第11話 2度目は...
翌朝。
「起きてくださいハルトさん!朝ですよ!」
扉をノックしハルトを起こすメリナの姿が見られた。
「...おう。今起きた。先にトーマの方に行ってきてくれ。着替える」
「わかりました。ちゃんと降りてきてくださいよ?」
「...おう」
怪しげな返事をするハルト。しかしもう意識ははっきりしているので二度寝することはない。問題は、
「また、この制服着てたんじゃ目立つな。服、買わなきゃな」
「一応寝る前に干しておいたけど、結局目立つし、ワイシャツだけで良いか」
ささっと着込み部屋を出る。丁度向かい側の部屋の前で立っているメリナと改めて挨拶を交わす。
「おはようメリナ。トーマは?」
「起こしてます。トーマさん?起きてください」
「馬鹿、そんな優しい呼び方で現代っ子が起きるわけないぞ」
「現代っ子、ですか。もっときつくですね?トーマさーん!起きてくださーい!」
「甘い!ぬるい!まだまだだ!!いいか見てろ?」
ゴクリ。精一杯のモーニングコールがあっさりとダメ出しをくらい逆にどのくらいなのか興味が出てきたメリナ。生唾を飲む音が聞こえる。
「すぅぅぅ...」
ハルトは大きく息を吸い込み、
「馬鹿トーマぁぁぁ!!!朝だって言ってんだろぉぉ!!早く起きろ!!早くしねーと押し入るぞ!」
「...うるさいわね!起きるわよ!」
「はい、10!9!8!7...」
「待て!カウントダウン止めなさい!ちょ、止めろっての!」
「4!3!」
「あぁ!もう!耳が悪いの!?頭が悪いの!?あと少しだから待って!お願い!」
「もとから入る気なんか無かったけどな」
「あんた、はっ倒すわよ!!」
急いで服を着ているだろうトーマから怒りの返しが来る。
その後すぐにトーマが出てくる。昨日と同じセーラー服だ。
「流石に服が欲しいわね」
「そうだな。この格好は目立つし」
「では仕事の後にでも買いに行きましょうか!それではスルタナさんにご飯をもらいにいきましょう!」
下に降りるとスルタナとエリスが笑顔で迎えてくれた。
「すごい声だったな。トーマ早く起きてあげないと良くないぞ?」
「な!?...いや、まぁそうだけどさ、ハルト!あんたがあんな大声出さなきゃ!」
「んだよ、起きなかったのはそっちだぞ?」
ハルトがジト目で見つめる。
「うっ...だって、早く魔法使いたいからちょっと興奮して寝られなかったと言うか、」
「イメトレでもしてたか。そーゆーのを妄想って言うんだ。中二病発症おめでとう」
「異世界で魔法使えるようになるのに中二病とか言うな!」
朝から元気に言い合いをする。今日はハルトが有利か。もう慣れているメリナは勝手にしてくれと目で語る。
「それにしても、朝だれか来てたようだがなんだったんだ?」
「へぇー、起きてたの?」
「うーん、どっちかと言うとそれで起きたかな」
「そう、昨日ハルトがセントラルにジャイアントボア届けたでしょ?それの肉が多すぎるから周辺のギルドに配ってるんだって。腐っちゃうから。本当に大きかったのねー」
「と言うことは、今日は肉が食えるのか?」
「そうね。結構もらったし。なので今日は朝からサンドイッチで~す!」
「「おぉ~!!」」
メリナとエリスが声をあげる。本当に嬉しそうだ。
「いい加減肉が食べたかったからこれは嬉しいな。ところでハルト、今日は私と依頼を受けにいかないか?」
「ん?うーん、そうか。そっちの方が良いかもな」
「私とトーマさんだけでは戦闘ができませんよ?」
「あぁ、だから服とか任せられねぇかな?どうせ俺が見に行ってもわからねぇし」
「そうゆうことですか!なるほど!」
「ハルトにしてはよく考えてるじゃない」
「中二病発症寝癖少女には考え付かなかったか?」
と言って寝癖を指摘し恥ずかしがるのを見てやろうと思ったハルトだが、
「は?寝癖?こんなの寝癖に入らないわよ。寝起き30分で完全に消えるわ!てゆうか、中二病言うな!」
「うそだろ!?なんて便利な髪なんだ!」
「ふふふ、これは私の勝利ね!」
「というわけで今日はそんな感じか?」
「あぁそうだな。よし、メリナ美味しかったありがとう。」
食べ終わると活動を開始する。
「せっかくなので、アルマさんも一緒に三人で行きましょうか」
「良いけど、そしたらスルタナは?」
「私はここに残っているわ。万が一も有り得るし」
「わかった。じゃーアルマが起きるまで待ってるのね?」
「多分まだ起きないと思うので少したったら起こしに行きましょう」
買い物組が予定を決めるなか、ハルトとエリスはセントラルに向かう。
「それで、今日はどんな依頼を受けるんだ?」
「みてみなくてはわからないが、ハルトの力も見たいし、森の少し奥まで行ってみようと思う」
森の反対側を少し行ったところに実は山がある。この町には東西南北に一つずつ出入り口があり南一面と東西に少しずつ森が広がっている。実は大きな森なのだ。森は奥に行くほど出てくるモンスターが強くなる。森以外に東西には道があり一応国内を繋いでいる。その道にもたまにモンスターが現れるのだが。また、山には森より強力なモンスターや魔物がいるとかいないとか。森の奥は非常に強いモンスターも魔物もいるので今回はハルトの力を見るためだろう。
「エリスは結構強いのか?」
「いや。実はあまり強くなくて、だからハルトの動きでも学ぼうかと思ってな」
「俺も武術に精通した動きとかじゃないし参考にはならないと思うぞ」
「まあ良いんだ新しいことに気づけるかも知れない」
「そうか、わかった。俺にできることがあれば手伝うから、一緒に強くなろうぜ!」
会話をしながら歩いているとセントラルが見えてくる。
余談だが
セントラルに入り掲示板を見ている。
「よし、昨日私が倒してたグリンモンキーを倒しにいこう。やつらは倒しても倒しても沸いてきて、この町に来る人にちょっかいを出すからな。」
「わかった。どんなやつかあとで教えてくれ」
「あぁ、じゃあこれを出してくる」
「またそれか?弱小ギルドはこすい稼ぎ方をするんだなぁ?」
エリスが紙を取ったとき、突然男が話しかけてきた。
「...あぁお前か。私たちの収入源なのだからどうこう言われる筋合いはない」
「てめぇらみてぇな弱小ギルドがあると他の町のやつらからもこの町が舐められんだよ!さっさと解散しちまえ!」
「私たちに解散する気はない!」
「口答えか!?新入りを二人も入れたみてーだがどうせ使いもんにならねぇんだろ!?」
「んだと?聞き捨てならねぇな?」
不機嫌な様子のハルトが男に啖呵を切る。
「誰が使いもんにならねぇって?俺に言ってんのか!?てめぇこそ舐めんのも大概にしろ!大方立派なギルドに入り調子に乗ったってとこだろ?そんなやつが俺たちのギルドに文句があんのかよ!」
トーマと繰り広げている言い合いとは迫力が違う。エリスはハルトの怒気を孕んだ言葉に呆気に取られる。
それを聞き激昂した男は背負っていた木こりが使うような斧を手に取りハルトに言い返す。
「言わせておけばこのクソガキが!!」
「止めねぇかサルサ!!!外まで声が聞こえてるぞ!!」
扉を開け入ってきた男が斧を振り上げた男を制する。
「けどよぉ!」
「みっともねぇぞ!もっと自覚を持て!...悪かったなお前ら。うちのもんが迷惑をかけた。ん?」
その男は大きなハンマーを背負っている。
「あぁお前さんは確か」
「おっさんか、名前が...えっと、ゲイン?」
「ガインだ。この町では有名な方だと思うから覚えといて損はねぇぞ?」
「そっか、サンキュー」
突然入ってきた男と親しげに会話しているハルトに残りの二人は詰め寄る。
「は、ハルト!!お前、あのガインと知り合いなのか!?しかもそんな親しげに!!」
「てめぇ!ガインさんになんて口の聞き方しやがる!」
「昨日色々あったんだよ」
「吹っ飛ばされて意識飛ばされたぞ」
「よく言うぜ。全力じゃなかったくせに。」
「...それはお互い様じゃねーか?」
「「は?」」
ガインから語られたことが信じられないようで二人の声が重なっていた。
「まあ、そんなわけで俺は少しだけ顔を知ってるわけだ。おっさんすごいやつなのか?」
「一応そこそこのギルドの副ギルド長やってる。」
「そこそこ!?この町で一番のギルドだぞ!?」
エリスが言ってくれなければ、そこそこ、を信じていたところだろう。
「すげーんじゃねーか。」
「そうでもないさ。脳筋ばっかの肉体派集団だ。問題ばっか起こして大変なんだぞ」
そう言いながら、サルサと呼ばれた男の頭を軽くげんこつする。
「そうか。とりあえずうちは弱小でお金もねーからさ。仕事?狩りに行ってきて良いか?」
「あぁ、邪魔して悪かったな。」
「良いよ。おっさんの顔に免じて!」
と言ってエリスに依頼の受理を促す。エリスが帰ってきたところで、
「んじゃー俺ら行くからまたな!」
「頑張れよ!」
見送ってくれる。気のきく男だ、とハルトは思った。
見送り少ししてからサルサがガインに問いかける。
「あのガキにガインさんが負けたってのは本当っすか?」
「本当だ。あいつはヤバイ。久し振りに見たぜ。きっと魔王以来だな」
「そ、そんなに、っすか?」
そうは見えなかった。とでも言いたげな口調のサルサ。
「お前ももっと危機関知をしっかりした方が良いぜ。見た瞬間に、こいつには勝てねぇ。って理解されられちまったよ。もしかしたらあの魔王よりも強いのかも知んないぞ。」
サルサは絶句し、しかしそれでもガインの言うことが信じられなかった。
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