第2話 新しい世界!!
二人の視界は暗転し、そして、急激に光を得たせいで目眩ましを食らう。二人はつい腕を交錯させ視界を塞ぐ。そこで、ようやく自分達の体が風を切っていることに気がつく。恐る恐る腕をどけ目を開けた少女に見えたのは、一面緑色の恐らく相当広く、高い樹ばかりの森と、森を抜けた先にある壁のような建造物、遠すぎて見えない水平線。そして、迫りくる湖である。
「ちょっと待って!!これ確実に落ちてるじゃん!死ぬの!?私この若さで死んじゃうの!?嫌だ!誰か助けて!」
と、藁にもすがる思いで視線をやった先には、
「あっはははははは!!!!!!」
と、狂ったように笑う少年の姿。この時少女は思った。終わった、と。こんな無茶苦茶な死に方聞いたことない。そして、
どぼぉぉぉぉん!!!!
大きな音と大きな水柱を2つたて、二人は着水した。
「あぁ、くっそ、流石に紐なしバンジーをやるには高すぎだ畜生。お陰で少し冷や冷やしたわ。...iP○d壊れてやがる。当たり前か...」
とのんきなことを口にしながら当然のように湖から這い上がってきた少年、遥斗は、
「早く出てこないのか?」
と湖に目を向け語りかける。
「あんた、落下しながら馬鹿みたいに笑ってたじゃない。なにが冷や冷やよ。てか、私なんで生きてんのよ!」
自分のことなのに他人事のように語る少女は友達のいない少年には少し滑稽に見えた。
「で?ここはどこで、今のは何で、あんたは誰?」
「恐らく異世界で、異世界召喚?されたんだろ、そんで俺の名前は志布志遥斗だ。お嬢さんは?」
淡々と、あり得ない状況を説明してくる同郷の少年遥斗に呆れを感じながらも少女は答える。
「お嬢さんってやめて。鳥肌止まんない。私は奈義桃舞。トーマでいいよ」
「あいよ。じゃー俺もハルトでよろしく。で、もう一個質問していいか?」
「質問による。どうぞ?」
「お前も...」
「トーマって呼べっての」
「悪い。トーマももしかして化け物的な力持ってんのか?」
「は?ちょっと意味がわからないわ。まるでハルトは持ってるみたいじゃん」
「おう!」
「...なに?左腕に邪竜でも封じ込めてんの?それとも右目が疼くの?」
「...まあ!要するにこう言うことだ!」
と言って、ハルトは拳を湖に叩きつける。当然ハルトの馬鹿げた膂力で叩きつけられた水面は一度広がり、収縮し大きな水柱となる。二人の落下時と同等、あるいはそれ以上の水柱を目にしたトーマは唖然とする。
「どした?そんなアホみたいな顔で。...ってほぼ初対面の人に見せつけるようなものじゃなかったな。悪かった。お前は普通の人間なんだな。」
と、ここまで異常なまでに適応してきたトーマだったが、初めてその綺麗な顔を勿体無くも呆けることに使っていたことに気づき、同時に、ハルトの顔に陰りが出たことにも気づく。
「悪いな、忘れてくれ。お前には絶対に危害は加えないから」
「いやぁ、ビックリだわ...そんな力を持ってる人なんて地球にいたんだねー知らなかったよ!」
「え?」
「折角強いんだからハンマー投げとかやっちゃえば良かったのに。きっと世界記録だしてもう抜かれないよ?あ、でも、権力者とかになんかちょっかい出されても嫌か!なら隠してて正解だ!」
と、力を隠してたことまで悟ってみせたトーマにさらにさりげない優しさまで見せつけられ少し自分が恥ずかしくなったハルトは、
「ありがとな。」
一言だけつげた。
それに微笑んだトーマは現実に引き戻すように
「さて、これからどうしようか。」
と、返した。
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