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たぶん、20分も経っていなかったとひなこは思う。
黙々と茶を飲み、時々手慰みに茶菓子を食べ、のんびりと食休みをしていた時のことだった。
「花示様、ご用意が出来てございます」
失礼しますと襖の向こうからした声の次に、こう一言が続くまでは。
すっと開く襖。そこに膝立ちになっていたのは先ほどひなこを史月の部屋へ連れてきた女中の片割れだった。
その後ろにはもう一人同じ顔が何やら着物めいたものを持ち控えていた。
「今行く」
「花示様、道中着でございます」
「ああ」
「お車を用意してございますが、念のため私共が5人ほどつかせていただきます」
「は!?」
「ああ」
部屋の中に入り史月のもとへと歩み寄った女中から道中着を受け取ると、史月はさっさと女中を部屋から追い出した。
立ち上がり、机から少し離れるとふわりと何かの香が香るそれを広げ、身にまとうと前合わせを結んで、着たことがないとは思えないくらいあっさりと史月はそれを身に着けた。
すると、固まっていたひなこに声をかける。
「どうした、ひな」
「お、お女中さん、5人も来るん!?」
「少ないか?」
「多いやろ、どう考えても!」
「そうか?」
むしろ少ない方だと思うが・・・と呟いた史月に、自分の顔が引きつるのがひなこにはわかった。ひくっと頬を引きつらせながら、ひなこはこいつは何人引き連れるつもりだったんだと思った後に心の中で叫んだ。
(金持ちってこわい!)
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