罰を与えます。
ボクは床の間に横たわっていた。
灯りも着けず、ボロボロで生乾きの服、傷付いたまま、身体の傷はどうでも良かった。
泣いていた。
静かに。
身勝手に。
ここは祖父母が健在の時。ルキノちゃんや皆で遊び、おやつを食べ、昼寝した場所。
美しい思い出の場所。
この聖域に居れば、浄化される気でもしたからだろうか。
音がした、縁側の方で。
ボクは起き上がる事も、見ることも出来なかった。
ずっと昔、母に連れられ始めてこの家に来た時と同じ様に、泣き、怯え、甘ったれていた。
部屋の明かりが点けられた。
彼女が、畳の上を歩いてボクの横に座った。
「、、、ルキノちゃん、、、、ゴメンね、、、、、。」
彼女は暫く無言で座っていたが、ボクのふてくされた態度に飽きたのだろう。やがて立ち上がると。
「さようなら、、、、今日は、付き合ってくれて有り難う、、、逢えよかった。」
何故だ?なぜ君が謝る!!
ボクは飛び起きて、去ろうとする彼女の手を必死に取った。
彼女の手は少し冷たかった、彼女の姿は儚げだった、ボクを振り返った彼女の目は、、、、
少し涙ぐんでいた。
そして、微笑んでもいた、、、なぜか?、、、なぜか?、、、なぜか?
「ルキノちゃん、ゴメンね。ごめんネ。ゴメンね。ごめんネ、、、ごめんなさい、、、、」
ボクは謝った。罪を犯し。逃げ出し。そして赦して欲しかった。
「罰を与えます。」
言うなり彼女は、ボクのTシャツを脱がせた。
「!!」
彼女は、持って来ていた薬箱から。消毒液とガーゼを取り出す。
「さあ、座って。傷を消毒しなきゃ。川や、鉄線のバイ菌で傷が痛むといけないから。
ルキノちゃんは何時もの調子、、、よりも嬉しげだった。
「傷だらけじゃない!!」
「Tシャツの血も、よく見ると凄いは。痛くないの?」
はじめは痛かった。でも途中からある意味救いだった。身勝手だけど。
「うん。なんかね、、、、」
ボクは懺悔するように呟いた。
「いや~「士別れて三日なれば刮目して相待すべし。」 とは言ったモノね。川じゃ解らなかったけど、逞しく成長てるじゃん。うん、お姉さんは嬉しいぞ!!」
また、弟扱いか、、、、でもボクにはその立場で似合いだと思った。
「!!」
突然、突き抜ける甘美な刺激。
ボクの背中を彼女の指が、艶かしくなぞる。
そして。
「罰よ。」
傷口を想像以上の痛みが走り。身体がのけぞり、うめき声が出る。
「、、、、、謝らなくて良いの、、、、、私も、、、、、楽しむから。」
彼女はボクの背後から、耳元でそう囁いた。
「、、、、、ありがとう。」
「もう少しだけ側にいさせて、、、、、」
ボクにはその言葉の意味を理解できなかった。
赦される喜び。
彼女の手、指先が僕の体を走る甘美。
消毒で走る傷の痛みは、ボクが裂いたスク水の罪を処罰するようで、むしろありがたかった。
傷を消毒し、服を着替え、暗くなった夜道を、ルキノちゃんを家まで送った。
電柱の外灯は本当に少ないが、星の輝く夏の夜空が辺りを照らしていた。
夏の虫の声、生育中の田んぼから蛙の鳴き声、昼間よりも世界が音に溢れている気がした。
チラチラと光るものが田んぼから飛び出して、低く中を舞う。
ビビリのボクは手にしたライトを向けるが何も居ない、すると彼女が言った。
「懐かしい、蛍ね。ひさぶり」
「蛍って川じゃ?」
「ゲンジボタルはね、でもヘイケボタルなら田んぼや止水域よ。」
「期間もゲンジボタルより長いは。昔、皆でよく蛍狩りしたじゃない。懐かしいな~色々、、、」
そして彼女のは次の言葉にボクは驚きと喜び、期待で胸が踊った。
「ね、遊園地に行かない?子供の頃に行った、あの小さい遊園地。」
「観覧車とか、メリーゴーランドとか。なんか汚いクマの乗り物とかあって。」
「懐かしいなぁ、しばらく行ってないや。」
「よし、明日行こう。遊園地デートだ!!」
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