第2話 学校

学校ではいつもと変わらない日常風景が広がっていた。


「真兎おはよー!」


教室に入ると何人かがそう言ってくれる。

彼女はべつに浮いているわけでもなく、特別人気があるわけでもない。クラスにカースト制度があるのなら真兎は真ん中だろう。それが真兎にとって1番良い立場だった。

そんな立場の奴がこのクラスにもう1人いる。


「やっとの来たのかよ遅刻野郎」


隣の席に座って頬杖をついている黒髪の青年が話しかけてくる。

時刻は8時、HRまで15分時間がある。しかしコイツは部活の朝練などの関係で7時には学校にいる。

そう。真兎の兄、小鳥遊翔鈴たかなしかりんだ。


「うるっさいなアンタが早いだけでしょ」


真兎は皮肉気に言った。

しかしこれもいつもの会話なのであまり気にせず席に座った。


「あ、そういえばロールパンきれてたんだけど」


机の上にスクールバッグを置き、棚にあった空のビニール袋のことを翔鈴に告げた。


「あーそういえばそうだったな

帰りに買ってくか」


無関心気だが両親がいない分翔鈴は家計を気にかけている。


「おーい!お2人さん元気ぃー?」


遠くの席から1番後ろのこの席に向かって声を投げかけ歩み寄ってきたのは翔鈴の友人、霜月赤花しもつきあかばだった。

彼は誰にでも親し気で赤い髪が特徴のチャラい奴で翔鈴とは正反対だ。


「お前は朝から元気だな」


翔鈴は無愛想に言った。興味がなさそうだ。


「なんだよーつれねぇな」


そう言って赤花は翔鈴の机に腰をかけた。

この2人を見ていると何故一緒にいるのだろうと思うことがあった。赤花のようなおちゃらけた奴がクールで無愛想な翔鈴といて楽しいのかと、しかしどこか仲良さげな2人を見るとどうでもよくなって真兎は口に出さなかった。


「そんなことよりさ!明日ここ行かない!?」


赤花はポケットから3枚のチケットを出した。

チケットには江戸町とかかれていた。


「えっ江戸町って月光の?」


「そう!」


「しかも明日?」


「そう!明日から3連休だろ?」


真兎と翔鈴の質問に赤花は笑顔で答えた。

月光といえば真兎達の住んでいる鹿湊かそう市の近くにある。ここからそんなに遠くないだろう。


「へぇ~楽しそうじゃんねぇ翔鈴」


「…まぁたまにはいいか」


いつも交渉が難しい翔鈴も易々とOKしてくれた。

月光なら両親も許可してくれるだろう。


「よしそれじゃあ明日!10時に俺ン家集合な!」


早々決まった約束に真兎は胸を踊らせた。

考えてみれば3人で出かけるのはこれが初めてだ。明日が待ち遠しい。

それからチャイムが鳴り、HRが始まった。

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