第5話 準備完了

「キューブちゃんを使うにあたって、先ほども言いました通り

 こいつは頭の中で想像した通りのものに変化します。

 そんでもって、強く思えば思うほど!!

 複雑な形状にも変化し、硬度も変化することができます。」

 そう言うと、タナカはロムからキューブをひょいっと奪い取り、

 手のひらにのせた。

「ふんっ!」

 気合いと共にタナカの手のひらにあったキューブが光を帯びながら空中に浮き、

 溜まっていた光が一気に弾けるが如く、キューブから放出され

 この場を包み込んだ。

 ロムの目が光に耐え切れなくなり思わず目を手で覆った。

 光が消え、覆っていた手を外しタナカのほうに目を向けると

 そこにはこの国では見たことのない剣らしきものがあった。

 刃は全体的に小さくしなやかなカーブを描き、

 波打つような模様が記されている。

 それはまたタナカの身に着けている

《セイヨウノカブト》とはまた違った輝きで鈍いギラギラと違って

 剣もどきは周りをも光で包み込むようなものである。

 その造形美と輝きにロムは惚れ込んでしまった。

「これは何ていうの?」

 ロムは聞いた。

「おお、随分と今回は食いつきぎみですな。

 これは《カタナ》といいまして私の先祖がつねに腰に身に着けていた武器です。」

 タナカはその《カタナ》をロムに渡し、告げた。

「これを貴方に返します。そして、使いこなしてください。

 これからの世、魔法だけではやっていけません。

 さあ行くのです!武器を持ち、魔法を使い、

 歴史に名を刻んでください。

 貴方はもうDifferent colorなんですから。」

 そう言うと、タナカの体がみるみるうちに透明になっていく。

 ロムは直感的にこの場からタナカが去ってしまうのを感じとった。

「待ってくれ!話が一方的過ぎる!何言ってんのか理解できねぇよ。

 何故、歴史に名を刻まなきゃならない!Diffrent colorって一体なんなんだよ。」

「それは今後の旅にヒントが隠されているはずだよぉーん。」

 そう言い残し、タナカはこの場から消え去った。

 それはまるで花が散るような美しくも儚き光景であった。


 ロムは近くに無人の小屋があることに気付き、中に入った。

 そこには机1つと椅子2つ、タンスが1つのとても質素な空間であった。

 机の上にある書物に目を通すと中にはこう記されていた。



これを見たってことは、私ことタナカは貴方の前から消え去ったということですね。

どうです、道具の調子はいい感じですか??

どちらにせよ貴方には私からいくつか頼み事があります。

まず、ここから西に向かいドウラスという町があります。

そこは今や魔物の住処となっており、手を付けられない状況です。

まずはそこで自分の力を試してください。

そこから生き残れれば一人前と認めましょう。

今後のヒントもそこにあるはずです。

健闘をいのります。

                 Different corol殿


 やはり一方的な文書だな。

 ロムはため息をついた。

 そして存在感の薄いタンスに気付いたロムは中を開けると

 そこには真っ黒のフード付きのマントがあった。

 そして再び書置きが…


このマントに機能なし。マントのポケットに新たなキューブが入ってます。

どうぞお使いください。きっとあなたの役に立つはずです。


 ロムはマントをはおり、キューブを握りしめた。

 そして、旅に出た。

 

 



 

 

 





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