第12話 ハザード一派再び
<ドウラス>にはもうハザード一派が待ち構えていた。
「約束の時だ、さあ、戦いの時間だ。」
ジーランドが大剣を地面に刺し、堂々たる姿勢でロムたちを見ている。
「この狼人間がジーランドさんですね。なかなか大きいですな…」
ナナがその巨体さに顔が引きつっている。
「その横の女は誰だ。まさかお前の女か?
け、なめられたもんだな。」
ガルバが一人赤い毛並みを逆立たせ憤慨している。
「いいじゃない、女の一人や二人ね。年よ、とーし。」
ジェスがガルバに茶々を入れる。
カインドは無言のまま目を閉じている。
多分寝ているのだろう。
「さあ、武器を出したまえ、ロム」
ジーランドの声を聴き、キューブをカタナに変化させる。
「ロムさん、頑張って下さい!」
ナナの声援を背中で受け止め、ロムは深く深呼吸する。
「武器の変更は無しだ。
お互い今手に持っている武器で戦う。正々堂々とな。」
ジーランドが地面から大剣を抜いた。
周りのハザードの連中も各隊長の命に従い、
その場から少し離れる。
「良い広さだ、楽しくなりそうだな。」
ロムはカタナを自分の正面に構える。中段の構えだ。
「いざ尋常に、勝負!」
ヘビーさを感じさせないようなハイジャンプをし
ロムに向かって切りかかる。
ロムはパワーの差を感知し、一旦その場から回避した。
ジーランドの大剣が地面を叩き、煙が上がる。
距離を取ったロムが再び構えたところに
煙から姿を現すジーランドの刃がロムの刀身に襲い掛かる。
甲高い金属音が鳴り、金属同士がすり減り合う音が響く。
「思った以上のパワーだな。戦いがいがある!」
「そいつはどうも。」
両者その場を離れ、一定の間合いを保つ。
静かな空間にじりじりと地面を靴で引きずる音が響く。
狼顔の奥にはナナが心配そうにロムを見ていた。
その悲しみが少し滲む表情、ロムの視線がそっちに気を取られる。
「戦いによそ見はご法度だ!」
巨体がロムの目の前まで距離を詰める。
その大きさはロムを小人かと思わせる程であった。
ジーランドは大きく大剣を振り下ろす。
ロムが間一髪逃れ、交代する。
危なかったとロムは思った。
「それじゃあ、気を取り直して第二ラウンドと行きますか。」
カタナを構え直し、再び二人は剣を交えた。
日が真上にあったはずがもう沈み始めているのにナナは気が付いた。
ナナにはわからなかった。
そこまでして両者が剣を交える理由が、戦う理由が。
殺気の中にあるこの二人が戦いを楽しむ空気も意味が分からなかった。
しかし、二人が傷つき肩で息をしているのを見て、ナナは思い始めた。
ロムの中には戦う以外何もないのだろう。
力を求め、純粋にこの戦いを吟味しているのだと。
その単純な思考、そしてどこまでも可能性のある彼をナナは守りたいと思った。
「このへんにしようロム。もう満足だ。」
ジーランドは大剣をキューブに戻し、その場に倒れこんだ。
後を追う様にしてロムも静かに沈んだ。
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