じゃあ、まずメリーゴーランドから行かない?

 黙って聴いていた彼女が口をひらく。


 「何と闘って?」


 ボクはまた自嘲する。


 「結局は、さっき言った「見えない影」だったと思う。」


 「よく解らない相手に勝とうと必死だった。まあ、目標は大きいほど頑張らないといけないから。努力のしがいはあったよ、まだ途中だけど。」


 「それで?」


 彼女は先を促した。ボクは思案し言葉を重ねる。


 「これはね、綺麗事なんだけど。「ルキノちゃんが幸福なら、それが誰の手によるものでも良いんじゃないか。」って。自分が出来ないなら相応しい人物にそれを託す、見守る、邪魔にならないよう消える。」


 「ルキノちゃんの事が本当に好きなら、そう言う選択肢も取れると思うんだ。」 


 ルキノちゃんは深々と溜息をついた。


 「なるほど、ビビリの考えそうな事ね。でもそれって結局は、、」


 「そう、肝心の君自身の気持ちがどの選択肢にも反映されていない。独りよがりだって事。」

 

 ボクは彼女の言葉に、自分の結論を重ねた。ルキノちゃんから異論は出なかったので言葉を続ける。


 「勿論、ちゃんと確かめるつもりだよ。ただね、ボクは真剣なんだ。」


 彼女の目を真っ直ぐ見つめて僕は告げる。相手を見て誠実に話す、敬意を払う、大事な人だから。


 「OKかNOか50%、そんな博打みたいなのって嫌なんだ。何を勘違いしたって良い。ボクが、ボク自身が納得して、OKが出るって信じて、君の気持ちを確かめたいんだ。」


 「、、、、そうすれば、どんな結果に成っても受け入られる。」


 楽しげな音楽がスピーカーから流れる遊園地。 


 「でもそれって結局自分だけの都合じゃない?」

 

 ルキノちゃんの的を得た非難の言葉。


 「うん、そう。でもそれがボクの精一杯なんだ。」


 「ルキノちゃん。ボクは臆病で欲張りだ、でも正直でありたい。」


 納得してくれた訳では無い。が、一理はボクの言葉を認めてくれた。そんな雰囲気が彼女からした、、、たぶん。


 「もう一度言うよ。ルキノちゃん、ボクは君が好きなんだ。」


 彼女は黙っていた。目をつぶり、真剣に思案し、ボクに答えてくれようとしているのが解る。


 素直なった甲斐があった。正直にいった甲斐も、だから欲張った。


 「、、、、わ」


 彼女が目を開け、ボクを見つめ、答えを告げようとした矢先。


 「待って!!」


 ボクは彼女の言葉に被せ、答えを遮る。


 「ルキノちゃん。「夏に遠くから来る。仲の良い幼馴染の男の子」ままで良いから、今日の君とのデートを楽しみたいんだ。遊園地から出るまで答えを待ってもらって良いかな?」


 ルキノちゃんはボクの願いに呆れ顔をで答えた。


 「やっぱりビビリ君なんだね、しかも欲張りだ。」


 「うん、でもそれがボクの本心。ダメでもいい、それが行動の結果なら納得できる。」


 二人とも笑った。


 「じゃあ、まずメリーゴーランドから行かない?」


 彼女の提案にボクはうなずいた。楽しもう、今は、、、、 

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