第15話 メロンパン、驚く
「さぁ……分からないです」
「やっぱりそうですよねぇ~」
「あっ! でも、私あれですよ? メロンパン好きですよ?」
「やっぱりメロンパンが好きなんだ」
彼女はやっぱり僕の思った通り、暗いのを忘れて話すことに気を取られている。暗いことを忘れてどんどんと下に下りていってくれる。
「佐藤さーん!」
彼女の下りるスピードが速すぎて、さっきみたいに彼女の姿を確認することが出来なくなった。というか、暗いことを忘れた瞬間にここまで覚醒するなんて、彼女もすごいところがあるな。
「私ですね、メロンパンが好きになった理由があるんですよ!」
むしろ、すこし彼女に恐怖を僕は思えている。さすがに、ここまでいきなり上機嫌に、それも一番彼女がダメな状況下なのに……恐ろしい。
「メロンパンを好きになった理由?」
「はい!」
確かに彼女は恐ろしい子だけれども、メロンパンを好きになった理由についてはかなり気になるものがあるな。
「私、上に兄が居てですね。その兄、何か分からないんですけれども今学校で堕天使って言われてるみたいなんですけれども、その兄が私がまだ小さい時にメロンパンを買ってくれたんですよ」
「うん」
「年が二歳離れてるだけで、上から目線を多用するな! って今は思っているんですけれども、昔は憧れの兄でして……ね?」
「憧れのお兄さんからもらったメロンパンが、お兄さんと同じように好きになっちゃったってことかい?」
「好きだなんて……佐藤さん、変なことを言わないでくださいよ!」
変なことを言っているつもりはないんだけれども、我ながらにかなり彼女を恥ずかしめることは言ったと思う。今ほど彼女の顔を見たいと思うことはないよ。
「あっ! 佐藤さん床につきましたよ。てか……こんな暗かったんだ」
ようやく下についたらしく、それによって彼女の本当の心というものがあらわになり、暗さに怯え始めた。
「近藤さんは、座りながら目を閉じていて! それで、話をし続けよう!」
「分かりました!」
そして、彼女と僕は僕が下に下りるまで延々と話をしていた。そこまで距離があるわけでもなかったから、至って普通に、本当にいたって普通にしゃべりながら下りていった。
そして僕が床に足をつけた時、また新しい光が現れた。
「えっ!」
彼女はいきなりの光線量の多さに顔を覆い隠す。
僕も、彼女と同じように光線量に驚いた。まぁ、顔を覆い隠すほどじゃないけれどもね。
「近藤さん、大丈夫?」 僕は近藤さんを心配するほどの余裕はまだ残っている。
「大丈夫です……」 およそ、大丈夫では無いような声で僕に返す。
しかし、一体なぜいきなり光が点いたんだ? 足が床に触れた瞬間に光がともったわけだけれども、それだったらなぜ彼女が着いたときには点かなかったんだろう?
「―――あぁ、ようこそ」
少し考えていると、どこからまた声が聞こえた。彼女の可愛い声でもない、僕の声でもない。また違った新しい声だ。
あと、彼女の服装。やっぱりくるものがあるよな。
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