第18話 メロンパン、はしご、USB

眠ってしまった……か。やっぱり彼女の寝顔は、こんな状況でも心を落ち着かせる効果があるよ。かわいいしね。


さて、彼女を無理やり起こすのもあれなのでとりあえず、そのままにしておこう。

そうしておくことで、メロンパン時間を復活させることが出来る。よく考えれば良い事だと思う。

ただ、やることもないし僕が眠ってしまうのもあれだからとりあえず何かをして時間をつぶそうと思った。一人で歌うということも考えたけれども、それだとうるさくて彼女を起こしてしまうかもしれないので、それはやめておこうと思う。ただ、何もしないのもあれなのでとりあえず何かをいじって時間を潰そうと考えたわけだ。


この部屋には、はしごがある。だから、子供のようにはしごを使って時間を潰そうとしたわけだ。


まず最初に、はしごを登ってみたり懸垂をしてみたりしたけれども、何も楽しくなかった。結局、彼女の近くではしごを触ってみるだけにした。


触っているうちに僕ははしごについて、あることに気づいたんだ。はしごのちょうど真ん中に、まっすぐと上へと延びる亀裂では無いけれども、切れ目のようなものがあったんだ。

そして、床から上へ三段目?(三本目?)の棒の上のところに横に切れ目があって、どうにかすれば、なんかはしごが取れそうな感じになっていたんだ。

だから僕は、時間もあることだし知恵の輪的な感じで取ることにした。


「よし」


景気づけに、一度声を出してはしごを触ることにした。


最初のうちは、固くて全く動かなかったけれども、はしごを下に引っ張ってみると、すこしだけその三段目までの棒が下に下がったんだ。ただ、それ以上は下げることが出来なくてまた少し悩んでしまった。


「メロンパン……」


やっぱり彼女はメロンパン病だよ。なんでここまで寝言をメロンパンで統一できるんだよ。


本物の知恵の輪みたいで、少し頭が痛くなってしまう。

そういえば、俺の友達の堕天使は知恵の輪とかが得意で暇さえあれば知恵の輪を作っているといっていたけれども、そんなのが趣味の奴は頭の構造がすこしおかしいと思う。難しいことを考える人っていうのは、根っからのドMだと僕は思っている。だから、あの堕天使は堕天使と言われても、喜んでいられるんだ。……いや、堕天使っていうあだ名は少しかっこいいよな。俺でも喜んでしまうかもしれない。まさか、俺もドMの一人なのか?


「ていうか、堕天使の苗字って何だっけな?」


それに、なんか彼女が言っていたことが妙に気になるんだよな。何かが引っかかっているんだよ、僕の頭の中で。一体何だろうな?



「メロン……あっ! 寝ちゃってた……」

「おはよ、近藤さん」


知恵の輪はしごをがんばって解いていると、彼女がかなり早く眠りから覚めてしまった。知恵の輪に集中していたおかげで彼女のことを考える時間が少なく済んだことは身体的にかなり楽だ。

そうだ! 近藤さんと一緒に、この知恵の輪はしごの下を引っ張れば、もしかしたらとれるんじゃないか? 


「近藤さん」

「何ですか?」

「ちょっと、手伝ってくれるかな?」

「?」


わけが分からないと思うけれども、とりあえず僕は彼女を知恵の輪はしごについての詳細を説明して、彼女を理解させることに全力を尽くした。


「なるほど! 引っ張ればいいんですね」

「そういうことだよ。近藤さんは物分かりがいいね」


物分かりがいい子は好きだ。


というわけで、僕と彼女は特に理由はないけれども知恵の輪はしごの下を力を合わせて引っ張ることにした。


「「せーのっ!」」


声を合わせ、思いっきり引っ張るとはしごはズルッと取れ、その拍子に梯子は床に落下(元々はしごは床から少し離れた設計になってる)し、縦の亀裂通り半分に割れた。


「割れちゃいましたね」

「うん。やっとはしごが割れてくれたよ」


普通であればはしごが割れることは、あまり良くないことだと思う。だって、はしごっていうものは移動手段の一つで、その移動手段を壊すというのはあまりいいようには思えないからだ。だけれども、今回のはしごに関して言えば移動する先がさっきまでいた、何もないところ、もっといえば扉(開かない)まで移動するだけのものだ。そんなところであれば行く必要なんてないんだから、割れる以外にもぶち壊したり、木製のはしごだったら燃やしちゃっても誰も困りはしない。


近藤さんは割れた一本のはしごを手に取って、それをまじまじと眺めている。そして僕はその彼女の姿を太ももを中心にまじまじと眺めている。決して太ももフェチとかそう言うわけじゃない。ただ単に、寒くないのかな? と疑問に思ったから見ているだけだ。いやらしい意味なんてない。


「佐藤さん」


「!? ど、どうしたの?」

別に、悪いことを考えていたわけじゃないけれどもいきなり名前を言われると、驚いてしまう。


「はしごの先端に、妙なものが付いてて……」

「妙なもの?」


はしごの先端に妙なものがあるといわれても、まったく想像ができないな。

僕は近藤さんにそのはしごを渡してもらって、先端の方を見てみた。


「これって……USB?」


USB端子のようなものが、はしごの先端についていた。

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