第7話 休憩

「ここんところ、戦いばっかだ。疲れる。」

 そんな訳でロムは<ドウラス>から北にそこそこの距離を歩くと到着する、

 癒しと食を与える街<セーヴ>に訪れた。


 食材売り場、飲食店、マッサージに怪しい店など沢山の光に

 迎えられ、ロムも少しばかり気持ちが高ぶっている。

 ここには昔のドウラスと似た光がある。

 ロムにはそれがとても心地良かった。


 食材売り場で皮剥きリンゴを買い、近くの凹凸に座りこんだ。

 ふと思い出しポケットからキューブを取り出す。

 そしてキューブは手のひらで光をまとい、果物ナイフとなった。

 ロムは器用に赤い皮をナイフで剥きながら

 タナカが言っていたDifferent colorについて考えていた。

 貴方も…と言っていたな。

 ということはあいつも俺と同じDifferent colorというものなのか。

 何なんだ一体。

 道具を使って魔法を使うという共通点があいつとはあるが

 果たしてそれだけなのだろうか。いや、考えすぎか。

 ロムは皮のないリンゴをかじった。


 他にも色々なところに行こうとしたが

 疲労もピークとなり、なお睡眠もろくに取っておらず、

 鉛でも体に埋め込んだかのような重い体を引きずるようにして

 ロムは宿を探した。

 活気溢れるその場から離れ、ひっそりとたたずむ宿を見つけた。

 家と家に挟まれ、苦しそうにしているその宿は

 遠目で見たときは、全く気が付かなかったが

 近くまで来ると小さな看板がドアに下ろしてあり

「宿やってます」と一言遠慮気味に書いてある。

 開けると、軽いベルの音が鳴り響き奥から「はーい。」と声が聞こえる。

 目の前にはカウンターがあるが誰もいない。

 ベルの音が聞こえたら駆けつける方式なのだろうとロムは静かに分析していた。

「ようこそいらっしゃいました。本日は何泊されますか?」

 その声の主は幼い女の子であった。

 髪は黒、肌は黒茶でなかなか焼けている。

「一泊だけでいい。」

「かしこまりました。それではこちらへどうぞ。」

 何か訳アリそうな感じだが、今はよそう。

 ロムはただひたすら睡眠をとりたい欲求を内に秘め

 寝室を紹介されすぐに寝床についた。



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