昼食
「うわぁ・・・すごいなぁ」
「そうか?」
先ほどまで茶を飲んでいた卓上には、綺麗に盛り付けられた小皿や小鉢が旅館の夕食のように並べられていた。
花の形に盛られた刺身にほうれんそうのお浸し、豆腐に揚げ物、だし巻き卵と茶碗蒸し。ふくいくと立ち上る湯気に、いまにもだしの香りが漂ってきそうな味噌汁。その横には伏せた茶碗と大きなお櫃が1つ。その手前には白いおしぼりと黒塗りの綺麗な箸。
「豪勢やんな!?」
「普通だろう?」
「へ?」
「いつもこんな感じだぞ」
料理たちが並ぶ机の上を目を輝かせていたひなこの横を通り過ぎ、史月が座椅子に座る。
それに倣って史月の入ってきた雪見障子をぱたんと閉める。と、ひなこも急いでそのあとを追いかけ座椅子へと座った。
(さすが金持ち・・・)
そう思ったのは内緒だ。
いそいそとおしぼりで手を拭くと、ひなこはゆったりとした仕草で優美に手を拭いている史月の前から夫婦茶碗というのだろうか、青い茶碗をとるとひなこの前に置いてあったお櫃の蓋を開けた。もわりとご飯の甘い匂いとともに湯気が立ちのぼった。
お櫃の横に置いてあったしゃもじで青い茶碗にご飯をよそると、それを史月の前に戻して、自分の前にも置かれていた赤い茶碗にもよそる。
手を拭きおわった史月は、手を太腿に置き目を細めてかすかに首を傾げながらその様子を見ていた。
やがてよそりおわったひなこも同じように太腿に手を置く。
「「いただきます」」
そう言って、同時に箸をとった。
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