今日は、もっと、一緒にいたい。

 二人で並んで駅への道を歩く。


 そして何分もしない内に駅に着き、切符を買って、改札、ホームへ入る。


 ルキノちゃんはまだ返事をくれなかった。彼女に限って中途半端な返事はありえない。


 躊躇う理由はやっぱり他に好きな人が居るからだろうか?ボクは期待と不安でどうにかなりそうだった。


 ホームにアナウンスが響く、電車が来るようだ。


 気が付くと、彼女がコチラを見ていた。


 ボクは覚悟を決め、真っ直ぐ彼女の瞳を見る。


 「今日は、、、、、もっと、、、、、一緒にいたい。」


 「!!」


 思考がゆっくりと言葉に追いつく、期待と不安が喜びに変った。が、聞き間違えたかと不安も残った。ボクは彼女にもう一度、さっきの言葉を確かめようと口を開きかけたときだった。


 彼女の身体が傾いた。倒れこむルキノちゃん。ボクは慌てて彼女の身体を支えた。


 「大丈夫?ルキノちゃん!!」


 「うん。」

 「、、、でもあまり時間が無い」


 「??」 


 何か用事があったのだろうか、ボクの我侭で彼女を遅くまで着き合わせてしまった?


 「ゴメン、急いで帰ろう。」


 ボクは彼女を抱きかかえ、電車に乗ろうとした。


 軽い、


 発熱?いや体温が下がってる?


 しかし彼女は言い募る。


 「まって、熱もあるけど、昨日の傷が痛くて痒いだけだから。少し休みたいたい。」


 「でもここじゃ」


 ホームには硬いベンチしか見当たらない。ルキノちゃんは本当に苦しそうだった。


 「病院へ行こう。」


 ボクは強く彼女に言った。何か変だ、早く処置しないと。

 

 「ダメ、病気じゃないから。」

 「でも傷を見て。バックに薬があるから塗って欲しいの、楽になるから。」


 「じゃあ、尚更」


 しかし、彼女は目元に涙を浮かべながら言った。


 「お願い、貴方に辛い思いをさせるけど、今だけ我侭を聞いて。」


 「今日は、今日だけは。」

 「最後まで貴方と一緒に居たい。」


 そう言って彼女はボクにしがみつく。


 異常事態だ、理由は解らないがルキノちゃんは病院を拒絶し、ボクから離れたがらない。


 混乱した、だが冷静になろう。彼女には悪いが、やはり専門の機関へ行くべきだ。


 「誰か!!」


 ボクは大きな声を上げたが、駅員も車掌も、誰も来ない。


 変だ、気が付けばホームに到着した電車も動く気配が無い。降りる客もいなかった。


 「????」


 決断する、これは自ら望んだ事。頼られている、ボクが彼女を護らなければ。


 状況は全く把握できない。ルキノちゃんが何か知ってそうだが、今、彼女に問いただす事は出来ない。


 思えばずっと違和感はあった。何時からだ?


  「、、、ルキノちゃんと、、、、再開した時から??」


 腕の中の彼女を見る。


 言葉にならなかった、彼女の全身、顔を含め、見える部分の素肌を、切り傷のようなモノが浮んでいたからだ。


 ボクは助けを求め辺りを見回した。


 そして夕暮れに、派手に光るそれを見つけた。


 「!!」 


 状況に相応しいとは思えないが、彼女を休ませる事が出来る場所として、今は最適と言っていい場所だった。


 ボクはルキノちゃんを抱きかかえ、ネオン煌く建物へ向った。

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