第2話 謎の男
町中を灯す街灯達が不気味に笑う夜。
町並みは街灯以外明かりは無く、寝静まっている。
ロムは行く当てもなく、闇の中を彷徨った。
頭が痛い。
何故私はこんなところにいるんだ。
俺は誰だ。
ロム、俺の名前はロム。それ以外が思い出せない。
歩き疲れたロムは闇の中、
皆とはずれ一つぽつんと立っている街灯の下に座り込んだ。
ロムは考えた。
何故、魔法が使えないだけでこんな仕打ちを受けなきゃいけないのか。
確かに魔法を操る種族として魔法を使えなくちゃ生まれた意味が無い。
それに、俺はサンナ家に生まれたからなおさらだろう。
しかし、こんなのあんまり過ぎる。
魔法が使えないと分かったら手のひらを反すように態度が豹変。
意味なんて必要なのか。
生きることに意味は必要なのか…
小さな明かりの下、ロムは自分の運命に涙を流した。
嗚咽が闇の中に小さく響いていた。
足音が聞こえる。
ロムは涙を自分の袖で拭い、その場から立ち上がり辺りを見渡した。
「こっちだぜ、旦那。」
声は後ろから聞こえ、振り向くと闇夜に溶け込む黒のタキシードを身にまとい
顔は昔、本で見た
<セイヨウノカブト>のような銀色のものを被っており、素顔はわからない。
そして体は大人の一回りくらいでかい。なかなかの長身である。
それにしても随分とおかしな格好だ。
銀色の被り物が街灯の光に反射しギラギラ光っている。
「旦那はロムってんだろ。」
「そうだけど、なに?」
銀色がニタリと笑った気がした。
「やっと見つけた。私はタナカと言います。以後、お見知りおきを。」
暗いせいで気がつかなかったがタナカというやつの手は生きてはおらず
どうやら道具を操る種族が作る、<キカイ>になっていた。
「時間がない。とりあえず私についてきてくだせえ。」
言葉遣いが定まらない、見た目も色々と不可解、相当変な奴だが
ロムはなぜか彼を知っている気がした。
気のせいだろう。色々と頭が混乱していて感覚がおかしくなっているのだろう。
「わかった。」
ロムは一言返事をし、彼と共に闇の中に消えていった。
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