第4話 真実


(ふふふ、うまいこと勧誘することができました。しかもトーマさんからは絶大な魔力を感じます!期待が高まりますねー。ギルドのことも怪しまれているとは思えません。チョロいですね!)


「ところでメリナさ、冒険者としてはどんなことしてるの?」

「え?あぁ私は魔法で回復を担当していますよ。戦いはほとんどできません。ほとんどというか全くですね」

「そうか、ありがとう。じゃーそろそろ案内してもらえるか?」

「そうですね。ではついてきてください」


そう言うとメリナは森のみちを引き返す。それに、続いてハルトとトーマも異世界への期待を高鳴らせ森に足を踏み入れる。


「あれ?メリナさ、さっき魔法使えるって言ってたよね?」

「はい。回復魔法だけですけどね。」

「魔法なんてファンタジーな世界に来たもんだね~まったく。」

「あぁ、最高じゃねぇか!俺も使ってみてぇ!使えんのかな?」

「ハルトさんは難しいかもしれません。」

「!?なんでだよ!」


その凄まじい勢いに圧されながらもメリナは答える。


「ま、魔力を感知できないからです。生まれつき魔力を持ってる人には、生まれつき属性も備わっていて、どうゆう原理か魔力に思いを込めれば魔法を発動できるのです。」

「ハルトにはってことは私には使えるの!?」

「はい!トーマさんからはものすごい魔力を感じますよ!」

「やったぁー!私にもできることが見つかりそうだ~!」

「ふーん。」

「なに?僻んでるの?魔法使えなくて寂しいのかな~?んん?」

「僻むか!まあちょっと?ちょっとだけ悔しいだけで?別に使えなくても体さえあればどうとでもなるし?」

「これだから脳筋は困っちゃうなー。素直じゃないわ。はぁ~」

「お前覚えとけよ!絶対痛い目見せてやる」

「お二人は仲が良いのですね」

「今日初めて会ったんだけどな」

「え?そうは見えませんよ。まるで幼馴染みのような、」

「でもほんとなんだよねー」


他愛もない会話をしながら、木が鬱蒼と生い茂る獣道を進んでいくと、森の中でも少し開けた場所に出る。


「あ、少し待ってください!ヒールダケを見つけたので採ってきます!」


と、きのこに向かって走っていくメリナを微笑ましく見守る。が、すぐにハルトは異変に気づいた。

メリナの隣の樹がメキメキメキと音をたてて倒れる。そこから顔を出したのはメリナの身長の3倍はありそうな、鼻息を荒くした大きな猪だった。


「ジャイアントボア!?この時間に活動してるなんて!あぁぁ!そんなことより逃げなくちゃ!」


急いで折り返すが、焦るメリナは足をもつれさせ、つまずいた拍子に足を挫いてしまう。


「あう!?あ、ああぁぁ!」


かなりの勢いで迫ってくる猪に恐怖のあまり目をつぶってしまう。

しかし、覚悟した痛みはいつまでもこない。すると、前方から声をかけられ、


「そういえば、戦えないって言ってたな。遅れて悪かった。もう大丈夫だ」


ゆっくり目を開けた先には異世界から来たばかりの少年、ハルトがその身1つでジャイアントボアの突進を抑えていた。


「流石異世界。こんな馬鹿でかい猪も平然といるのか、トラックと同じくらいの威力は出てるんじゃねぇか?」


信じられない光景に目を見開くメリナは足の痛みも忘れただ呆然としている。

その間にもハルトは行動している。ジャイアントボアの顎を蹴りあげ、すぐさまメリナを抱え離脱。ジャイアントボアが目を回してる間にトーマの近くまで運び、優しくメリナを降ろす。


「よっしゃ異世界初戦闘だ!燃えてきた!」

「怪我すんじゃないわよ」

「オッケー!!」


と言い、完全に意識を戻したジャイアントボアの前に躍り出る。それを見て、またも突進してくるジャイアントボアに不敵な笑みを浮かべ、


「おらぁぁぁ!!」


その拳を鼻先に叩き込む!

ズドンッ!と大きな音を上げて、めり込んだ拳を元に戻すとジャイアントボアは静かに沈んだ。


「一撃っ!?」

「こんなの人間のできることじゃないわ」

「見たか?この世界は俺の力もちゃんと通用する!なら、加減は必要ねぇな!!」


思い思いの反応を見せ、難を逃れた彼らは一喜一憂する。ハルトにとって、難足り得たかは疑問だが。


「す、すす、スゴい力、なんですね!驚いて立ち上がれませんよ!」

「なはは!腰抜かす程のことではねぇよ!ほい。」


と、手を差しのべるハルト。メリナはあまりの出来事に差しのべられた手を掴みながら、


(これなら、この二人は我がギルドの多大な助けに...そしてついに...!)


「なぁ、メリナさ」

「は、はい!なんですか?」

「1つ疑問なんだけど、何で俺らの力も知らないのにギルドに入れてくれるなんて言うんだ?」

「そ、それはぁ」

「あんた!なんてこと言うの!?助けてくれるってゆう素晴らしい考えを踏みにじるような...」

「だってさ、変じゃね?多分ギルドってのはそう簡単にやめられない。何故なら信頼を築くギルドは、助け合うための場なんだからどこかをやめて入ってきた人たちを歓迎するとは思えない。言い方は悪いが裏切りになる。」

「...」

「それに、この世界のことを全く知らない俺たちのことを入れるのは、どこかに逃げられなくするように、言わば縛ってるようにしか感じられない」

「......」

「加えて冒険者ギルドだと?信頼がものを言うような職業で些か早計じゃねぇかなぁ?」

「そうですね...」


気づかれた。流石に焦りすぎたか、あのあふれでるトーマの魔力を見てつい急いでしまったか、


「しかも、戦闘のできない女の子を一人でモンスターのいる森に放り込み、きのこを集めさせる。そりゃ、ちょっとおかしいな」

「えっと、つまり?」


少し、察し始めたトーマは身構えるように鋭くメリナを見てハルトに答えを求める。


「そうだな...ここまで言ってメリナから敵意を感じないことを見れば、1つの可能性は消える。となると、メリナのギルドは弱小で人員も足りてない、または、大規模な裏切りにあい仲間を失ったのどちらかだろうな」


答えを求めるように二人の視線が一人に集まり、


「...正解です。私たちのギルドは弱小なのです。昔は強かった訳ではなく、そろそろ貧乏すぎて奴隷落ちでもするんじゃないですかね。あんな大きなギルドなんか建てなきゃ維持費は抑えられてもう少し余裕もできたと思うのですが、」


多少投げやりになりながらメリナは真実を告げた。


「ふーん。そんな危ない環境に俺らを巻き込もうとしたわけだ。あわよくば、俺らを囮にってとこか?」

「!! そんなことはありません!...と言っても信じてもらえるとは思えませんね。でも本当にそんなつもりではなかったのです。」


二人の視線が酷く痛く突き刺さる。あぁ、なぜ自分がこんな目に遭わなきゃならないのか。自分はギルドのみんなのために一生懸命だっただけなのに。


「...本当に、申し訳ありませんでした...何も知らないお二人を危険に巻き込むようなことを...」

「それだけ?」

「っ!! これ以上は私の一存ではどうにも...体くらいしか...」

「体?あぁそーゆーことじゃねーよ、」

「へ?」

「トーマは絶大な魔力を誇っている。そんで俺はこの力を持っている。なぁ?」

「え?私に振るの!?うーんそうね。持っている!」

「あぁこいつアホだな。」

「なんだと!やるか!?」

「折角、戦力になりそうなんだろ?なら改めて誘ってみては如何なものだろうか?」

「!!!それは、つまり...」


恐る恐る、メリナは確認をする。


「そう、つまりお前のギルド手伝おうか?

つってね。」

「よろしいのですか!?貧乏ですよ!?ひもじい思いしますよ!?」

「今お金は少しも持ってないわけだし変わらんよ。寝場所とかあるのかなぁ」

「あります!ご用意します!ですから、なにとぞ!!」

「うん!もちろんだよ!」

「そーゆー訳だ。よろしくな!まあ、ぶっちゃけこの世界に知り合いいないし職業貰えるなら寧ろ喜ぶもんだ。その上、俺の力を充分に生かせる...!!」


メリナは思う。今日別の世界から来て、出逢えたのがこの二人で本当に良かったと。感極まったメリナは目頭に涙をためながら


「ありがとう、ございます!!」


と、笑顔で伝えた。

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