第10話 ナナの過去

私は元々は<ドウラス>に住んでいて、ここに来たのは4年前です。

そして私には家族がいました。

父は種族の中でもとても能力が優れており、

新しい道具を作る研究グループに身を置き、

そこでも数々の実績を上げていました。

そして今色々な道具を扱ったり、作ったりできるのは

全て父のおかげです。

母は<ドウラス>出身で魔法の血を継いでいます。

父のような特技や得意なことは無かったのですが

多忙な父を毎日支え、私にも沢山の愛情を注いでくれた最高の親でした。

三人家族のお家で毎日幸せな日々を過ごしていました。

そんな毎日を徐々に崩しいく悪魔がいきなり現れたのです。


男は自分のことをタナカと名乗ったのです。

頭に銀のとんがった仮面をかぶり、黒のタキシードを着てました。

タナカは父の仕事の依頼人で

依頼内容には魔法を使える道具を作って欲しいという内容が

書かれていました。

当時でも、もちろん今でも考えられない依頼の内容でしたが

父は今までの依頼を断ったことはあらず

今回も断る気はなっかたのでしょう。

その依頼を快く受け、作り始めたのであった。

しかし、父にとって頭で魔法の事が分かっていても、

それを道具に組み込めることは父にとってもすごく困難で、

毎日頭を悩ませていました。


ある日、いつものように父が仕事から帰り、

母も仕事を中断し父を迎えに行くと

玄関から鋭い悲鳴が聞こえ…


ナナの目が再び涙で埋め尽くされ、

ロムは彼女の頭を静かに、そして優しく撫でた。

ナナの涙腺に触れたのかさらに涙を流し、ロムの胸に飛び込む。

ロムもその時は彼女を受け止め、包み込んだ。

「俺は家族に捨てらたんだ。

それが何だってんだって思うかもしれないが、

俺はナナの話を聞くまでは自分は不幸な人間だと思っていた。

家が裕福だったせいもあるかもしれない。

昔のことは捨てたはずだがナナを見ていると色々思い出す。

俺は甘かったのかもな。

俺以外にも俺以上に苦しみ悲しみ、嘆いてるやつが

沢山いるにも関わらず自分を棚に上げ

格別なものにしていた。」

唖然とするナナを気にも留めずロムは口からありったけの言葉を吐き出していた。

「すまない、いきなりこんなことを…」

ロム自身、何故こんなことをしたのかわからない。

包み込んでいた手を放し、おどおどするロムを見てナナがけらけらと笑う。

「ありがとう、おかげで元気が出ました!

めそめそするくらいなら前進しなくちゃ、ですね!」

「そうか、ならよかった。」

自分の昔話しかしてないのだが、と複雑な気持ちになる

ロムの心境を知らない無垢な少女の顔には大きい花が咲いていた。











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