第4話 コスモスの花言葉
葉月先生の家の庭は今、秋の花でにぎやか。
そして、先生に合わせてるみたいに、みんな背が高い。
先生が花の名前を教えてくれる。
私はやっぱり、
コスモスの花言葉は「乙女の真心」。あ、なんか似合わない。特にピンク色は「少女の純潔」って、なんかね。
花言葉は陽向先生の受け売りだ。どの花の言葉を訊ねてもよく知っている。
葉月先生ともきっと話が合うのだろうな。
*
黄花コスモスっていう、素朴な花が帰り道に咲いている。
ちょこっと揺らして、あいさつをする。
黄花は「野性的な美しさ」だって。私はこっちかな。野性のことね。
チョコレートコスモスっていう種類もあるんだって。
葉月先生に教えてもらったの。花がチョコレート色で、匂いもチョコみたいだなんて、まちがってこりすが食べちゃうよ。
チョココスモスは「恋の思い出」や「恋の終わり」。
ウィンターコスモスという花は、コスモスの仲間ではないけど、名前はいかにも冬に咲くみたい。花言葉は「もう一度愛します」だなんて。
コスモスの種類だけで、恋がはじまって、終わって、またやり直すみたい。
黄花とチョコを一緒に抱えたら、私がだいすきなオレンジとショコラの組み合わせみたいだなぁ。
甘いものを抱きかかえたみたいな、しあわせな妄想。ああ、おなかすいちゃった。
*
律が押し花を作って詩集の栞にしているのを見た時、なんて乙女なんだろうって思ったの。
私ね、お菓子の包み紙を適当に折って、文庫本のカバーにしてたの。和菓子屋さんので、季節の野の花が描かれたやつ。
律が、いいな、かわいいなって目をきらきらさせて見てるから、じゃあ、あげるよって言ったら、すごく嬉しそうだったな。
うん、律の方がこういうの、断然似合うもんね。
その話を空にしたら
「ああ、姉ちゃんは、こっちの方がいいんじゃない」
って言って、茶色の温泉まんじゅうの包装紙を渡されたよ。はいはい、どうせそうでしょうとも。
空はいっつも
「りっちゃんは かわいいよなぁ。姉ちゃんとえらいちがい。あんなお姉さんならいいのになー」だって。
昔から、年上の律にあこがれてるんだよね。
律のかわいさに惹かれてるのは、きっと空だけじゃないけど。
そういえば、葉月先生の家で、今度「紙を漉く」って言ってたなぁ。
お花も入れ込んだりできるんだって。ちいさな花限定だよね。
だったら、
あのだいすきな香りも閉じ込められたらいいのに。
私だって、少しは乙女成分でできてるんですよーだ。
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