第9話 沈黙、そして

 宿の中の小さな個室。

 いや、倉庫といったほうがいいかもしれない。

 道具が沢山そこらじゅうに置かれている。

 そこにある椅子に座り、二人は話した。


 ナナはどうやら道具を操る種族の一人らしい。

「そういうことです!

 だから道具のことについてならジャンジャン聞いてください!」

 胸をこれでもかというくらい大きく反らしている。

 なんとも誇らしげな姿だ。

 ロムはいい加減に聞き流したが、

 ふとあることが気になり、ナナに聞いた。

「なあ、この道具を知ってるか?」

 ロムはポケットからキューブとグローブを取り出し

 ナナの目の前にさし出す。

 すると今まで元気溌剌だったナナがあからさまに不機嫌な顔に変わった。

「どこで手に入れたんですか…それ…」

 ナナが俯き、体が震え始める。

 その意味がロムには分からなかった。

「あぁ、これはタナカってやつからもらったんだ。

 そいつはいきなり俺の前に現れて、それから…」

「その話は止めて!!」

 ナナは太ももの上に震わせた拳を作り、涙を流している。

 予想外の出来事にロムは困惑した。

「あ、えっと、ごめん。」

 動揺したせいかロムの口から言葉が出てこない。

 やってしまった。

 ロムはそう思う以外他に何もできなかった。


 それからどれくらい時間が経過したのだろうか。

 ナナは鼻をすすっては何回かに一回涙を拭いた。

 そして重い口をを開け、沈黙を破ったのは彼女であった。

「ごめんなさい。いきなり声を荒げたりちゃって。

 少し私の話を聞いてもらいたい。いい?」

 ロムはうなずいた。



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