ね、最後に観覧車へ乗らない?

 休憩をはさみながら一通りアトラクションを巡り、売店でアイスクリームやホットドックをを買って食べたりした。


 ボクは一度も顔を見なかったが、ルキノちゃんはタイミングよく店員さんや乗り物の係員を見つけ、アトラクションを二人で楽しんだ。


 「ルキノちゃん凄いね。ボクは後姿か影しか見えないよ、見つけたと思って追っかけても居ないんだ。」


 彼女は勝ち誇った表情で答える。


 「ふふ、そこは地元民の強みってヤツですか?」


 ドヤ顔の彼女にボクは苦笑した。


 「そういえば、他のお客さんも見当たらないね。」


 「、、、、賑やかな場所が良かった?」


 「いや、遊園地でルキノちゃんと二人きりだなんて、文句をつけようも無いよ。」


 そう、このチャンスを、、活かせてる???ボク、、、、、


 「ね、最後に観覧車へ乗らない?」


 ドクン。


 それ一回で心臓が止まるかと思うほど、大きく鼓動が鳴った。


 最後、、、、


 嗚呼、もうそんな時間なんだ。少し足取りが重くなる。

 やっぱりボクは臆病だ、始めの勇気、さっきの決意は何処に行ってしまったんだろう?


 ゆっくりとしたスピードで動くゴンドラのドアを係員が開き、ボク達を中へ案内する。ここに来て始めて係員を見た気がする。


 存在したんだ、、、、 


 扉をロック、これから所要時間20分の旅が始まる。


 密室で二人きり。


 審判の前の最後の時間。


 幼馴染の友達でいられる最後の時間。 


 「わ~久しぶり。結構見慣れたつもりだったけど、こうしてみると新鮮ね。」

 

 楽しげにはしゃぐルキノちゃん。


 だけどボクは、、、、 彼女の隣にいって一緒に外を眺める。


 貴重な時間を無駄にしないために。


 「わ~、こんなんだったけ?」


 ふてくされて、甘える自分に戻りたく無い。「頼られて、護れる存在」。最後までそこを目指そう。


 「ね~ほらあそこ」


 ルキノちゃんが場所を指差す。 


 「わ~全然記憶に無いや。」


 過ぎ去った時間。消え行く思い出、、、、!!


 「も~あそこはね~」 


 でも彼女は憶えている。


 ボクは気が付いた。もしかすると過去の思い出を、ボクよりもルキノちゃんの方が鮮明に覚えているのでは?


 彼女の方がずっと昔から「ボク達の過去」を大切にしているのでは無いかと。


 何時までも続かない。永遠なんて存在しない。変わらないモノなんか無い。現実を見るかこそボクは変わった。


 だがボクは変化に夢中で、本当に大切なモノ、護るモノを捨てて来てしまったのでは無いだろうか?


 ボクは「永遠」を否定し、足掻いて来たが。ボクが望んだのは、実は「永遠」そのものだったのでは?


 「そういえば。」


 ボクが自己矛盾に思考停止していると、不意にルキノちゃんがコチラを覗き込むように声を掛けてきた。


 「さっき、私に言えない事があるって言ってたよね?」


 ドクン!!


 ボクは今日、このまま心臓発作で死ぬかも知れない。


 「、、、はい、言いましたが、、、、何か?」


 「吐け。」


 め、目が恐いです、ルキノ様、、、、


 「正直でありたいなら、、、、、私に全部白状しろ!!」


 、、、何もかも、終わったかもしれない、、、、


 最後の「観覧車の20分」は、忘れられない思い出となった。


 いつの間にか時間が経っていた。閉園時間が近づき、アナウンスがスピーカーから流れる。


 二人で手を繋いでゲートを出る。 


 「正直者にはご褒美です。」

 

 結果論だが、引き換えたモノとしては等価以上のリターンがあった。


 ゲートを出て立ち止まる。このまま帰りの駅まで行けたかもしれない。だけどそれはダメだ。


 「有り難う、楽しかった。」


 ボクはルキノちゃんに感謝の言葉を伝える。


 「ホントにそう思ってる?」


 彼女に念押しされ、改めて今日の出来事を振り返る。 


 「、、、、」


 黙り込んだボク。


 「ごめん、観覧車では私が悪かった、、、」 


 彼女は肩を叩いて励ましてくれた、、、、良いヤツだ、、、、、

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