第19話 PRISON


 ミアはあの後、薄暗い牢獄へと連れてこられた。

来る途中ずっと目隠しをされていたため、ここがどこかなどわかるはずもなく。

ただ分かるのは、軍服を来た彼らが“敵意に満ちた目で自分を見ている”ことだった。


手探りで辺りを確認すると、布のようなものが手をかすめた。それを体に巻き付けると、その上から体を擦る。





――大丈夫、大丈夫。





薄暗い闇の中、ミアは自分を安心させるようにその体を擦り続けた。
















◇◆


 多くの軍人が行き交う中、目深にフードを被ったその男は、影から様子を伺っていた。時折、その口を動かして誰かに合図を送っている。



「誰だ、そこにいるのは!」


後ろから銃を手にした軍人がこちらへ走って来るのを確認すると、男は両手を上げて降参の意を示す。


「何者だ! 貴様!」

威圧的に聞いてくる男にびくともせず、フードの男はただ無視を決め込んでいた。


「おい、聞いているのか!」

「…………」

先程よりも声を張り上げる軍人だったが、いつまで経っても口を開く気配がない男を前に、そばにいた軍人に指示を出す。


「牢へ連れていけ!」


すぐさまその手を拘束され、ひきずられていく。男は何も言わず、抵抗することもない。すれ違う軍人たちが、怪し気にこのフードの男を見つめていた。そしてそこへ、髪を鬱陶しげに払いながら近づいてくる女がいた。


エリカ・ディランである。



「あらいやだ。今日は騒がしいわね」

隣で資料を纏めている短髪の女、テレサに声をかけながらエリカは頬に手を当てる。


「暢気にしていていいんですか? 少佐」

「その呼び方はやめてちょうだい」

「では何と?」


嫌そうな表情のこの部下に、ウィンクしながらエリカは言った。


「エ・リ・カ」

「…………」


テレサは呆れたようにその場を去って行く。そんな彼女の姿を見、すぐにその視線を先程騒ぎがあった方へやる。だがそこにはもう、男の姿はなかった。



「なあんか嫌な予感がするのよねえ……」



エリカのその呟きが、騒がしい空間に溶けて消えた。







忙しなく走り回る軍兵達の足音だけが、しばらくそこにこだましていた――





































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