operation.4 仮想世界
『海』といっても、現実のそれとはずいぶん違う。
まず、
『海』の中には大きな貝を
海中には、俺の顔ほどもある大きな球体が
中には
人魚たちは貝の家から出てきては、球体を覗き込んでいる。気に入ったものがあると、球体を家へと持って帰っているようだ。
なかには海豹や他の人魚と球体を交換している者もいる。交換された球体は光の
球体はネットの海にあふれる情報だ。その情報をAIである人魚たちが集め、情報を
ホログラムでは見られない彼女たちの働きぶりには、見入ってしまうものがある。俺は、
こいつも俺が情報を
――はぁ、みんな異常なぐらい働き者ですね。メロウみたいにその辺に転がってる
ため息をつくこいつのありえない言動に、俺は先ほどの考えを否定した。どおりでこいつを使って検索した情報が役立たずなわけだ。旧時代に活躍した
――なんでみんなは、メロウと
ふんわりと
メロウと違って彼女たちには『心』がない。正確に言うと、メロウに
21世紀初頭に登場したディープランニング方式により、
だが、このディープランニングによって生み出されたAIたちには人とは
そこに、
メロウのように『心』を搭載されたAIも存在する。先ほどのメロウのように利用者の言うことをきかないなど、様々な問題があるためかそれほど
メロウは父さんが特別に制作した人魚型AIだ。ただ、どうして父さんがメロウに心を与えたのか、俺にはわからない。
心なんてAIに与えても、面倒なだけだろうに。
――可愛いガールフレンドぐらいいてもいいだろう、ミサキ。
メロウの心について考えるとき、俺はそう言って
どうしてかは、分からないけれど。
――ぎゅむー!!
メロウが大声をあげる。頭の後ろに柔らかな
「メロウっ!?」
――ほーら、オッパイですよ、ミサキ! ペチャパイのお子様にはない、大人の
「こら! 変なもん押し付けんな!!」
顔が熱くなるのを感じながら、俺はメロウを怒鳴りつけていた。現実世界のAIたちはホログラムで現れるため
つまり、メロウは自分の胸を俺に押し付けているのだ。
――にゃは! ミサキに
「こら!! メロウ!」
俺の言うことを聞かず、メロウはガバリと俺に抱きついてきた。仕事に
「逆セクハラはやめろっ! 何度言ったら分かるんだよ!!」
――うーん、いつものミサキです! やっぱミサキは
するりと、尾びれをたなびかせメロウが俺の前と移動した。彼女は
――ほらほら、ミサキはお父さん
わしゃわしゃと俺の頭を
「あっ……」
自分の気持ちをメロウに
――ミサキィ……。無視しないで下さいよ……。
メロウは
「おい……メロウ……」
――ぶぅ……。
不機嫌そうな声を発し、メロウは俺を
「悪かったよ……」
俺はため息をついて、メロウの頭を優しくなでていた。
――にゃははーん! ミサキの負けです!
がばっと顔をあげ、メロウは得意げに笑ってみせる。俺は
「負けは
――それとこれとは別です。昔は私にエロゲーをインストールしてたくせして……。思い出すだけで気持ち悪いです……。
「俺もガキだったんだよ……」
ぱっとメロウの頭から手を放して、俺は彼女から顔を
――あー、ミサキー、もっとなでてくださいよぉ。
眼を潤ませながら、メロウが俺に
そのときだ。遠くで
みゅうみゅうと人魚たちの悲鳴が聞こえる。俺は驚いて、彼女たちが働く貝の集落へと視線を走らせていた。
海に浮く球体が、ドス黒く変色している。それらが次々と音をたてて割れ始めたのだ。
――フォモール……。
メロウが
「あぁ、レディたちがおいでなすった……」
割れた球体からは黒い
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