夏休みの国 二日目
何いじけてるの?
次の日。
ボクはかなり早く出かけたつもりだったが、遊園地の入り口で既に彼女が待っていた。
「ごめん、ルキノちゃん。待っ、、、、、」
遅刻した謝罪の言葉は彼女の姿を見た瞬間医に途中で消えてしまう。
模様がはいった水色のワンピース、白い靴下にサンダル。手にはハンドメイドと思われる編み上げのハンドバック。
そして彼女のさらりとしたショートの黒髪に白い肌。
また、妖精が現れた。ボクは心奪われる。
「うんうん。問題ないよ、時間ピッタリだね。」
「遊園地も開いてるよ。さあ、行きましょう。」
制服姿とは違う私服のルキノちゃん。彼女に手を引っ張られるまで、ボクはボ~っと見とれてしまっていた。
遊園地は既に開園していた。夏休みだから早朝営業でもしているんだろうか?中に入ると、古いが楽しげな音楽がスピーカーから流れてくる。
確かに今時にしては古い設備の遊園地だ。安さが売りだろうか?人件費も削っているせいか職員の姿も見えない。
乗り物はチケット制のようだが、自販機かな?
叔父の家の近くに在る、市営の遊園地がそんな感じだった気がする、だが設備はコチラが豪華だ。メリーゴーランドに観覧車、維持にはそれなりにコストの掛かる乗り物だ。
ひと気の無い遊園地を二人で歩く。
今日も先導するのはルキノちゃん。
ボクはそれで良かった、彼女と一緒なら。
行きたい所はルキノちゃんと居る場所だった。
遊園地を楽しそうに巡りながら、どのアトラクションを楽しむのか品定めする彼女。
選り取り見取り、と言っても数は限られるが。大手テーマパークの様に並んで待つ必要性が無いのは偉大だと思う。
時々、ルキノちゃんはコチラを笑顔で振り返る。手を振ったり、早くおいでと手招きをする。
「、、、、」
昨日、全て見られてしまった。
ボクの恥ずかしい部分を、彼女に見せたくなかった部分を。
ボクだって男だ。
考え方が古かろうが何だろうが、大切な人に頼られる。護れる存在でありたい。
その上で家事を手伝い、育メンをこなして、、、、、おい、妄想が激し過ぎるだろう、、、
と、まあそんな感じに彼女に思われる事を期待し、頑張ってきた????訳だが、昨日一日で水の泡と帰した。
自嘲気味に鼻で笑う。
コレで良かったのではないか?無駄に見栄を張る必要も無くなって。
彼女は今ボクの側に居る。
この事こそが何よりも望みのはず、そんな事を考えながら彼女を追った。
ルキノちゃんはメリーゴーランドの前でボクに振り返って言った。
「何いじけてるの?」
ボクは躊躇ったが、観念して本心を口にした。
「現実って厳しいなと思って。色々ボクにも計画があったんだ。」
ルキノちゃんは黙って聴いていた。
予定と違ったが、正直に気持ちを打ち明けた。
「ルキノちゃん。ボクは君が好きだ。」
嗚呼、言った。
「だから君に頼られて、護れる存在に成りたかった。君に憧れて、着いて回るだけの存在じゃなくて。」
「ルキノちゃんがボクを誘ってくれたあの時から。君と君が居るこの刻が、ボクにとってかけがえの無いモノなんだ。」
「だけどね」
「何時までも続かない。永遠なんて存在しない。変わらないモノなんか無い。」
「ボクが居る所と、君が居る所は、距離だけじゃなく、時間も、生活も、あまりにも離れているんだ。」
「確かに携帯やSNSは便利で即応性もあってありがたいけど、それって特別なコミュニティーじゃないよね?」
「ボクが君に言えない事や、知らない事がある様に。ルキノちゃんにもボクに一々言う必要の無いプライベートがある、、、彼氏だって居るかも知れない。でも、それをとやかく言う立場にボクは無い。」
「ボクは臆病だ、見えない影に怯えてる。だけど少しだけ成長したんだよ、、、たぶん。」
「少なくとも座視してるだけじゃなく、君に興味を持ってもらえる、忘れないで居てもらえる存在になるよう、自分なりの努力は重ねたつもりなんだ。」
「ボクは馬鹿だから、それが正しいのか間違っているのかもよく解らない。でも勉強が出来るわけでも、スポーツが得意でもイケメンでもない僕には、少しでも背伸びして、手を伸ばして、チョットでも実力を着けて。」
「「夏に遠くから来る、仲の良い幼馴染の男の子。」の有効期限が切れる前に。」
「闘って勝ち取りたかった、ルキノちゃんの心を。」
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