おやすみ。また来年会おう。

 「、、、どう言う、、、事?」


 ルキノちゃんは少し伏目がちにボクから顔を背け、身をよじる。


 だがその仕草、プロポーションは、何かの美術展に出品された作品のようだとボクは思った。


 「案内人がね、言ったの。必ず終わりが在るって。」


 ボクは言葉を失う、安堵から谷底に突き落とされた感覚。


 「なんて顔してるの、そんなの普通に生きてたって当たり前じゃない。」


 「貴方自身も言ってた事だよ、何時までも続かない。永遠なんて存在しない。変わらないモノなんか無い。」

 

 彼女はボクに歩み寄って、そしてボクを抱きしめる。


 「案内人は嘘はついていない。」


 「実際、私達はずいぶん長く今日を過ごしてると思わない?」


 「何時までも続かない。でも何時終わるかも解らない。」


 「永遠なんて存在しない。でも永遠に近いものは在るかも知れない。」


 「変らないモノなんか無い。でも変ってしまった後はどうなるの?続けられないの?新しく始めちゃいけないの?」


 「、、、、」


 その視点はボクに無かった。

 

 「ねえ、今の私ってどう?好き?嫌い?」


 ボクは質問に愛してると即答した、ルキノちゃんは満足な様子だった。


 「私ね、他の皆に「告られた」んだ。」


 ボクは少し動揺したが、取り乱しはしなかった。その可能性は一番高いと思っていたから。


 「でもね、ゴメンなさいしてきちゃった。」


 どうして?と聞きたい気持ちもあったが、愚問だと悟った。理由、それ自体に価値は無い。


 「自分でも良く解らないんだけど、選んじゃったんだよね~貴方を。」


 彼女は「やれやれ」といった感じで溜息をつく。


 ルキノさん、その「外れクジ引いた」みたいなリアクションは勘弁して下さい。ボクはティッシュなの?


 「でも、直感は正解だったのかもしれない。少なくとも今、ここでこうしていられるのは、貴方の中の「私」のお陰だもんね。他の奴等だったらどうっだったかな~。みんなモテたし。」


 ルキノさん、誉めてます?それともディスってます?


 「普通じゃなくなっちゃたけど、私は自分が知りたい事、確かめたい事を全部得る事が出来たの。これはコレで良しとしないとね。」


 ボクは思った。嗚呼、ルキノちゃんだ。


 何か運命を背負ったみたいだけど。ボクの好きな。ボクが愛した。そして今、ボクを愛してくれている。


 「私もね、欲張りなんだよ。中途半端は嫌なの。」


 「私は貴方を選んだ、だから最後まで愛したい。だから貴方も最後まで私を愛して。」


 次の瞬間、ボクは彼女を「お姫様抱っこ」した。


 彼女は急に恥ずかしがって、胸元と下を手で隠した。


 「ルキノちゃん、言うまでも無いけど。ボク、初めてだから。痛かったり、上手くできなかったらゴメンね。」


 ルキノちゃんは笑った。


 「私、、、、」


 ボクはルキノちゃんの言葉を遮った。


 「いい。過去に誰かと付き合ったかどうか関係無い。初めてかどうかも、、、」


 バッシ。


 小気味のいい音が響き、ボクは頬をぶたれた事に遅れて気付く。


 「失礼ね、私だって初めてよ。感謝しなさい、手荒なマネしたら噛み付くからね。」


 ボクは無礼を詫びた。ルキノ様は暫く不機嫌だった。


 ラブホテルの浴室は噂通りだった。と言うか、ルキノちゃん曰く。ここは世界も国も、ボクの情報が基本で再現されるらしい。だから雑誌、テレビ、友達の話ソックリで当たり前なのだそうだ。


 「設備がここまで至れり尽くせりって事は、かなりの情報量って事ね?貴方、本当はもう経験しまくりじゃないの?」


 いえ、ルキノ様。男とは経験が無くても情報は蓄えてある。そう言う哀れな生き物なのです。


 無事、シャワーを浴びた。シャワーを浴びながらボク達は、長い間、キスをした。愛撫をし、感じあった。


 そしてベットで何度も、何度も、何度も、、、、、愛し合った。


 「おやすみ。また来年会おう。」


 ルキノちゃんがボクの隣でそう言った。


 ボクは彼女を抱きしめていたが、いつの間にか眠りに落ちた。

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