第二話『再会』(1)-2
スパーテインは街の一角に築かれた本部テントへと足を踏み入れた。周囲は完全武装が施された兵士が多数存在し、誰もが慌ただしく動いている。
普段は真っ暗な廃ビルが多く集まる地域に煌々と照明が照らされていた。
テントの中に入る。兵士達に敬礼をされた後、街の地図を見据えた。
「どうなっている?」
「少佐、申し訳ありません。ターゲット、ロストしました」
慌てている兵士の言葉に対してもスパーテインは冷静だ。
「巻いたか。だが、この町だ。巻こうにも範囲は限られているはずだ」
彼は地図を見回した。だが、地上に隠れられそうな場所はない。
ならば地下ならどうだろう?
空中にM.W.S.等が飛び交った反応はない。というよりもこんな中で飛び交おう物ならば直ちに見つけられ、そのまま追撃戦に陥り逃げるのが先か、それとも追いつかれて圧倒的戦力差でもって大敗するのが先かどちらかだ。しかし、慣れない土地で戦っている相手はほとんどの確率で後者となる。
そんなバカな真似をフレーズヴェルグがするはずがない。その事はスパーテインも重々承知している。
フレーズヴェルグ、否、ルナ・ホーヒュニング。若干一五歳でベクトーア史上屈指の名門校『アルト国際大学』を卒業した後は、わずか一八歳で大尉に昇進し、あのルーン・ブレイドを率いるようになった女傑。まだ荒削りの部分も多いが、かなり頭が切れる。
甘く見ることは出来ない。スパーテインはそんな人物とアシュレイの町という広大なフィールドを舞台にした、知能と知恵がコマのチェスをやっているような物だった。
だが、相手は人間、完全なんて物は存在しない。更にスパーテイン達華狼側には地の利があった。この町の構造は知り尽くしている。
ならば地の利のない彼等が敵を巻く方法は一つしかない。地下に潜った。それが彼の考え出した答えだった。
彼はすぐに兵士に指示を送る。
「地下水路の出口各区域に兵士を一小隊ずつ待機させろ。ただし、第一二区画と二十六区画には一個中隊を連れてゆけ」
「一個中隊?! 多すぎはしませんか?!」
兵士に一人がスパーテインに対して声を荒げながら尋ねた。
「相手はイーグだ、これくらい当てなければ足止めも出来ん。だが、無理はするなよ」
スパーテインの言葉の後、兵士は敬礼をしてその場を後にする。その言葉は寒暖の差がはっきり付いた、まさしく司令官のそれだった。
スパーテインはテントの外に出て、選りすぐりの兵士を三〇ほど選び、密かに行軍を開始した。
空を見る。巨大な月が見える。
その月が、何処か不吉に見えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「暗いわね、ここ」
ルナは今更のことを愚痴る。
もう随分進んだ。多分もうそろそろ付く頃だろう。
その時、鋼のペンライトが何かを捕らえた。
ドブネズミだ。しかも大群。ライトで照らすのが億劫になってくるほどだ。
「ネ、ネズミ?!」
ルナは嫌がった。さすがにドブネズミが大量に巣くう場所を突き進みたくはないようだ。
が、鋼は構わず突き進む。
しかし縄張りを荒らされたとでも思ったのかドブネズミの大群は鋼に襲いかかってくる。
さすがに嫌になったのか、鋼も逃げることにした。しかも全速力で。
「ネズミ系はハムスターじゃなきゃ嫌ーっ! 可愛くなきゃ嫌ーっ!」
「わけわかんねえ事言ってんじゃねぇ!」
まるでコントのように二人して逃げる逃げる。鋼達は必死に逃げた。もう二人とも表情が先ほどの華狼兵士から逃げるときより必死だ。
そして近場にあった排水溝のパイプを見つけそれに向かいジャンプして掴む。横にいるルナはどうも怯えているようで、少し顔が青い。
ドブネズミがただ彼等の下を通過していく。
ホッと胸を撫で下ろす。だがその瞬間、べきっと何かが折れかけている音がした。二人とも上の方を、少し冷や汗をかきながら見つめた直後、排水溝が鋼の持っていた部分だけが綺麗にもげた。
だが、排水溝からは水が全く出てこない。どうやら何年間も使われていないらしい。
先に鋼が落ちた。その後続けざまにルナが義足の真下に落ちてきた。
ピシッと、嫌な音が聞こえた。どうやら義足にヒビが入ったらしく全く足が動かない。
「やべ……」
鋼はしゃがみ込み、武器ケースの下部を展開して中から工具と予備パーツをとりだした。そこには弾丸、工具、アーマードフレーム用予備パーツや、強引に詰め込んだとしか思えない雑誌まで入っている。最後の一つは極めて無駄だ。
鋼はパーツを工具の横に置いた。アーマードフレーム用予備パーツと言われてもこれ自体、既製品でないため相当コストが掛かっている。
後で修理費請求してやる。
鋼はズボンの裾をめくりながら心の奥底で愚痴る。
「おい、ライトで照らせ」
鋼はルナにそう呼びかけたが、ルナは少ししゅんとしていた。
「どした?」
「……ゴメン。壊しちゃって」
ヤケにしょげていた。こういう表情示すこともあるのかと思うと同時に、顔がころころ変わる奴だと心底思った。
「これくれぇ普通だろーが。ま、壊れるパターンが珍しいけどな。てめぇ体重いくつだよ?」
「失礼ね、そう言うことは聞かないって言うのは常識でしょ?」
ルナに少し笑顔が戻る。
「照らせ」
「はいはい」
ルナはペンライトで鋼の足下を照らす。
しかし、その時、武器ケースの中に妙なものがあることを発見した。
血液パックだ。四〇〇ミリリットルの標準的輸血パック、それが二個。しかしどういう訳か血液パックには血液型の表記が『存在しない』。
奇妙には感じたが、正直ルナには割とどうでもよくなった。鋼の指先が想像以上に器用なのだ。丁寧に義足のボルトを外し、壊れたパーツを換装して手際よく修理をしていくその手先はとても片方が義手とは思えないほどだ。感心するほか無い。
だが、それと同時に痛々しさも覚えた。左足が完全に機械化されている。見ていて少し自分の足も痛くなってくるような気がした。
「終わりだ」
鋼は武器ケースを閉じると同時に立ち上がって義足の調子を確認するが、これと言って問題はなかった。
「さてと、あのドブネズミ共も去ったことだし、行くか」
「頼むわよ、ナビゲーターさん」
彼等は再び暗い下水道を歩き出した。
しかし、その途中ルナは重いため息を吐く。
いくら敵を巻くためとはいえこんな億劫な方法を使って良かったのだろうか?
今更そう思ったがもう遅い。歩き出したら止まれないのだ。只前へ進むしかない。
だが彼女は不思議と悲観的にはなれなかった。目の前の鋼の道案内が思いの外正確なのだ。
「ここだな」
鋼は第二十六区画の梯子前に来た。
「だけど、絶対に敵は待機してる。つか、あたしだったらそうする。さて、ここからどうやって簡単に抜け出そうかしら?」
ルナは天井を仰いだ。
彼女は考え込むとき上を向く癖がある。普段屋外にいる時に雲を見つめる。そうすることで少しでも考えをはらそうとしたことが起因しているようだ。
今上にあるのはただひたすら暗い虚空の彼方。だが、そんな中でも彼女の頭がひらめく。
「あ、そっか。あれがあるある」
ルナは一つ大きく頷いた。
彼女は小型スイッチをジャケットのポケットから取り出した。
「ンだ、それ?」
ルナはにやりと笑う。
「爆弾の起爆スイッチ」
鋼はブッと吹き出した。
まさかこんな物を持っているとは夢にも思っていなかった。案外被害は小さくするほうかとも思ったがそうでもないらしい。
意外と彼女の地は少々過激であることに気づくのに遅れた自分に後悔する鋼がそこにいた。
「大丈夫よ、誰もいないところに規模が小さめの爆弾を二、三個ばらまいただけだから。とりあえず一般市民に被害は出ないわ」
「要するに、その爆発で少し混乱を迎えてる最中にさっさと脱出しようって訳か」
「わかってるじゃない。というわけで、行くわよ」
鋼を先に行かせてルナは彼の後を追いながら目の前のはしごを登っていく。
そして最上段、マンホールが真上に見える場所にたどり着いたとき、鋼は念のため確認を取った。
「ホントに爆発すンだろーな?」
鋼の質問にルナは一つ頷くだけだった。
その後、ルナは何の躊躇いもなくスイッチを押した。
それに呼応して鋼がすぐにマンホールの蓋を蹴り上げたと同時に彼らは体を僅かに外へと出した、まさにその直後、銃口が自分たちに向けられた。
気付けばマンホールの周囲は華狼の兵士に取り囲まれている上、爆弾騒ぎによる混乱のような物も見受けられない。
「……あれ?」
ルナは苦い表情を示す。そして、二人してゆっくりと全身を外に出し、両手を挙げた。
兵士の一人ががくりと肩を落としながら二人に近づく。
「お前ら、実はかなりアホだろ?」
その兵士はぷらりと手から解除された爆弾をつり下げていた。
ルナが仕掛けた物と同一の物だった。要するにとっくの昔に解除されていたのである。
鋼はもう引きつった笑みしか浮かべていない。しかし、それも一瞬にして憤怒の表情へ変わりルナに罵声を浴びせる。よりによって痴話喧嘩だ、こんな戦場のど真ん中で。
ここまで来るともう本当に彼らがただの阿呆にしか見えない。
「バカか、おめぇは?! 何が簡単に抜け出せるだ、このアホ! こうも簡単に見つかってんじゃねぇよ!」
「こういうのは計算外って言うのよ! わかる?! 世の中には計算外な事もいっぱいあるのよ!」
ルナも負けじと反撃する、と言うより彼女の方は逆ギレなような気がする。
冷めた視線で見つめる華狼兵士が
「ルーン・ブレイド(あいつら)、マジで頭ラリってるの多いって噂ホントだったんだな」
などと非常にルナの心を抉る発言をしていたが、実際そう言われても文句の一つも言えない当たりが非常に哀しい。
そんな様子に呆れたのか、一人の兵士が銃口を突きつけながら二人に近づき
「仲間割れならうちの独房で思う存分に……」
と言った瞬間、その兵士の顔面が鋼のアーマードフレームによる鉄拳でめりこんだ。
遮断される言葉。それと同時に一斉に敵武装のセーフティが解除された。
やばい。
ルナは一人冷静になって鋼を無理矢理引っ張って逃げる。
そして物陰に隠れた直後、一斉に銃声が鳴り響いた。
相手は確認する限り歩兵一個中隊とガンビット。いくら何でも多すぎる。
ガンビットに装備されていた一二.七ミリ二連機関砲が火を噴き、それが周囲の家屋を粉砕していき、同時に歩兵部隊は北部鉄鋼公司製の六八式突撃小銃を一斉に構え撃ってくる。
銃声と薬莢の落ちる音がやたらと耳に響いた。
物陰に隠れ、一度銃弾の雨を避ける。少し息が上がっていることに鋼は気付いた。
「ああ、もうおバカ! 余計やばい事態に発展しちゃったじゃないの!」
相も変わらずルナは喚いているが、正直鋼からしてみればこっちが喚きたい気分だった。
「そりゃこっちの台詞だ! つーか増援はいつになったら来んだよ?!」
「こっちの方が聞きたいわよ! 何やってるのよ、あのお馬鹿達は! 予定時間遙かにオーバーしてるじゃないの!」
ルナが鋼にそう言った直後、建物の横を二〇ミリ機関砲の走射が走った。
「シャレになんねぇな、おい……」
しかし、鋼はけたたましく響き渡る銃弾の甲高い音に、心が奪われ始めた。
どくんと、心臓がうねりを挙げた。
戦いてぇ。俺は戦いてぇ。ああそうか。あの銃声は、俺を戦いに誘っているのか。
そうだ、この音が、いつも俺を戦いに誘う。
いいだろう、戦おうか。
鋼は静かに立ち上がり、武器ケースのキーパットを展開してパスコードを入力した。
ロック解除。そして重苦しい音を立てて武器ケースの扉が展開する。
そこには巨大な両刃刀が横たえていた。いわゆる『ツインブレード』と呼ばれる類の上下に剣が付いた両刃刀だ。無駄な装飾は一切無い無骨極まりない代物。重さで磨り潰す西洋式巨大刀を、鋼は掴んだ。
「こいつらをぶちのめすぞ」
ルナがギョッとしたのがすぐにわかった。
しかし、鋼が立ってみて初めてルナは気づいた。その両刃刀は半端ないほど巨大だったのだ。鋼の身長をも凌駕している。
もっとも、イーグとて元は人間だ。こんな超巨大武装を扱えたり、動体視力や筋力の強化によって、銃弾の切り払いは可能でも、これだけの銃撃となると全弾かわすことなど不可能だ。
それもよりにもよって近接戦闘武装。極めて不利である。
さすがにルナもたじろいている。
「この銃弾の雨の中行くわけ?!」
「他に手段ねぇだろ。てめぇは俺の武器ケースでも使えや。防弾シールドにはなるぜ?」
鋼は武器ケースをルナに預けるやいなや、静止も聞かずに物陰から出て両刃刀片手に一気に敵へと向かっていく。
「ああ、もう!」
もうこうなるとルナも放っておけない。
だから彼女は腕に巻いていた袋を破り武器の封印を解除する。
大型ナックルを中心に、その左右に二本の小太刀が付いた『タイガーファング』のような奇妙なナックルを二つ、これがルナ愛用の武器である。
アイオーンが初めて地上に姿を見せたとき、当時の人類は戦いの長期化を懸念し、消費式である重火器に頼らない方法で戦っていくことを主流にしたことをきっかけに、今や伝説となった多くの戦国乱世で使われた近接装備の多くが現代の技術を使った製法で蘇った。
しかし、銃器の方が圧倒的に有利である事に変わりはない。が、イーグはそれを見事に逆転させるだけの人知を超越した機動力と動体視力、そして非常に単純な『力』を供えている。
そんな自信があるから、ルナは呆れた顔をしながらも武器ケースを手に銃弾を防御しながら鋼の後を追うのだ。
放たれる六八式突撃小銃の一斉射撃。
だが、鋼は臆すことなく義手を顔面の前に置くと同時に、両刃刀を体の前で回転させながら更に加速していく。彼の通る跡には、真っ二つに叩き斬られた銃弾が横たえる。
カーボンナノシャフト内蔵の防弾マントに何発か掠ったが、鋼はどうということもなく進んでいく。まるで獣の如く、俊敏な動きで一気に詰め寄る。
だがそれでもやはり全ては防げず、鋼の頬から少し血が出た。
直後、その傷跡から『煙』が吹き出し、瞬時に傷口を塞ぐ。
この瞬間が、鋼にとっては屈辱だった。自分が人間でなくなった証の一つだからだ。
だが、そうも言ってられない。屈辱は何倍にもして返す。
鋼は赤い瞳に炎を滾らせ、もはや使い物にならなくなった防弾マントを走りながら前方の兵士に向かって投げつける。
一瞬兵士が怯んだのを見ると、それと同時に彼は一気に大地を蹴り上げ疾走。防御を捨て義手を展開し、隠し武器の一つであった四.九ミリサブマシンガンを掌の接続口に接続するやいなや、引き金を引き銃弾をばらまきながら牽制を仕掛けつつ相手に更に接近する。
そして、敵陣のど真ん中に滑り込むように入り込んだ鋼を兵士が囲む。
阿呆が。このまま撃てば同士討ちは免れんということもわかんねぇのか。
鋼は心底呆れると同時に、不敵に一瞬だけ笑う。
咆吼。獣のように、けたたましくその音は鳴り響き、それと同時に両刃刀をなぎ払うように一閃する。
暴風に煽られる烈火の如き勢いだった。
強引とも思える力任せが鋼の武器の一つだ。彼のチマチマしたことが気にくわない性格故にこのように大雑把な技になってしまったのだが、このような一振りの威力が桁外れなのだ。
何せ、囲っていた華狼の兵士のうち半分が先程の一閃で事切れているのだから。
ボディアーマーすら引き裂く程の破壊力を持つことが出来る、これがイーグの力の一端でもある。
囲っていた兵士の包囲が目に見えて薄くなったのを感じる。
そしていつの間にか銃撃も止まった。
怯えている。そう捕らえることが出来た。
戦場でビクついてんじゃねぇよ。
鋼は心の中で吐き捨てると、剣先を青ざめた兵士の大群へと向け、叫ぶ。
「鋼たぁ俺のことだ! 死にてぇ奴から掛かってこいやぁ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鋼の傷が塞がった瞬間、ルナは唖然とするほかなかった。
鋼には『人体が瞬時に再生する』という奇妙な噂があった。
それにも興味があり、依頼を申し込んだのだが、まさか都市伝説の類でもなく本当の話だったとは思いもしなかった。小さな傷だったとは言え、それが瞬時に消えるというのもおかしな話ではある。
しかし、その答えを割り出している暇はない。自分の目の前には敵がいる。どうやら先程の鋼の大立ち回りが原因でターゲットを自分に絞ったらしい。
だが、彼女も彼女で鋼と同じく甘くないのだ。
左手でとっさに胸ポケットから愛用のハンドガン『ドミニオンT-69PPK/S』を取り出した。
民生用から軍用まで幅広い銃器を扱っているドミニオン社が出した『ワルサーPPK/S』の改良復刻版で、姿は同じながらダブルアクション式となり使い勝手が向上している代物だ。
ルナはセーフティを解除してから武器ケースをシールド代わりにしつつ、身をかがめながら疾走し、狙いを定めるやいなやPPK/Sのトリガーを引く。
向かってきていた兵士の額に穴が開き、彼の鮮血が打ち抜かれた兵士の顔面を染めた。
鋼の武器ケースは丈夫だ。実際立てかけながら敵に向かっている自分には銃弾が一つも当たらない。
だが、重いから自分の本来の武器たる『機動力』が思いっきり削がれている。
そのため彼女はPPK/Sをすぐさま胸にしまった直後、威嚇のために『悪い』と思いつつ、鋼の武器ケースを思いっきり敵に向けて投げつけた。
一瞬相手が怯む。その隙に接近する。
そう、大地に重い重低音が響き渡った時には、既に彼女は兵士の前にいるのだ。
ルナはすぐさま左手で目の前の兵士の頭を掴み、右手のナックルに付いている刃を相手の腹に突き刺した。
それをすぐさま引き抜くとより深い敵陣へと突っ込んでいく。刃に血が付いていたが、気にもとめなかった。
視界に三人の兵士が映る。彼女は咆吼を挙げ大地を蹴り上げる。
彼女は一人の兵士の肩を掴んだ後、それを始点として逆立ちをする。
そして、それと同時に自分の腕を動かしてその兵士の肩を捻らせた。兵士の肩は完全に外れていた。その兵士の口から絶叫がこだまする。
更に呆然としている横にいた残り二人の兵士にも見事なハイキックを決め彼女は更に深くへと突撃していく。
鋼が見えた。大立ち回りを演じている。遠くからでも敵の首や体が切り裂かれ血が飛んでいるのがよくわかった。
しかしここで出てくるのがガンビットだ。その巨体がルナの足を止めさせる。
鋼もまたルナに近づき、ルナと背中合わせの状況になった。やはり数が多い。包囲された。
「あっちゃー、まずい状況になったわね……」
ルナは一度構えた後舌打ちする。
「だが、死んじゃいねぇだろ。だったらぶちのめすまでだ」
鋼は戦いを楽しむように、全身に返り血を浴びながら言った。
こういう状況でもこう言えるのは相当肝が据わっている。ルナは彼を嫌いになれなかった。
しかしどう脱出する? そう考えていたとき突然、右端のガンビットのコクピットが爆発した。
「なんだ?」
鋼の疑問をよそにその後、立て続けに三機とも破壊される。
その後その破壊された倒れそうなガンビットを伝って一人の傷だらけの男が降りてきた。
「待たせたみたいやな」
傷だらけの男がルナの前に降り立つ。それと同時にルナは悪態を付く。
「遅いわよ!」
彼は誰なのか、先程の砲撃は何か?
その事を解説するために一幕入れておこう。
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