第26話 サヨウナラ


 ミアは動かなくなった父に抱き付き、大声を上げて泣いた。

辺りは火の海であったが、不思議と二人の周りには、炎は近付いて来なかった。


しばらくそうして泣いていたミアであったが、目の前から一人の軍人がこちらへ走って来ていることに気付くと、震える足でそちらへ向かう。


「早く! こっちだ!」


赤い髪をしたその男は、父に似て優しい瞳をしていた。

ミアは縋るように男に抱き付くと、男は大事そうにその体を抱え、教会の方へ走って行った。





男の肩越しに見えた、横たわる父の姿。





あの大きな手で、自分を抱きしめてくれることはもう二度と無い。


あの大きな手で、頭を撫でてくれることはもう……無い。


ミアはそっと瞳を閉じて、最後の言葉を父に贈った。





















――“ウィンディアと共に、あれ”――


  「ei na windya.......」




それはこの地に伝わる、別れの挨拶――









さようなら、さようなら、


また会う日まで――




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る