第7話 覚醒したメロンパン
「え?」
「えっ?」
おかしいな。とうとう僕もこの部屋に居すぎてくるってしまったようだ。頑張るぞ! と決意したけれども、目線は壁に向けたままだった。これから振り向いて、作業を続行しておこうと思っていたところなのに、なぜかその振り向く先である後ろから声が聞こえたのだ。
もちろん、僕は頑張る以外声を出していない。むしろ、べらべらと一人でしゃべっていたら、それはちょっとやばいやつだ。もし、僕がそのやばい奴もっと言うと無意識でそんなことをしゃべれるんであれば、それは一種の才能なのかもしれない。だけれども、一つだけ確実に言えるのは、僕には女声、可愛い女声は出せないということだ。
悲しいけれど、そこまで低い声とは言わないが、僕には中性的という声には遠い声しか持っていないからな。
それなのに、なんで女性の声が、それも僕の頑張るに対して疑問を持ち声が聞こえるのだろう?
自分を自問自答している、それも女声で。はは。ありえるはずがない。
これは、僕じゃない声だ。
この部屋に居るのは、僕以外にはメロンパンしか居ない。メロンパンしか居ないんだ。
そこが、一番重要なんだよ。
なぜ、メロンパン病がしゃべっている。なぜ、メロンパン病の人間がメロンパン以外のことをしゃべっているんだ? なぜ、一体、どうして?
「……あの? 大丈夫ですか?」
再度、声が聞こえる。さっきよりかは、心が込められているような声だった。
「その……なんで、私こんな格好に?」
次は、僕を疑うような声だ。
「聞いてますか?」
そして、冷たく刺さるような声だ。
どうしよう。一番恐れていたことが起きてしまった。
欲望に忠実に生きていたことに悔いは無い。だけれども、思うことはある。
事実というものはいつだって、作られているものだ。事実は、誰しもが持つものでありそれは変異していくものなのだ。たとえ、自らが知っている事実があったとしても、それは、他者からみたらまた違った事実なのだ。
ということはだ、今メロンパンがもし起きていたとしたら、メロンパンは僕のことを自分を変な格好にさせた変態だと思っているのかもしれない。そして、その変態は壁に向かって「頑張るぞ!」と声を出しているのだ。きっとメロンパンはこう思っているはずだ。
こいつはやばい、と。
まだ僕は壁の方向を見ている。というか、壁の方向を見ているしかないだろう。
こんな状況に陥ってすぐに話しかけられた方向に顔を向けられるんだったら、僕はこんなに苦労をしない。というか向けれるんだったら、最初っから彼女のことを起こしている。
だから、僕は彼女の方を見ることをできず、ただ壁を向いていたんだ。
だけれども、いつまでも壁を向いているわけにはいかない。
むしろ、これは好機だと考えればいいんだ。これは、きっと神様がくれたチャンスなのかもしれない。彼女は、きっと僕のために、隠し扉を探す手伝いをしてくれるために起こされた神の使いメロンパンなのかもしれない。
きっとそうだ。そうに違いないさ。
こうでも考えなければ、彼女に対して何も接せられなくなると思う。あの格好の姿を見ているだけでも、かなり来ているのに変な空気の中で、あの格好を見たら精神的に逝ってしまうかもしれない。
それを避けるためにも、向こうへ振り向くとしよう。
「……やっぱり、聞こえてたんじゃないですか」
振り向いた先には、覚醒したメロンパンが立っていた。
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