第9話 妖精族と伝承
「まず国のことからですかね。この世界にはいくつもの国があります。種族で別れていたり、種族の隔たりがなかったり、国で違いますね。エルフなどは独自の国家を築いています。」
「さっそくファンタジーな単語が聞こえるよ!」
「そしてこの町ゼルネアは、エランド王国に属しています。一番偉いのは王様で王都に行けば貴族などもたくさんいます。この町にも少しいますがこの町の貴族さんはイイ人ばかりですよ!」
「やっぱり身分で差別があんのか、まぁ仕方ないな。気に食わないけど」
「はい。ゼルネアでは身分差別を極めて少なくして、各種族の移住にも前向きな町なのです。」
「なかなか好感の持てる町だな。領主の意向とかか?」
「いえ、王国より各セントラルへと使者が時々送られまして、基本はセントラルがこの町を仕切っている感じですかね。だから、あまり差別とか身分の違いを気にしたりしないのです。先ほどあった衛兵さんも国家の直属兵ですよ」
「そーなんだ!ん?でも、貴族様には反感を買っちゃってるんじゃないの?」
「いえ、そのような町にする。と国家で決まっていることなので元からそのような貴族さんは寄り付きませんでした。よって出来上がったのが、この町です!」
「ははぁ、そーゆーことか。じゃーこの国に他にも町はあるのか?」
「当然ありますよ。まずは王都、商業の町、観光の町、あとは最近魔法研究が盛んな魔法都市です。全部で五つですね。」
「そこそこ多いな。この国にはセントラル制度が広まってるんだろうけど、他の国にも通用すんのかな」
「します!一応すべての国に配属されていますよ!」
「さすがだな。じゃーあとは言語とかは?」
「独自言語を使う国、と言うか、種族もいますけど、基本どこも同じ言葉を使うと聞きました。私は他の国に行ったことが無いのでわからないです。すみません...」
「そこまでわかれば十分だ。あとは、お金のことだな。さっきの銀貨がどのくらいの価値なのか、とか」
「お金は、赤貨、銅貨、銀貨、金貨の順でよくなります。赤貨10枚で銅貨、銅貨100枚で銀貨、銀貨1000枚で金貨になります。こちらもどの国でも使えます。このギルドは金貨200枚と銀貨何百枚で作られました。」
「...建てたのか?」
「いえ、譲り受けましたが、今払っているところです...」
もはや借金であるのか、それでもこのギルドを捨てないのには何か思い入れがあるのかも知れない。そう思いハルトはその先を聞こうとしなかった。
「ギルドのメンバーはこれで全員なのか?」
「あとはエリスがいるよ!ギルド長の!他は辞めちゃったけど。まあ元から盛んなギルドではなかったし、ボクたちはこんなもんさ。みんなろくに戦えないし」
「そうか、一応ギルド長にも挨拶したいな」
「もう少ししたら帰ってくると思うよ!」
かなり親しく話してくれるアルマ。辞めていった仲間は他の町や、他の国に行っているとのことだ。
「ねぇ、ところで二人は魔法使えるの!?」
アルマが食いぎみに聞いてくる
それに対しハルトは少し不服そうに
「俺は多分使えない。魔力測定もよくわからない結果だった」
「ふーん?よくわからない?トーマは?」
「私はとても輝いたわ。才能ね。」
自慢気に言うトーマに少し、嫉妬の目を向けるハルト。
「大丈夫よ。私も使えないから。そんなことでそんな顔するなんて、ハルトは可愛いわね」
不満そうなハルトにスルタナはクスッと笑い語りかける。
「いや、別に羨ましいとかじゃないからな!...ただちょっとだけ、折角異世界に来たし使ってみたいだけで、別に憧れがあるとかじゃ...」
「男の嫉妬は醜いわねー。ぷークスクス」
「ほほぅ?言ってくれるなトーマよ、お前あれだぞ?戦争だぞ?やっちまうぞ?」
「ああん?魔法も使えなそうな器量の少ない男にケンカ売られてもねぇ」
「あーあ、もう知らねー、言っちゃったからな?まだ魔法の使い方も知らないくせにそんなことよく言えるなぁ」
「すぐ的にしてやるわよ!」
「言ってろ!どうせ俺には及ばねぇよ!」
「吠え面かかせてあげますぅぅぅ!」
「まぁ、魔法は今使えないならいつ使えるようになるかわからないからね」
二人の仲の良い?言い合いにアルマが水を差す。それを聞きトーマは驚きを顕にする。
「え!?私今すぐは使えないの!?」
「そりゃあ、属性もわかっていないし、正直魔力の込め方わからないでしょ?」
「う...まあそれはそのとおり、かな?」
図星をつかれ落ち込む。うん。そりゃあ使えるわけないか、
「だけど、輝きには色が着いてたなら少なくとも属性はあるから、魔法は使えるよ!たまに魔力はあっても属性がなくてなんの意味もない人がいるんだよ。」
「ええぇ、宝の持ち腐れだわ。良かった~」
「ちなみに何色だったの?」
「うーん、金色?黄色よりキラキラしてたかな」
「金!?ほんとに!?」
すごい食い付きである。予想外の出来事に少し期待しているように問いかける
「本当ですよ!それはもうすごい輝きでした!眩しかったくらいです!」
「そんなに強かったんだね?本当に?本当に金だったの!?」
異様なまでに金色だったのか聞いてくる。さすがに全員違和感を覚え、
「金だとなにかまずいの?」
「妖精族に伝わる伝承でね?金色の魔力は世界樹の力を備えてるって言われてるんだ」
「世界樹の?てゆーか妖精族の伝承って有名なの?」
「アルマさんは妖精と人間の混血なんですよ」
「え!?」
「そうなんだよー!ほら、耳も少し尖ってるでしょ?」
と言って、被っていたフードを取る。長く綺麗な銀髪をかき分け、彼女は自分の耳を見せる。
「ほら。」
「ほんとだな、エルフみたいな?」
「エルフはもっととがってるんだよ」
「そーなのか。てことはエルフも妖精族なんだな?」
「一応ね。ボクのお母さんはエルフじゃなくて、しっかりと妖精だけどね。」
「エルフは控え目に妖精ってことなの?」
「うん!まぁそんな感じかな!妖精はフェアリーって呼ばれたりするよ。羽が生えてたり、生えてなかったりするんだ。あとだいたいみんな背が低いよ。フェアリーとエルフは結構仲が良いんだ。あ、妖精族はみんな魔力高めだよ!」
「丁寧な説明ありがとう!で、その伝承って言うのが、えっと、世界樹の力?が、あんまりよくわからないんだけど...」
「うん。それはボクもわからない。ごめんね...でも、かなり強い能力なのは確かみたいだよ!昔では、その世界樹の力を持った人を聖女って呼んでたみたいだからね!」
「すごーい!これは期待しちゃう!」
「思い過ごしじゃねーか?期待しすぎても損だぞ」
「人が盛り上がってるのにそんなこと言うな!」
そう言いつつも顔がにやけてるトーマが期待しているのは目に見えている。
そんな話をしているとギルドの扉が開いた。入ってきたのは、茶色の髪を肩にかかるくらいまで伸ばし、腰に剣を差している女性だ。美人である。二十歳くらいだろうか?
「今帰ったぞ。む?おぉ、お客かな?」
「お帰りエリス。」
「あぁ、彼女がギルド長か?」
「うん?そうだ、私がギルド長のエリスだ。はじめまして。」
「はじめまして。俺の名前はハルトだ。今日からこのギルドに入ることになった。」
「はじめまして。私はトーマです。私もギルドに入っちゃいました!」
エリスは呆ける。いきなりのことで理解が追い付かない。
「え?うん、と?新メンバー?」
「そうだ、よろしくな!」
.........沈黙し、
「えぇぇぇ!?!?」
今日で一番の大声だった。
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