タメにA楽とか、M下とか。

 後輩もいる。後輩はまだ身長が小さくて陸上には不利かもしれない。でも、努力を積み重ねたら、積み重ねた分だけ強くなる!ぜひ先輩たちの背中を見て育って欲しい。

 特に俺が得意とする短距離に関しては!短距離組の後輩には俺がみっちり教えてあげるからな!!

 いいか、走り出すときは姿勢を低く維持するんだ。そして30mぐらいから徐々に体を起こしていってだな・・・・・。あぁ、今日は後輩は休みだったな。


 という訳で、今はタメと部活動中である。熱い日差しを浴びながら流れて滴り落ちる汗。みんなの指紋が残っている金属バトン。うん、やはり野球部から陸上部にチャレンジして間違いは無かった。


 その日は終始、笑いあいながら練習を終えた。


━━━━━━━━━━


 帰宅。

 玄関を過ぎて、母からご飯をみんなで食べるよー、と言われたからそれなりに返事して、階段をのぼって2階にある自分の部屋に戻りいつものベッドへダイブする。うん、変わらないこの安心感。そして、最近『いつもの』のことになったことがある。俺は制服のポケットに入れていたスマホを取り出して、即座にメッセージアプリを起動する。そして、『いつもの』ようにちょっとだけニヤける。


【今帰ってきた。】

【お帰りー、T輝!部活大変だったでしょ?おつかれさま!(ハート)】


 そしてまたニヤける。

 おめでたいことに、俺、T輝には彼女ができていた!!俺はもしかしたら青春の塊でできているのかもしれない!!なんて俺には幸福と運命があるんだろうか!!


 そして、我ながら俺は彼女にベタボレ中である!!まぁ、本人には口が裂けても言えないんだけどね。だって、ねぇ?分かるでしょう?この感覚。


 え?一緒に彼女と帰らないのかって?それが残念ながら高校は違うのである。彼女は隣町の高校に通っている。かと思うと、中学校も一緒ではなかった。どこで出会ったのかって?


 スマホを操作して、メッセージを返す。


【バイトも大変だったでしょ?あんまり、働きすぎたら体に悪いから気をつけて。】


 N高校近くのコンビニでアルバイトをしているところを、俺がアタックしたのだった!そしてめでたく今の状況に至るというわけだ。


【ありがとう!(ハート) あっ、そういえば今日、部活動帰りのT志がきてたよ!】


・・・・・・むっ。・・・・・・・・男子か。


【T志って、N高校の陸上部だったよね?】


 ・・・・・陸上部だ。

 T志とは、N高校生徒であり、俺と同級生である。そして陸上部に所属して、俺と同じ短距離を専門に走っている生徒である。


【そうだよ。何かあったの?】

【T志ったらさ、私がレジを担当してないんだけど、肉まんを頼んだの。そのあと「袋要らないです」って言って地球に優しい人だなぁとか思ってたんだけどさ、うちのバイト仲間が勘違いして肉まんをそのまま紙に包まず渡しているのwwwww】


 うわあ・・・・・・。T志ってやつはかわいそうだな。ビニール袋を断ったのに、肉まんを入れる紙袋が要らないと勘違いしちゃったのかぁ。人生、つらいこともあるものだなぁ。


 いやそこ勘違いしねえだろ!!


【そしたらT志がそのまま受け取って「あっち!あっち!!」って言いながらお店を出ていってたよwwww爆笑!!】


 いや、お前もお前で何か店員に言えばよかったのに!!紙袋に包んで下さいいって言えばよかったのに!!なんでっ・・・・!なんでっ!!あいつも変わったやつだなぁ。明日、学校でバカにしておいてあげよう。


 おっと、そういえば今日は課題の量が多かったのだ。早めに手をつけていたほうがよいだろう。課題は面倒だって感じちゃうけど、この積み重ねが将来につながるんだよな。うんうん、がんばるんだぞ、俺。そう考え出した俺は、少し残念だがメッセージアプリを閉じた。スマホを机の上に置き、リビングに夜ご飯を食べにいった。階段の途中にある小窓から、外では雨が降っていることが分かった。

「雨かぁ。今日は寄り道しなくて正解だったな。」

 しっかりと学校へ行く前に天気予報で天気を確認したおかげで濡れずに済んだというわけだ。傘はもちろん持っていってたけどね。


 いつの日か、天気は人の心をうつしだすという迷信を聞いたことがある。・・・・根拠が無いのだ。迷信というのは、人類がある事象で迷いだしたときに、自分を救い出すために考え出した、自分自身への偽救済だと思う。偽救済を信じることで自分自身を迷いから助け出す・・・・・。



 でも、まさか、ああなるなんてなぁ。


 階段を降りている途中に、机の上のスマホがブルブルッとバイブレーションが発生したのが聞こえた。すまない、メッセージを送った方よ。ご飯中にスマホをいじることはやめにしているんだ。


 ・・・・・彼女じゃないと信じよう。

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復讐 ─ G ─ 時川 隼人 @SHIVIARU

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