第15話 終わりの始まり

 目の前で目を疑うような出来事が

 まるで当たり前のようにたやすく行われるのを白髪の少年は見た。

 ジェスが死んだのだ。

 確認せずともわかるそのえぐい傷を見れば素人でもわかる。

 そして殺された原因はカインドであった。

 奴は魔法で作り出した氷塊をロムにではなく

 ジェスに放ったのである。

 不意の攻撃にジェスは対応できず、今の状況に至る。


「いきなりなにしてんだよ!あいつはお前の仲間じゃねえのかよ!」

 流石のロムもこの状況下では声を荒げるしかなかった。

 カインドは無表情のままこちらを見ている。いや、睨んでいるようだ。

 深くドス黒いものがカインドの目の奥から感じる。

 簡潔に言えば、数多の命を葬ってきた目だ。

 カインドの横の空間が歪み、そこからは懐かしき鉄仮面

 タナカが姿を現した。

「どーも、ご無沙汰です。どう?カタナの旅やってる?」

 シラを切るようなタナカのしゃべり方にロムは殺したくなるほど腹が立った。

「おい…!これはどういうことだ…!

 お前のこと、全て話してもらおうじゃねえか…」

 ロムはカタナに雷を宿らせた。

 それを見たタナカは嘲笑うかのように鼻で笑い首をかしげる。

「以前にも言ったでしょう。秘密です♡って。

 それとも秘密の意味が分からないわけですか?」

「とぼけるのもいい加減にしろ。

 話さねえって言うんだったら

 その銀色頭をスクラップにされる覚悟はあるんだろうな。」

 タナカはあからさまに驚き、さらにロムを煽った。

「いい顔ですね。しかし私は用事があるので失礼します。

 カインド、あとは頼んだよ。」

 ロムが逃がすまいと一気にタナカとの間合いを詰めたが

 カインドの短剣によって阻まれた。

「はい。マスター。」

 カインドが言い終えると同時にタナカの姿は

 歪んだ空間へと飲み込まれていった。


「お前もどうやら訳ありな人物だな。話せ。全てをな。」

 カタナを構えカインドに問う。

「これは運命だ。今、まさにその歯車が動き始めている。

 お前、ロムが会ってからここまで全て、運命の道を辿ってきたに過ぎない。

 この女が死んだのも運命の一部だ。

 そして、これからお前の顔に傷をつけるのも運命の一つだ。」

 すると、ロムは頬辺りに痛みを覚え、

 触れてみるとそこには斜めに4センチほどの切り傷ができていた。

「私の魔法は運命を操ることができる。

 他にはない特別な私だけの力だ。お前はこれから起こる運命に

 無力な自分を痛感しながら死んでいくんだ!

 ざまぁみやがれ!ギャハハハハハハ!」

 今まで寡黙だったカインドが話せば話すほど人格が変化していった。

 こんなに頭のおかしいやつだったとはロムは知らず、変に動揺してしまった。

 そんなやつでも「運命を操る能力」とは中々恐ろしい。

 しかしこいつはやってはならないことをしてしまった。

 一線を越えてしまったんだ。

 ジーランドには申し訳ないが、今ここでカタを付ける。

 ロムの決意は殺意と共にあった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Different color KuRiA @kuriangry

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ