愛のエバーン

@maple03

第1話

シンタは帰ってきた。

今日も神様が待っていた。

「あ、ただいま帰りました」

「もー、遅いじゃない、あんたバカあ!?」

「すいません」

「ほら、いくよ、シンジ!」

「だからシンタです、あ、いえ、いいです、シンジです、はい」

「いくぞ!惣流アスカラングレーっ!!ターッ」

神様は毎回こうしてエヴァンゲリオンごっこを仕掛けてくるのだが

シンタは稲垣早希のネタでしか知らないので苦痛であった。

しかし神様の機嫌が悪くなるので仕方ないのである。

「ぐああああーっ!」

シンタは破壊された使徒が悶えるシーンを再現してみせるが

「ちがうだろ!もっと、こんな感じで!」

こんな感じで・・と言われても神様は姿形がなく、

なんとなく空気でモヤモヤっと存在するだけで

今も一生懸命どうやら劇中のシーンを再現してくれているのだが

シンタには見えない。なんとなく空気でわかるだけである。

神様の熱演が終わったようだ。

「今のシーンは第3使徒が・・、初号機が・・」

シンタはアニメにあまり興味がないし、学校の勉強のほうが大事なので

神様から「ちゃんと観ておけ!」「勉強しておけ!」と言われても

エヴァの勉強は後回しになってしまうのだ。

「綾波レイが!・・ちょっと聞いてる!?」

上の空のシンタに神様がどやしつけてきた。

「あ、すいません、僕・・」

「逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだーっ!」

神様が体当りしてきたのでシンタは吹き飛ばされた

「いい!?ミサトがね!」

ラルフがユイがケンドウが!と言われてシンタはさすがに腹が立ってきた。

「逃げてないでしょうが!」

「あんたばかあ!?」

「僕はバカじゃない!神様が僕の部屋に勝手に居座って

エヴァエヴァエヴァエヴァ毎日言って、エヴァごっこに付き合わされて、

僕は神様の願いだからって、それでもお付き合いしてるのに、

それでバカと言われる、わけわかんない!」

神様も少し神妙な雰囲気になった

「あのさシンジ、映画のラストでアスカが首絞められてたじゃん?あれどういう意味かわかる!?」

「えー、嫌いだからじゃないですかア?」

「わかってねえなあ!」

「わかりにくいものをわざと作って藝術性だって言い張るのが

クリエイターとかいう病質者でしょ?廣野監督だってわかってないに決まってる。

ウケを狙って意表つくことばっかり考えて、思想だのなんだの、全部後知恵なんだよ!!」

「おいおい、それでオトナになったつもりかよ?」

「ほっといて下さい、どーせ僕はオトナのキスなんてしたことないですからね!」

シンタは座り込んだ

神様も座ったようだ

「あのさ、シンジ、人ってさ、見たいものが見れるようにできてるんだぜ?」

「シンジじゃない、シンタだ。まず僕のことをシンタと認めてほしい」

「シンジは何がみたいんだよ?」

「その前にね、神様は話し方は男なのに声は女だ、いったい男なの?女なの?」

「なんだ、そんなことか、試してみればいいじゃん?」

「試してみろって?」

「シンジの見たいものを考えてみろよ」

シンタは見たいものを考えてみた、自分の心に問いかけてみた

「世界平和・・かな」

「違うだろ!」

神様からのダメだしだ、さすが見ぬかれている

シンタは小さな声で呟いた

「・・さんの・・・」

「なんだってえ!?そんなことじゃ聞こえないなあ!」

「山下さんの!」

「誰だよ山下さんって?」

シンタは顔を赤らめている

「山下さんというのは同じクラスの・・」

「なんだよ?男の子かよ?」

「違うっ!」

「じゃぁ何だよ?」

「山下かなえさんのことです」

「かなえちゃんの何が見たいんだよ?」

「その・・・」

神様は立ち上がってドンドンと足を踏み鳴らしているようだ

「言ってみろ!かなえちゃんの何が見たいんだ!」

シンタは神様の荘厳な力の前に告白した

「おっぱいです!!かなえちゃんのおっぱいです!!」

「それだけじゃないだろう!!」

「山下かなえちゃんのおっぱいと、お尻と、それと、あの、もうハダカです!

体中のアナ全部です!!特に股間のアナがみたいです!!

クパァしまくりたいです!!」

神様の姿がもやもやと実体化し、そこには制服姿の山下かなえが現れた

「かなえーっ!」

シンタはかなえに飛びついた。

「好きだ!好きだ!小学校の頃から、ずっとずっと好きなんだ!」

かなえの温かく柔らかい全身をまさぐり、制服を無我夢中で脱がせていく。

「いやッ!」

かなえは声を上げて抵抗するが、その実、むしろ協力しているようで、

するすると脱衣されていく。

「そうか・・こういうことか!」

いよいよブラジャーに手がかかった。しかしその時かなえと目があった。

かなえの冷静というより、冷徹といえる目がシンタを捉えていた。

ふっと気がついた。

「これじゃない」

シンタはかなえ、いや、神様の顔をじっくりと更に見つめた。

いまはかなえの姿をしている神様がじっくりと見つめ返してきた。

かなえのあどけない顔が、その小ぶりな身体が徐々に崩れて、

今度はまた別の顔が、身体が現れる。

「はああああ!」

シンタの表情がみるみる歓喜に崩れ、心の奥底から初めて知る嗚咽が溢れだした。これだ、これが見たかったのだ!

シンタは新しく現れた女体にしがみついた。

今度のそれは見事に成熟し、溢れんばかりの芳香を放っている。

「はああああ、ゆきりんッッ!!」

柏木由紀だった。

「ゆきりん!ゆきりん!僕のゆきりん!

今でも、今でも、ゆきりんだけが大好きなんだーっ!!」

柏木由紀はしかし山下かなえと異なり、猛烈に抵抗するのだ

「ガアアアアッ!!」

ダンスで鍛えた肉体から繰り出される全力攻撃に阻まれる

「ゆきりん!どうして・・。僕はこんなに」

「ギイイイイイッ!!」

激しいツメの攻撃だ。シンタの顔に鮮血が走る。

間一髪かわしたが眼球を的確に狙ってきた。

由紀の爛々と燃える目が、研ぎ澄まされ、豪華に飾り立てられたツメが、

次はシンタの首筋を狙っているのがわかる。

「このままじゃ殺られるッ!」

ケンタは由紀の腕を捻じりあげると首根を押さえつけた

由紀は血のヨダレを吐いて抵抗する

「ゲシャァッ!ゲシャァァッ!!」

思い余ったケンタの目には涙が溢れだした。

気がつけばケンタの手は由紀の首にかかっていた

ケンタが両手に力を込める。

するとそのとき、由紀がすっとケンタの頬を触れた

その目には涙が溢れている。

「できない・・・」

ケンタは由紀の手にかけた手をゆるめた。

由紀が言った。涙を流していた。

「気持ち悪い」

「それでも好きだよ、ゆきりん」

ケンタは由紀に自らの身体を沈めていく

「ああ、ゆきりん、僕のゆきりん・・・」

押し寄せる波の中、ふっとケンタは由紀の唇を触れた。

「ゆきりんの中に僕の使徒を・・」

違和感を感じた後、そして絶叫とともに跳ね起きた!

「うぐわあああああっ!!」

しかし身体がもはや離れない。

ゆきりんの顔、身体が、手越に変わっていたのだ!!

手越はクールに言い放った。

「フフフフ・・お前ら握手、俺セックス」

ああ、なんというサードインパクト!

「離れろ!離れろ!離れろーっ!!」

シンタが涙とヨダレを吐き散らしながら身体を振り乱すが

手越とシンタの身体はシンクロ率を高めるばかりだ

「オマエとだけはひとつになりたくなかったーッ!!」


「これが、これが・・」

もがくシンタに手越の声が響く

「そうだ」

「僕が見たかったもの」

「おいでシンタ」

いまや自らの一部になった手越の手が駄々っ子をあやすようにシンタの背中を抱く。声が聞こえるがそれは手越の声なのか、ゆきりんの声なのか、

シンタ自身の声なのか、もはやわからない。

いや、もはや問題では無いのである。そして今は明確に聞こえる。

「これがゆきりんとオレたちのエターナル」










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