Cuber
3日歩けばえびる神官
第1話 記憶の箱
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僕らが生まれる以前から、この世界は暗く閉ざされていた。
過去の記憶によると、千年も前に雄大な自然と英知の科学が広がり、地球人の繁栄を象徴していた世界が自らを傷つけ合い滅んでしまった。
だが、僅かに残った僕らの祖先は地下に逃げ込み、二度と外の世界では生きてはいけないという罪を背負いながら、長い年月をこの薄暗く、古事で言うスラム街のような地下で過ごした。
それから数千年が経ったある日、一人の若者が外の世界へと飛び出した。その事がキッカケで、多くの者達が外の世界に関心を抱くようになってしまい、罪という意識が少しずつ薄れていった。
ほどなくして若者は帰ってくるのだが、その手には人類の希望でもある『キューバー』が握られていた。
『キューバー』は、大昔に滅んだ僕らの祖先が残した記憶を記録する、直径五センチメートル程の立方体の事だ。また、『キューバー』は『キロウス』という装置が無いと記憶を見ることが出来ない。『キロウス』も若者が持ってきた。
『キロウス』は、『キューバー』と形は異なり球体である。『キューバー』より僅かに大きく、中央部にははめ込む窪みが空いている。そこに『キューバー』を差し込むと、保存されている記憶が脳内に直接、映し出されるのだ。
少年が持ってきた『キューバー』には、祖先が残した技術と、祖先が犯した罪の重さが鮮明に記録されていた。
それを見せられた地下に住む者達は、様々な感情を抱いて、千年前の人類に思いを馳せたそうだ。
そして、二つの装置を手に取った僕らは、外で生き抜くための知恵を身に付けて、ここ何十年かで目まぐるしい発展を遂げている。
少年がもたらした二つの装置を使い、記憶が記録された、『キューバー』を探索する『キューバー・ハンター』という職業が広まり、人類は再び外の世界へ誘われているのであった。
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