第7話 目標!!
「はっ!」
ようやく戻ってこれたメリナが声をあげる。
「お帰りメリナ。これから魔力を測るんだってさ!」
「そうでした!それがありましたね!」
「今受付嬢さんがなにか取りに行ってるよ」
「魔力水晶ですね。魔力の強さがわかります。より輝いた方が強い魔力なのです!」
「お待たせ致しました。それではどちらからにしますか?」
「じゃあ私!」
「トーマ様ですね。では手をかざしてください。潜在魔力を計測します。」
「おぉードキドキするなー...よし!」
覚悟を決めたトーマが水晶に手をかざす。数瞬の静寂が流れ、そして、水晶は眩い輝きを放つ。誰もが注目し、そして目を瞬いた。
「金色!?本当ですか!?」
「うお!眩しいな!結構期待できるんじゃないか!?」
「これは私の隠された才能が遂に覚醒するのか!?」
「っ!!はい!もう結構ですよ!」
そう言われ手を元の位置に戻すトーマ。すると眩い輝きも無くなり只の水晶に戻る。
「スゴい魔力をお持ちですね!こんなに強い輝き初めて見ましたよ!」
「うん!ありがとう!綺麗なおねぇさんに褒められるのはいい気分だね!」
可愛い、ないし綺麗な女性に目がないのか、ナンパ染みた口調になるトーマ。そんな会話をしてるとも知らず酒場はまたもざわめきを見せる。
「なんて魔力だ!水晶壊れてたりしないか?」
「うちのギルドでもあんな輝き見たことないぞ!?」
「お前らのとこでもないなら王都とか行かなきゃいないんじゃねーか!?」
「あっちのガインを吹き飛ばしたやつといい、何もんなんだよ!」
思いの外良い結果だからか、トーマは満面の笑みでハルトとメリナに振り替える。
ハルトはそれに笑顔で返し、メリナに関しては泣きだしそうにまでなっている。
「じゃー次は俺かなー。まぁ、どうせ俺に魔力は無いんだろ?はっ」
自虐気味に言い放つハルト。実はメリナに魔力が見えないと言われたことを気にしている。それを聞きメリナは若干戸惑いを見せるがそれをよそにハルトは水晶に近づいていく。
「これにかざせばいいんだよな?」
「はい。ではどうぞ。」
「ほい。」
やはり反応はない。遠目からはそう見えただろう。しかし、一番近くで見ていた受付嬢にはしかと見えていた。
(?中央に小さいけど輝いてるのがある...しかも、さっきの輝きよりも綺麗?)
ハルトにも見えていた。それは本当に小さな輝きだが、七色に煌めいている。本当に本当に小さな、針の先位の光だろうか。しかし、ハルトにはこれの意味がわからず多少ショックを受ける。
「輝きは見えるのですが、あまりにも小さいですね。魔法には期待しない方が言いかもしれません。」
「あぁわかってはいた。体ひとつ有ればなんとかなるしな!」
気を取り直し、元気に笑って見せる。先ほど大男を吹き飛ばした少年とは思えない。とは、受付嬢の感想である。この体のどこにそんなパワーが眠っているのか、不思議である。
「では、冒険者証を渡しますね。無くさないでくださいよ?再発行にはかなりお金がかかりますので。」
「それは私からもお願いします!」
「お、おう!」
「わかったわ」
お金のこととなるとメリナの圧がすごい。
「あれじゃあ今回の分は?」
「初回の分は当セントラルが期待を込めてすべての冒険者に無料とさせていただいてます。」
「そりゃ太っ腹だ。」
「ありがとうございます。ではこちらが冒険者証になります。トーマ様とハルト様。はい!しっかりとお渡しいたしました!」
「あぁありがとう。なんか、カードみたいだな。あ、そういえばこの町に来る途中でモンスターに襲われて返り討ちにしたから持ってきたんだが、お金って貰えたりする?」
「部位が適していれば買い取ります。」
「どこ持ってきたらいいかわかんなかったから取り合えずモンスターごと担いできた」
「モンスターごとですか?では、解体の者を呼びます。それで、モンスターというのは...」
「外に置いてある。多分中には入らん。」
「はぁ、外に行けば良いのですね?」
「よろしく!」
三人が外に出ると冷やかしに数人の酔っぱらいも付いてきた。野次馬はこの世界も一緒か、とハルトは苦笑する。
そこに先ほどの受付嬢と恐らく解体してくれる人と思われる男が出てきた。腰にはナイフを付けている。
「これですか!?まさか、ジャイアントボア!?ビッグボアよりもはるかに大きいし、こんなのをどこで!?」
「あそこの森だ。」
「あの森にこんな大物が...あれ?でも随分キレイですね。もっと傷つけなきゃ暴れて大変ですよね?傷つける度に暴れるし三人で狩るにはとても無理があるのでは...」
「いや、やったのは俺一人だ。一撃だからそりゃキレイかもな」
「一人で一撃!?御冗談を...と思いましたが先ほどの件もありますもんね、確かに顔面が陥没していました」
ハルトは肩をすぼめてみせる。
「わかりました。ハルト様はとても規格外なんですね。」
「お褒めに預かり恐悦至極にございまぁす」
受付嬢は苦笑し、解体の男と話し合う。まもなく、男がジャイアントボア手を付け始め
「このジャイアントボアはすべて売って頂くと言うことでよろしいですか?」
「よろしいです!いくらくらいになるのかな?」
「そうですね、なにせ珍しいものですから、銀貨30枚から解体料を引き、銀貨25枚でどうでしょう?」
「銀貨25枚!?スゴいですハルトさん!!一月は暮らせちゃいそうです!我慢生活は必須ですが!」
「そうかい。それは良かった。んじゃーそれでお願いする。このまま任せちゃって大丈夫か?」
「はい、そうですね、この大きな牙をお持ち帰りしませんか?記念とかにどうですか?」
「牙を?お金減るんでしょ?」
「今回はサービス致しますよ!これからもお世話になりそうですし」
「そっか、なら貰おうかな。」
「わかりました。あ!そう言えばもう入るギルドは決まっているのですか?」
その質問で場に緊張が走る。
しかし、その緊張も気にせずハルトは「あぁ」と、答える
「でしたら1度中に戻って先ほどの紙にギルド名を記載してもらいます。」
「わかった。」
「差し支え無ければ、ギルドのお名前を...」
「なぁ兄ちゃんたち、」
受付嬢の言葉を遮りハルトたちに男の声がかかる。野次馬の一人のようだ。
「兄ちゃんたちさ、もしかしなくてもその女のギルドに入るつもりなんだろ?悪いことは言わねぇ、そこは止めとけ。いや、いっそうちにこいよ」
「なに言ってやがる!期待の新人をお前らのとこになんかやるわけねぇだろ!なぁ!お前らうちにこいよ」
「ふざけんな!あの魔力だぞ!うちの魔法重視のギルドに来てもらうのだ!」
「そこのお兄さんがこのジャイアントボアもやったんだろ?なら私たちのギルドにおいで。可愛がってあげるわよ?」
この話題でメリナは焦り出す。周りのギルドは少なくとも自分達のギルドより、よい環境を与えるだろう。
(うぅ、やはりこうなってしまいましたか、これで私たちを選んでくれるわけがありませんね。ふふ、やっとのことで見つけた超戦力なのに...)
勧誘を受けながらハルトは意外にギルドは多いのかと呑気なことを考えている。しかし、答えを求めてくる彼らに向けてかけた言葉は、
「わりぃな、もうギルドは決めてるんだわ。」
「「「へ?」」」
何人もの声が重なる。その中にはメリナの声もあった。
「なぁメリナ!お前らのギルド、名前は何て言うんだ?」
「え?あ、あぁ!私たちのギルドですね!?名前はアルカディアと言います!」
「そうか、かっこいいな、悪くない。」
1拍置いて、
「俺たちは!今お前らが弱小だと侮ったギルド、アルカディアをこの国一番のギルドへと、そしてこの世界で一番の!冒険者ギルドにしてみせる!だから勧誘はありがてぇが、悪いな!」
声を張り上げ、皆にハルトはそう告げた。
途端、メリナは涙を流す。
「まだだよ。私もなんの戦力にもならないけど、ハルトと同じ気持ちだから。私も頑張るから。」
溜め込んでいたものが爆発したように、メリナはトーマに抱き付き号泣する。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「見てろよ、絶対に一番になってやる!」
その宣言には人が集まり、かなりの見物人が耳にしたことだろう。少年はこれから始まる冒険に胸を高鳴らせる。さて、元の世界にいたときからずっと探していた目標が、今やっと見つかった。
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